第55話 アリシアの午前
「それじゃあ、また」
「はい」
校門前でお父様たちと別れる。
この世界に来てわかったことがある。
似て非なる世界だが、存外学校という場所は同じであるということだ。
もちろん、授業の内容は違うが。
「アリシアさん! おはよー!」
「おはようございます」
クラスの皆と挨拶を交わしながら席に着く。
今日の一限目は体育だったはず。
荷物をしまい、クラスの女子たちと一緒に更衣室に向かう。
異世界出身なことは勿論秘密。気を付けなければいけないことが多々ある。
その一つが体育だ。
自分で言うのもなんだが、イースガルド基準で私は運動が出来る方だ。
英雄、勇者と王女の娘として相応しくある様、鍛えられている。
この世界の人々はイースガルドの人々と比べて運動能力が低い。
脅威が少ないこの世界では必然なことなのだろう。
なので、この世界で平均的な運動能力に合わせてセーブしないといけないのだ。
今日の授業ではソフトボールをやるらしい。
何かを打つ競技は何かと大変だ。加減が難しい。
「よーし準備運動終わったらまずはキャッチボールだ」
先生の号令で各々距離をとる。
自分もペアを作り距離を置く。
「アリシアさん準備いいー?」
「はーい!」
ふんわりとしたボールが飛んでくる。
それを私は確実にキャッチする。
そしてそれを相手に返す。
ゆっくり優しくふんわりと。
よかった。目論見通りな送球ができた。
「アリシアさんコントロール良いんだね! 凄いよ!」
「ありがとうございます」
ものを狙い通りにするのは得意だ。というかそうでなければ大変だ。
「次はバッティングだ。一人20球な、打たない奴は守備に回れー」
今度はバッティング……打つ方だ。
みんなが重いと言っていたバットを握ってみると軽さに感動する。
実剣と比べるとその差は歴然だ。
金属を使われているのは外見だけで中は別のものが充填されているのか?
この世界の技術力にまた感動していると私の番になった。
「次はアリシアの番だな。日頃のストレス発散だと思って思いっきりやれよ」
「は、はい」
下から投げられるボールの上の方を目掛けてバットを振る。
ポコン。
打たれるのはボテボテのゴロ。
よし、うまくいった。
ポコン。ポコン。
小気味良い音が校庭に広がる。
ちょっと楽しい。
あっという間に20球。
「凄いなアリシア。20球全部打ったぞ」
「ありがとうございます」
そうして私は守備に移る。
残暑が厳しい中だったが、楽しく運動ができた。
◇
三限目。次は数学だ。
数学はイースガルドと共通点が多い。と言うよりも名前が違うだけで公式は一緒だったりする。
それにしてもこの世界は凄い。イースガルドの高等部で教える内容を中等部で勉強する。
滅多な争いがなく、研究が進んだ証拠だろう。
イースガルドの公式を当て嵌めながら問題を解いていく。
これが結構難しい作業。しかし、新たに学ぶことも多くとても楽しい。
「――でこのyに対して先ほどの数を代入して……」
先ほどの体育での疲れのせいか、若干睡魔に襲われつつも勉強に集中する。
◇
四限目。午前最後は理科だ。
「今日は炎色反応を実験しながら学んでいくぞー」
今日は座学ではなく実習。何処となく教室がやる気に満ちている。
「特に今回は火を使う。服とか注意しておけー」
先に座学で習ったが、どうやら炎は燃やすもので色が変わるらしい。
魔法の炎も同じなのだろうか?
後でお母様に聞いてみよう。
座学で習った通りの反応を示す炎。赤や緑、青にオレンジ。実際に見てみるとなんというか、感心する。
順調に実験は進み、授業は終了。
待ちに待った昼休みだ。
今日はお母様たちと食事を共にする日、弁当を持参して中庭へ急ぐのだった。
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