第39話 屋敷
39話 屋敷
夏季休業初日、偶然両親も休みが取れたので以前は出来なかった俺たちの家、屋敷の紹介をすることにした。
「お兄のお家、ちょっとしかみてないけどすごかったから楽しみ!」
「俺たちも広すぎて持て余しているんだけどな」
一行は靴を履き、俺の部屋に集まった。普段では考えられない人口密度に驚きつつも、屋敷と繋がる扉を開いた。
そこを抜けると玄関扉前に辿り着いた各々感嘆の声を漏らす。
「すっごい、ほんとにお兄の部屋からお屋敷に着いた」
「不思議ねぇ」
「デカいな……」
玄関扉を開けるとセレスとアリシアが出迎えてくれた。
「ようこそおいでくださいました。お義父様、お義母様、唯さん」
そう言って優雅にカーテシーをする。
「あらあら、まあまあ!」
「アリシアちゃん超綺麗!」
二人はせっかくなのでイースガルドで着ていた服装に身を包んでいた。
すなわちドレス姿なわけだ。二人とも白を基調にしたドレスで綺麗な銀髪がよく映ている。
「ありがとうございます。それではご案内しますね」
「まず今私たちがいるのがエントランスになります。様々なお客様をお迎えする場所です」
2階分吹き抜けになっているエントランスは床はカーペット、天井にはシャンデリアがあり、豪奢な印象を与えている。
「続いては食堂をご案内しますね」
そう言って先行するセレスに続いて俺たちは歩く。
唯たちはやはり物珍しいのか視線をあちらこちらに飛ばしている。
「こんなにお部屋が多くて管理は大変じゃない?」
「今はお掃除を含めて全て魔術で行っているのでご想像よりは簡単ですよ」
「たくさんお部屋あるけど、全部使ってるの?」
「屋敷を維持するために雇っていた使用人たちが使っていました。住み込みの者もいたので。それなりに部屋数はいるのです」
食堂に着くと、部屋の広さに一様に驚く。
俺も昔食堂の広さに驚いたっけ。
「大人数で食事することも想定して作られているので、それなりの広さを持っています。それに、二、三番目にお客様が見られるところでもあるので、豪華な作りになっています」
「すごいな……それしか感想が出てこないぞ」
「何だか映画のセットみたい!」
続いて見せたのは執務室。
本棚と机と椅子しかないので言うほど見るところはないだろう。
「お兄、ここにある本読んでみていい?」
「もちろん」
「やった、……うわあ、みたことない形の文字」
「そうか、向こうの書物だからイースガルド語なのか」
「お兄はこれ読めるの?」
「読めるぞ。『サティ教国との貿易について』書かれているな」
「ほんとだわ、全く読めないわぁ」
「ここら辺は神様がどうにかしてくれたおかげだな」
執務室を出ると、続いて応接室。
客人が一番訪れる部屋なので、それなりに豪華な見た目をしている。
「すごい、何だか美術館みたい」
「美術品も飾ってありますからね」
「どれどれ?」
「そこに置かれている壺は巨匠が手掛けた作品で、今はどうなっているかはわかりませんが、当時2億ゴル……日本円で4億円ほどの価値があります」
「ひえ」
「お姉様、もっと言うと、今座っているソファも5000万円ぐらいの価値がありますよ」
「わわっ」
そんな反応を見せつつ飛び上がる唯をみて俺たちは笑う。
さらに屋敷の奥の方へ行くと、離れに修練場が見えてきた。
中を覗くと修練中のケインがそこにいた。
「隊長! それにご家族の方まで、一体どうされたのですか?」
「ちょっと屋敷の中を案内をしてたんだ。ケインの調子はどうだ?」
「明日、本屋の面接を受けに行く予定です。いつまでもご厄介になるわけには行きませんので」
「俺たちとしては気にしないんだがな」
側に置いてある木刀に興味があるのか視線を移す父さんと唯。
日本の木刀のように、刀状の木刀とは違い、西洋剣を模した木刀だ。
「持ってみる?」
「いいの?」
「もちろん」
恐る恐る置き場から木刀を抜き、構えてみる二人。
「何だか重いね」
「中まで木が詰まってるからな」
「それだけじゃない。何だか重いんだ」
「それに気がつけるとは、唯様は騎士の才能がお有りのようですね」
構え方を父さんに指導するケインはそんなことを口にした。
「私が?」
「剣とはただの武器にあらず。外敵を切り裂き、己を、主君を守る。命を預かるものだからこそ重いのです」
「……そっか」
「興味あるのか?」
「ちょっとだけ。憧れみたいなものだと思うけど、興味あるんだ」
「それじゃあ今度一緒にやってみるか?」
「ほんとに! やった」
修練場を去り、中庭に出る。
四阿に少し狭いけれど七人が集う。
「私はお茶の用意をして参ります」
「ありがとうケイン」
「それにしても綺麗なお庭ね」
「ありがとうございます」
多種多様な植物が各々の個性を十全に発揮できるように整えられた庭は、屋敷の主人である俺でもいつも感嘆の息を漏らすものだ。
「それにしても、すごいな。異世界だなんて」
「まだ疑ってたの?」
「違う違う、まだ何となくでしか分かってなかったからさ……現実感がやっときたみたいな」
そういうと父さんは無造作に俺の頭を撫でた。
「よく頑張ったな」
「……うん」
休日の昼下がり、ちょうど眠気が襲う頃。今日もまた平和である。
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