第31話 学生
翌日、俺たちはいつも通り学校に向かった。
ここ最近の新しいことといえば、この行行にアリシアが加わったことだろう。
高校の隣に併設されている中等部に入学したのだから通学路が一緒なのは必然だろう。
校門前で別れ、俺たちは教室に向かう。
すると、見知った面々から挨拶される。それに俺たちも返し席につく。
「なあなあ! アリシアちゃんってどうなんだ?」
遼が肩を組みつつ話しかけてくる。
「どうってなんだよ」
「ほらこう、交友周りとかさ」
「新しい友達もできて楽しそうだぞ」
「そりゃ良かったが、そうじゃなくて、恋愛面で」
なんとなく察しはついていたが呆れつつも返す。
「全く聞いてないな」
「よっし、なら俺も――」
「あ゛?」
「な、なんだよ!」
「いや、ちょっと喉の調子が悪くてな。中等部を相手にするなよせめて高等部の範囲で収めておけって」
「やっぱそうだよなぁ」
取り止めもなく、中身のない話をしていると担任教師が入ってきた。
「ちょっと早いがHRを始めるぞ〜」
学生たちは不満を口にしながら席につく。
「いいか? 再来週に課外学習がある!」
教師がそう口にするとクラスは盛り上がりを見せる。
場所がどこなのだろう、だとか、誰とご飯たべるだとか、平和なものだ。
「しかぁし! その前に定期考査があるのを忘れるな」
その言葉に学生たちはブーイングをする。学生たちの唯一の敵と言って良いであろうテスト。その光景もまた平和だと思っているつかの間。10年ぶりの中間考査は中々にやばいのではと内心焦り始める。
「赤点取ったらもちろん補習だ! 課外学習には行けないから覚悟しておけ!」
その号令をもって通常のHRに戻って行く。そんな中俺は中間考査という言葉を反芻させているのだった。
時は過ぎてお昼休み。俺とセレス、アリシアはセレス手製の弁当を持ち寄り、中庭に集まっていた。
「何か考え事ですか?」
「いや、大したことではないよ……?」
ジーっと見つめてくるセレス。それに習うようにまたジーっと見つめてくるアリシア。
どうにもいたたまれなくなり、白状する。
「中間考査がちょっと心配になりまして……」
「勉強で何か分からないことでもあるのですか?」
「そこはあまりないんだけど、テストを受けるのが10年ぶりな訳だからちょっと……」
「心配になった、と」
「……おっしゃる通りです」
萎びるように告げると、ちょっと生き生きとしたセレスがそこにいた。
「では一緒にお勉強しましょうね」
「セレスと一緒に?」
「はい、一緒に」
勉強しないといけないのは変わらないし、なによりセレスが楽しそうなので頷く。
「それでは帰ったら早速お勉強です」
「……はーい」
「気分が控えめですね、お父様」
「勉強っていう単語は学生にとって天敵なんだよ……」
「アリシアはどうですか?」
「はい、問題は無いかと思いますが、不安なところといえば歴史です……」
いわば全く違う国から来たのだ、当然そうだろう。
「それでは一緒にお勉強しましょう。あとでテスト範囲を教えてくださいね」
「はい、お母様」
そう言ってセレスがアリシアの頭を撫でる。何と平和な光景だろう。
……ちょっと待て。
「セレス? さっきの言い方だとまるでセレスがアリシアの勉強を教えるみたいな風に聞こえるが……」
「アリシアだけでなく、カズヤさんのお勉強もですよ?」
「大丈夫なのか?」
「それは学力の問題ですか? それとも私の体力でしょうか?」
「……どっちもだが」
ありがとうございます、と微笑むセレス。そして凛として答える。
「直近の小テストは全て100点ですし、体力も問題ありません。それでも不安というのならこの中間考査で示して見せましょう」
「そういうのじゃないんだ……ただ――」
「わかっています。心配して下さったんですよね」
そう言うセレスはふわりと花の様な笑みを浮かべる。
「なので一緒にお勉強しましょうね!」
有無を言わせぬその気迫に頷くことしかできなかった。
◇
勇者として異世界で戦い続けて10年、新しい発見があった。
別に勉強は得意になっていなかったということだ。
しかし、セレスの教え方はとても適格で分かりやすい物だった。
アリシアの勉強を見ながら俺の復習を手伝うなんてお手の物。
その身のこなしは流石と言わざるを得ない。
「すみません、今日はなんだかアツくなってしまったようで」
「いや、すごい勉強になったよ」
「それならよかったです」
月が頂点へ登ろうとした頃、セレスとそんな会話をする。
湯上りの為か、セレスは頬がほのかに上気させている。
「やっぱりちょっと疲れた顔をしていますね」
「そう?」
「ええ、すこし」
ソファに腰かけたセレスはポンポンと膝を叩く。
逆らうことなく促されるがままそこに頭を乗せる。
すこしして撫でられる。風呂上り特融のセレスの香りが撫でる手と一緒にリラックスさせてくれる。
「すこし充電、です」
「どっちの?」
「どっちもです」
悪戯に聞いたら頬を染めて返され、俺の頬も上気するのを感じる。
ゆったりと流れる時間、五感が告げるセレスの存在。ほんとうに夢心地だ。
「あらら、寝てしまうのならベットに行きましょう?」
「……む」
そうして俺とセレスはベットにもぐる。
久々の勉学の疲れもあってか寝付くの早かった。程よい気温とセレスの体温、ぐっすり眠れそうだ。
「――おやすみなさい」
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