第48話 看病
48話 看病
熱を出すなんていつぶりだろう。少なくともここ10年はなかった気がする。
そんなことを熱でボヤける思考の中思い返す。
寝室がいつもより広く感じる。普段二人で使っているからだろうか?
空調魔道具によって冷やされた寝具が冷たく気持ちいい。けれど、やはり寂しい。
どうか早く戻ってきて……。
◇
しばらくして扉が開いた音がした。足音からして、カズヤさんが戻ってきたようだ。
「セレス、お粥作ってきたよ」
「……んぅ、ありがとうございます」
カズヤさんに手伝ってもらいながらゆっくりと起き上がる。
熱を知覚したせいか、さっきよりちょっとフラつく。
「食べれるだけでいいから、ゆっくり食べて」
「……いただきます」
いつもより控えめに口に運ぶと控えめな塩味と米の甘さが体に染み入る。
「……美味しいです」
「それは良かった」
手慣れた動作で私の額を拭ってくれるカズヤさん。
「……なんだか手慣れてますね」
「そうか? 昔、唯にやっていたからかな」
「唯さんですか?」
「そうそう、今じゃ考えられないだろ? 昔はしょっちゅう風邪引いてたんだ」
そんな話からいろいろ昔話を聞かせてくれる。普段あまりそう言ったことを話さないから、ちょっぴり嬉しい。
「すごいなセレス、全部食べられて」
「カズヤさんの美味しいお粥のおかげです」
土鍋を片付けたカズヤさんは次に濡れタオルを用意する。
「それじゃあ、体拭いていくぞ」
「へ?」
「汗かいてるだろ? 拭かないともっと悪化するから」
「い、いや、わかりますけどっ! 自分でやれますから!」
「じゃあ前は自分でやって、後は俺がやるから」
「う、後ろも自分でやれます!」
そんなことを言い合って数分、結局後ろはカズヤさんにお願いすることになった。
「それじゃあ、拭いていくぞ」
「は、はい」
ピトリとカズヤさんの手と濡れタオルが晒された背中に当たる。
「ひゃ」
「冷たかったか?」
「い、いえ大丈夫です」
「そうか?それじゃあ拭いていくぞ」
ゴシゴシと優しい手つきで拭いていかれる。慣れない感触だが、どうにも気持ちよく、身を任せてしまう。
「ん、ん、気持ちいいです……」
「それは良かった」
しばらくして、それも終わりなんとも言えない寂しさを覚える。
「後は寝て休むだけだな。薬はケインに用意してもらっているから、昼食には用意できると思うよ」
「はい……ありがとうございます……」
「それじゃあ、おやすみ」
「……いかれてしまうのですか?」
「できればずっと一緒にいてあげたいところだけど、アリシアもいるから」
「そう……ですよね……」
「大丈夫、寝るまでちゃんとそばにいるよ」
そんな優しい声音が私を眠りに誘う。
まだ彼と一緒にいたい。そんな一抹の願いを抱いたまま私は眠りに落ちるのだった。
◇
「弱ったな」
俺の手にはセレスの手が重なっている。
普段より熱っぽい彼女の手がキュッとしっかり握ってきている。
悪いアリシア、ちょっと戻るのが先になりそうだ。
そんなことを思いながら、俺はセレスの頭を撫で続けるのだった。




