第34話 課外学習
時が過ぎるのは早いもので、あっという間に課外学習当日になっていた。
そう思えるというのはこの世界での生活に俺たちが慣れたという事なのだろう。
学校に集合した俺たちはバスに揺られて一時間程度、目的地である海に到着した。
「海だ!」
はしゃぐ学生たちを眺める俺とセレス。年相応の反応を示す彼らが眩しく感じる。
「何だかセレスティーナさんと和也くん落ち着いてるね」
「そうか?」
「何だか先生たちと同じみたい」
中身の年齢はだいたい同じか少し下あたり。鋭い指摘に思わず息が上擦る。
「着替えはここの施設にある更衣室を使えー」
そう呼びかける先生に間延びした返事を返す学生たち。
「セレスティーナさん行こ!」
「はい!」
セレスは葛西さんに連れられて更衣室に向かう。
向こうでは見れなかったであろう光景に思わず笑みをこぼしつつ俺も更衣室に向かった。
◇
「なあなあ、誰の水着が楽しみだ?」
更衣室の中の男子たちはそんな話で色めきあっていた。
「やっぱA組の――」
「いやいやB組の――」
うむ、男子高校生である。
「やっぱりセレスティーナさんだろ!」
男子の誰かの発言に俺の着替えの動作が止まった。
「だよな! やっぱ外国人だしビキニかな?」
「白ビキニこそ至高……」
油が無くなった機械のように着替えを進める俺の肩を遼が叩く。
「落ち着けって、妄想くらい許してやれよ」
「わかってるさ」
「そうは見えないが」
「けど、セレスティーナさん、人妻らしいぜ」
「どひゃ、この歳で結婚か。さすが海外は進んでるね」
「人妻……それはそれでまた良い――!」
……今日は絶対セレスから離れないようにしよう。
そう心に誓う俺であった。
◇
着替えが終わった俺と遼は更衣室の前でセレスたちを待っていた。
「――お待たせしました」
そう言って俺たちの前に姿を現したセレスが身に纏っていたのはあの時選んだ水着。その上にラッシュガードを羽織っている。
「セレスティーナさん、よく似合ってるじゃん!」
「ありがとうございます」
遼にそう返したセレスは俺の隣にするりと位置取る。
「ねえねえどうする?」
「いきなり泳ぐのも何だしな。早めに飯食べるか?」
「二人はそれでいい?」
その提案に俺たちは肯定を示す。
セレスのお陰かいつもより多い視線を感じながら俺たちは飲食店が入っている施設の中に入っていく。
「いろんなお店があるんですね! ショッピングモールとは違う感じ……何だか市場みたいです」
施設の中にあったのは、たこ焼き屋、お好み焼き屋、焼きそば屋ちょっとした出店のようなラインナップだ。
「カズヤさん、おすすめはどれですか?」
「多分セレスが一番食べやすいのはお好み焼きだな」
「ではそれにします」
各々注文し、席に持ち寄る。
食事を共にする機会は多いが、いつもと違う場所、違う格好、違う店、形容し難い高揚感を内心感じ取る。
「前々から思っていたんだけどさ」
「どうした?」
食事を進めながら雑談していると、遼がそんなことを言い出した。
「セレスティーナさんって食べ方の所作がすごく綺麗だよな」
「確かに! B級グルメを食べてるって感じしないもん!」
王族として一級の所作を身につけているセレス。
思わぬことを褒められて照れくさそうに笑う。
「ありがとうございます。両親の教育のおかげです」
「すごいよ! まるで王族みたい!」
「ごほっ」
「わわっ、大丈夫?」
「大丈夫、すまない」
葛西さんはたまに鋭いことを言ってくる。
色々気をつけないといけないな。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう、セレス」
◇
食事を終えた俺たちは海へと向かった。
ジリジリと照る太陽に肌を焼かれる感覚を覚える。
「具体的に、海で遊ぶって何するんだ?」
そう言った経験が少ない俺はふとそんな疑問を投げる。
「ビーチボールとか?」
「海で泳いでみたり?」
「ビーチボールとはどのような遊びなのですか?」
「基本はバレーボールと一緒、ボールをトスしあって地面に落とさないようにする遊び!」
「なるほど、面白そうです!」
「ボールなんか持ってきたのか?」
「ほら、空気で膨らませるやつ。ちゃんと持ってきてるよ」
そう言って撥水バックから萎んだボールを見せる遼、準備が良い。
「それじゃあちゃっちゃと膨らませて遊ぼう!」
葛西さんの呼び声で遼がボールを膨らませ始める。
じんわりと熱がこもる砂浜に腰を据え、遼を見守る。
耳を澄ませれば他の学生たちの賑やかな声が聞こえてくる。
今日もまた平和だ。
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