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勇者として召喚された俺(17)嫁と娘を連れて帰宅します!  作者: 雪代ゆき


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第35話 海デート

 ビーチボールやらで遊ぶのもひと段落した頃、俺たちは海辺を歩いている。

というのも、葛西さんから「デートも楽しんで!」と送り出されたのだ。


「こちらの世界の海は平和なのですね」

「まあ、技術が発展しているから安全なのと、何より魔物がいないからな」


 木製の帆船が主流で、なおかつ魔物が跋扈するイースガルドの海は危険極まりない。

旧神の所為とはいえ、人間が生きるのに厳しい世界だったな。


「今こうして考えると、街へ遊びにいくことはあっても自然で楽しむことはなかったな」

「すぐにまた戦争が起こってしまったので機会も少なかったですしね」

「だな」


学生たちの賑やかな声をBGMに海のさざめきに耳を澄ませる。


「セレスはどうだ? この世界は」

「とても気に入っていますよ。お義父様とお義母様、唯さんもよくしてくださいますし、葛西さんたちも」


 そうは言っても不便は多いだろう。

この世界は便利が故に不自由も多い。情報量が多く、人工物に囲まれた空間。あちらと比べ消費された空気、本当に大丈だろうか。


「大丈夫ですよ」

「たまに思うけど、セレス。君は俺の考えを読んでいるのか?」

「10年一緒にいるのですもの、わかります。それに、あなたのことですから、尚のこと」


チャプチャプと海水を足で遊ばせながらセレスは続ける。


「確かに比べた時にイースガルドの方が良かった、なんて時もあります。けれど、何よりも――」


セレスはそっと俺の顔を両手で包み口付けをする。


「あなたのそばに居られるそのことが私にとって幸福なのです」

「――俺もだよ」


するりとセレスの手が滑り俺の手を握る。俺があの世界で守りたかった手が確かにここにある。


「思ったのですが、カズヤさんはあの世界で起きたこと、お話にならないのですか?」

「みんなに?」

「ええ、特に唯さんなんか知りたそうにしていらっしゃいますよ?」


俺は静かに首を横に振る。


「わかってると思うけど、俺がやってきたのは戦争だ。物語のような綺麗事じゃない」

「――ええ」

「それに突飛な話ばかりだから話ても――」

「――それでも知りたいと思いますよ? 家族ですもの」


凛と、芯を持った眼差しを俺を貫く。


「そうだね、今度機会があったら話してみるよ」

「でしたら私からもお話しします。あの世界でのカズヤさんのことを」

「変なことを話さないでくれよ?」

「ふふっ、それはどうでしょう?」

「あ、ちょっと!」


そう言って逃げるセレスを追いかける。

ちょっとした追いかけっこが終わった後、俺たちは砂浜に腰を据えていた。


「時々思うんだ。今あの世界はどうなっているんだろうって」

「私も……時々思います。私の国はどうしているのだろうと」

「ガエリオたちの報告によれば、帝国が滅んだ。国攻めなのか内乱なのかはわからないけど。そうなったら一気にバランスが崩れてきっと戦乱の世になる」

「そうですね。きっと旧神を祀るサティ教国が平定を名乗り始めるでしょう」

「……俺たちがいれば、何か変わったのかなって」


そう呟くとセレスは俺の頬を抓った。


「傲慢ですよ? 王女と勇者がいれば確かに何かできたでしょうけど、たった二人でそう変わるもんですか」

「……だよね、でも」

「もどかしい、ですよね」

「……うん」


あの世界には知り合いがいる。軍部の人だけじゃない。住んでいた街の市場のみんなにセレスの家族。

世界の危機を知りながら何もしない、なんて……


「イーディス様が言うにあの世界は死にかけてるって」

「そうですね」

「どうにかできないのかな」


そう問いかける俺の手をセレスは強く握る。


「もしあなたに何かできて、何かをやろうとするのでしたら、私も一緒に連れて行ってくださいね?」

「危ないかもよ?」

「そんなところには行ってほしくありませんが、それでも行くなら私も一緒に行きます。守ってくださいね? 勇者様」

「うん」

「代わりに私があなたを守りますから」

「うん」


そう言ってまたキスをする。

きっと平和であってくれと願いながら、俺たちは海辺を去る。

今度は三人だけで来よう。海辺の街に言って魚を食べて、海で遊ぶ。

そんな風に考えを逸らしながら、俺は繋がる手を確かに握った。


読んでいただきありがとうございます!



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