第54話 手
学校が始まった。
本当は旅行に行きたい所だったが、セレスの風邪やアリシアの誕生日会などで結局行けず仕舞いだった。
次の連休あたりで行きたいところ。
「そろそろ行きますよ」
「わかった、アリシアも」
「はい」
「「いってきます」」
10年ぶりの通学路、もう大分馴染んできた。
セレスもアリシアも迷わず進んでいく。
「二人も大分馴染んできたな」
「そうですか?」
「ああ、もう普通の高校生と中学生だ」
「ふふっ、それは良かったです」
校門の前にたどり着く。
中等部とは玄関口が違うのでここでお別れだ。
「それじゃあまた」
「はい、また」
残暑が厳しい中、ジリジリと減るのを感じるHPに耐えながらクーラーの効いた教室を目指す。
「おはよう」
「あ、おはよう」
「和也くんおはよー」
「セレスティーナさん聞いてよ! 二子山さんがさ――」
そうして俺たちは学校の仲間たちの輪に入る。
時々思う。俺たちは少なくとも10年、彼らより別の世界で生きてる。
このままでいいのか、異世界の話をした方がいいのだろうかと悩む時がある。
「――あ」
そんな時、セレスが支えてくれる。
俺の気持ちがそう傾いた時にそっと手を握ってくれる。
それだけでどれだけ俺が救われたか、きっとセレスはわからないだろう。
◇
若干重心が右によっている。
きっと難しいことを考えているのだろう。
彼が悩んでいるときは決まってこうだ。
そして決まって、自分を責めている時だ。
そんな彼に大丈夫だよというように手を握る。
私よりも大きな手。
戦場で幾度とこの手に救われた。
いや、戦場以外でもだ。
ふとした時に撫でてくれる手。
何処かに行く時に繋いでくれる手。
私を必要としてくれる手。
それがどれだけ私を救ってくれたか、きっとカズヤさんはわからないだろう。
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