第33話 水着
セレスとアリシアの水着を葛西さんと一緒に買いに行く話。
そうしてやってきた週末。俺とセレス、アリシアの三人は待ち合わせ場所の駅にやってきた。
なぜアリシアもいるのかというと、翌日葛西さんと話した時にアリシアも同じく水着がないので一緒に買いに行っていいかと聞いた結果、二つ返事でOKを貰えたからだ。
「あ、セレスティーナさ〜ん!」
駅に着いてしばらくするとセレスを呼ぶ声がする。葛西さんだ。
「葛西さん! 紹介します、こちらむす――妹のアリシアです」
「アリシア・羽鳥・ユグドラシアです。今日は私も参加させていただきありがとうございます」
「いいっていいって、気にしないで! 一緒に可愛い水着見つけちゃおう!」
そう言って葛西さんはアリシアの頭を撫でる。
「これ、本当に俺がいても良いやつなのか?」
「それこそ気にしないでよ! しっかり感想お願いね!」
それに対してなんともいえぬ返事を返した俺。
雑談もさて置きながら俺たちは水着を求めて以前にもきたショッピングモールへと足を運んだ。
「セレスティーナさんは此処にはきたことあるの?」
「以前スマートフォンを買いに来た時に一度だけ」
「じゃあ、次は洋服も見に行こうね!」
「はい!」
そうしてたどり着いた水着売り場。マネキンやトルソーに水着が着せられ、そこかしこに水着が並んでいる。
「まずはサイズを測るところからだね」
「下着のサイズじゃダメなのですか?」
「水中で伸びちゃったりするから下着よりちょっと小さめのサイズにするのが一般的だね。せっかくだし測ってもらおう」
「わかりました」
そうして三人は店員さんを伴い試着室へ。
ふと周囲を見渡してみると並んでいる水着はどれの女性用。それを見ているお客さんももちろん女性。
……なんとも居た堪れない空間だ。
早く戻ってきてくれー。
しばらくすると三人は戻ってきた。手元の紙を見るにサイズを測り終えたのだろう。
「待たせてごめんね〜」
「お待たせしました」
「……戻ってきてくれて助かった」
「あら」
「あはは、男子にはちょっと辛い空間だったか」
「そうなのですか?」
「心臓がキュッとした」
「まあ」
そんな会話をしつつ俺たちは水着売り場を練り歩く。
多種多様の女性用水着の中、俺は視線をどこにやれば良いのかわからず泳いでいると、葛西さんがこんなことを聞いてきた。
「和也くんはどっちがいい?」
そう言って葛西さんはセレスに水着を当てて見せる。
全体色は水色のパステルカラーのクロスホルター。腰にはパレオが巻かれていてなんとも涼しげだ。
「それともこっち?」
次に当ててきたのは大胆にも黒いビキニ。しかも紐タイプだ。セレスの美しさが妖艶に遺憾無く発揮されることだろう。
「どっちもよく似合っているが、みんなと海と考えたら水色の方かな」
「ほうほう。みんなと行くなら、ね」
「……なんだよ」
「なーんでも! さ、他にも見てまわろ!」
そう言ってまた先導していく葛西さん。
それを追う形になる俺たちだが、その際にセレスが俺に耳打ちしてきた。
「水着とはちょっと恥ずかしいですね」
「まあ、布面積が普通の服よりないしな」
そう無難に答えるとセレスは続ける。
「ちょっぴり恥ずかしいですけど……カズヤさんが見初めてくれたものなら私、なんでも着ますよ?」
「ぶっ!」
「お父様?」
「いや。なんでもない」
ぐらりと揺らされた情緒をアリシアの言葉でなんとか抑えつつ、セレスの言葉に耳を傾ける。
「さっきの、どちらの方が良かったですか?」
「……黒い方」
「ふふっ、わかりました」
◇
セレスと葛西さんの水着を粗方見終えた後、次はアリシアの水着を見る番だ。
「おと、お兄様! これなんてどうでしょう?」
そう言って見せてくれたのはパステルイエローと白があしらわれたキーホール。露出を抑えつつアリシアの可憐な魅力を引き出している。
「良いんじゃないか?」
「和也くんそればっかじゃん」
「語彙がないんだ、察してくれ」
「お姉様、どうでしょう?」
「そうですね、アリシアの体型なら問題ないでしょうし、色合いもとても似合っています。良いと思いますよ?」
「ありがとうございます。お兄様、お姉様」
そうしていくつか御繕えた後の小休止、改めてどれにしようか悩んでいると、ふとセレスがこんなことを口に出した。
「カズヤさんの水着は見にいかなくて良いんですか?」
「和也くんも水着見るの?」
「いや、俺は去年のがあるからいいよ」
そういうとセレスはちょっと不満げな表情。確か、帝都で服を見た時もそんな表情を浮かべていたっけ。
「見るのはいいが、面白くないぞ?」
俺たちは男性用の水着売り場へと足を運ぶ。
着いてみると案の定コーナーは女性者と比べて狭く、種類もさほどなかった。ざっくりとルーズタイプとハーフスパッツタイプのみ。違うのは柄程度のものだった。
俺としては無地のもので良いのだが。
「これなんて良いのではないですか?」
そう言ってセレスが取り出したのは白と水色が涼しげな雰囲気を醸し出しているルーズタイプの水着。俺がすでに持っているのは授業で使ったハーフスパッツタイプのものなので違うテイストだ。
「良いんじゃないか?」
「お兄様、ちょっとテキトーです」
「そんなこと言ったって」
「良いじゃん! セレスティーナさんが選んでた水色のやつに似てるし! お揃い!」
そう言われるとむず痒い感覚に陥る。けれどそれが不快というわけではなく、なんとも言えぬ心地だ。
「じゃあ、一緒に着ましょう?」
「……そうするか」
セレスに促されるがまま俺は頷く。決して流されたというわけではなく、俺自身が良いと感じたからだ。
「じゃあこれでみんなの分決まったね!」
そうして俺たちは会計を済ませる。今更知ったのだが女性用の水着ってまあまあなお値段するんだな。
「まあ、ものによるんだけどね」
「そういうもんか」
「そ!そういうもん!」
「この後はどうしましょう?」
「次は洋服見に行こうよ!」
「良いですね」
こうして俺たちは日が暮れるまで買い物を楽しむのだった。
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