第45話 雨の日
夏季休業に入り一週間が経った頃、俺たちはいつものように買い物に来ていた。
「これで全部だよな?」
「はい、荷物ありがとうございます」
「このくらい気にするな」
スーパーを出ると曇り空がさらに黒味が増し、雨が降っていた。
「雨か、傘買ってくるか」
「折り畳み傘持って来てるので大丈夫ですよ」
「準備がいいな」
「天気予報で言ってましたから」
そう言ってセレスはカバンから折り畳み傘を二人分取り出す。
しっかり人数分用意しているセレスに感謝しつつ、傘を差す。するとパラパラと小気味良い音を奏でる。
「便利なものですね」
「何が?」
「折り畳み傘もそうですが、庶民が天気予報を知れることです」
「確かにな」
ポツリポツリと会話を重ねながら帰宅の途に着く俺たち。
ちょっぴり蒸し暑さを感じながら傘を並べて歩く。
「カズヤさんは雨、好きですか?」
「どうした、急に」
「なんとなくです」
「そうだなぁ、ちょっと苦手かもしれない。頭痛くなるから」
「そうでしたね。あとでマッサージしてあげますね」
そう言って笑うセレスに俺の口角も無意識に上がる。
「私はちょっぴり好きですが、今日の雨は嫌いです」
「どうして?」
「カズヤさんとの距離が遠いから、です」
「ああ、今日は荷物があるもんな」
「そうです」
「普段は好きなのか?」
「ええ、カズヤさんの近くに寄れますから」
「だったら俺も雨は好きかもしれない」
「そうなのですか?」
「だってセレスのそばに居られるから」
そう言うと、彼女はいたずらな笑みを浮かべる。
「普段からそばにいるのにですか?」
「うん、もっと近くに居られるから」
無意識的に彼女のそばに寄ろうとするが、傘にそれを阻まれる。
「早く帰りましょう」
「うん」
雨足も強くなっている。そんな理由を後付けして俺たちは帰宅の足を急がせた。
◇
「結構濡れちゃいましたね」
買ってきた商品に付いた雨水を拭き取り、冷蔵庫にしまう。
「外もすごい雨だよ」
轟々と言うには少し弱いがそれなりに強い雨が窓に打ちつけていた。
「頭痛の方は大丈夫ですか?」
「ああ、さっきよりはマシだけど、まだ痛い」
「薬飲みますか?」
「うん」
そう言うと彼女は水と薬を用意してくれる。
それを服用して水を飲み干すと、頭にタオルをかけられた。
「カズヤさんもちょっと濡れてます」
「セレスも、足の方とか結構濡れちゃったね」
俺もタオルを持ち出し、セレスを拭く。
「結構濡れてしまっていますね、どうしましょう? お風呂、入ります?」
「セレス先に入っていいよ」
「いいえ、カズヤさんが先です。風邪を引くと長引くんですから」
「いいやセレスが先」
「いいえカズヤさんが先です」
そんな言い合いにふっと笑いが起こる。
「でしたら一緒に入りましょうか」
「そうしようか」
そう言って俺たちは屋敷の風呂へ足をむける。
雨の日独特の静寂の中、息遣いが二つ。今日もまた平和である。
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