第36話 妹と娘
お兄たちが課外学習に行った日、部活動もなかった私は家でのんびりと過ごしていた。
「ただいま帰りました」
「おかえりー」
そうしているとアリシアちゃんが帰宅してきた。世間的には義妹、実際のところは姪に当たる子。つまり私は叔母さん。
うむ、乙女心的には複雑である。
「唯お姉様、今日は部活動はなかったのでしたね」
「そうそう」
武士の情けでお姉様と呼んでくれる良い子。でも実際わからないことがある。
「お茶をお入れしますね」
「良いよ気にしないで」
この子良い子過ぎでは?
まずはお兄たちに反抗している様子が一つもない。
この子の年頃なら一つや二つあるはずなのに。
それにこの気遣い。貴族の娘ってこう、もっと傲慢というか我儘というかそういうイメージが強いけれどこの子にはそれが全く見受けられない。
「アリシアちゃん、何か溜め込んでない?」
「え?」
そこで私は一つの仮説を立てたのだ。
実は言えないだけで溜め込んでいるのではないのかと。
「いやあね、アリシアちゃんの年頃なら何か我儘とかあってもおかしくはないじゃん? なのに言ってるそぶりがないからさ。お兄たちに対しての不満とかないのかな〜って」
「不満……ですか」
「神に誓ってお兄たちには漏らさないよ!」
そうしてアリシアちゃんは少し思案顔を見せる。
「特段ありませんね」
「本当? お兄セレスさんばかりに構ってたりしない?」
「そんなことはございませんよ? しっかり私ともお話ししてくださいます」
中々に手強い。
「でもあれだけイチャついてるんだよ? 何かないの?」
「夫婦仲が良くて私も安心しているところではありますが……そうですね」
そうしてまた思案顔。
「一つ……ありました」
「なになに?」
「弟か妹がいないことです」
「へ?」
待って、ちょっと聞いてない。
予想の斜め上を行く回答に思わず間抜けな声が漏れてしまう。
「世継ぎとして私に万が一があった時のためにもう一人は必要だと思うのです」
「そ、そっか。うん、そういう話か」
異世界だもんね、世継ぎとかあるのか。そっかー
そんな内容にドギマギしているとアリシアちゃんは続けた。
「でも……私は我儘です」
「どういうこと?」
「弟か妹がいなければならない。それなのに、今の私一人だけの状況が続けば良いのにと願ってしまうんです」
少し後ろめたそうに告げるアリシアちゃん。
どうにもその様子が愛らしく、思わず頭を撫でてしまう。
「わわっ、お姉様?」
「ふふっ、なんでもない!」
少し乱れた髪をアリシアちゃんは手櫛で治す。
年としてはそんなに離れていないのにこうも愛らしく感じるのはお兄の子供だからなのだろうか?
「ねえ、この後って暇?」
「はい、課題も終わっているので」
「だったらさ、買い物行かない?」
「買い物ですか?」
「そ! 一緒に服とか見に行こ!」
「はい!」
そうしてまた出かける用意をする。
普段なら億劫な気持ちもあるはずなのに今は全くない。
姪とはすごいものだ。
そんな昼下がりから夕方に移り変わる頃。今日も平和である。
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