第27話 日常
一夜が明けた。
少し……いやかなりの気まずさを感じつつもセレスの後押しを受けながら家のリビングにたどり着く。
「あ、お兄おはよ〜」
「ああ、おはよう」
「おはようございます、隊長」
リビングにはすでに三人とケインが揃っていた。
話を聞くに、俺の部屋の前で右往左往していたので朝食に誘ったとのこと。
因みに、ケインの下半身は人化の魔術で人になっている。
キッチンに残っていた俺たちの朝食を食卓に配膳し、手をつけ始める。
「「いただきます」」
少し食べ進めると、父さんが硬い口を開く。
「なあ和也」
「な、なに?」
「流石に七人がこの食卓を囲むのは狭すぎると思うんだ」
「え」
確かに、七人ともなれば最早キャパオーバーだ。何にせお誕生日席が出来上がってしまっているのだから。
「だからそろそろ新しいのに買い替えようかなと思ってな」
「待ってよ、そんなことより――」
「私もずっとやっかいになるわけには行きません、早いうちに住処を見つけなければ」
会話についていけずしどろもどろになる和也。
「お兄が思ってること、なんとなくわかるよ」
「だったらなんで――」
「だって、お兄に悪いことをする度胸なんてないもん」
肩透かしをくらう和也を放っておいて唯は続ける。
「お兄がどんな10年間を過ごしたなんて私たちにはわからない。だから、今見えるものを信じることにしたんだ」
その言葉に一同は頷いた。
込み上げるものを抑えつつ皆にありがとうと言葉を返す。
「セレスさんとアリシアちゃんがこうしているんだもの、和也が悪いことしたように見えないわ〜」
それにまた一様に頷く。
この短い期間のよくもここまで信頼を勝ち取れたものだと感心しつつ食事を進める。
いつもより若干賑やかな食卓はとても心地よかった。
◇
ところは変わり学校。午前の授業が終わり、昼休み。
アリシアはクラス内でできた友人とご飯を食べるとのことだったので、二人での食事だ。
「あれ?和也くんにセレスティーナさんじゃん!これからご飯?」
支度をして中庭に向かおうとしていると、葛西さんが声をかけてくる。
「ええ、中庭で戴こうかと」
「私も一緒にいい?」
「もちろんです」
葛西さんを入れた俺たち三人は中庭に向かう。
清々しいほどに澄んだ青空に適度な気温。
外で何かをするには絶好なロケーションだ。
「わあ!セレスティーナさんたちのお弁当和食だ!美味しそう!」
弁当の蓋を開けると、だし巻き卵に金平牛蒡、シャケに高菜に白ごはんと和のお弁当を代表するものばかりだ。
「これだけ作るの大変だろうに、いつもありがとなセレス」
「いえ、こちらは調理器具が揃っていますし、新しいお料理を覚えるのは楽しいですから」
「セレスティーナさんの国ってそこまで調理器具ってなかったの?」
「ありましたけど、日本の調理器具には目を見張るものがあります」
だし巻き卵を口に含むと出汁と卵の見事な調和に舌鼓を打つ。
「それに、美味しそうに食べてくれる人がそばにいるので、モチベーションはずっと高いんです」
そう言ってセレスたちは笑う。
妙に気恥ずかしさを感じつつも食事を進める。
「カズヤさん、お茶を」
「ああ、ありがとう。セレス」
「なんかさ、今日二人とも距離近くない?」
「そうか?」
「絶対そう!今までもすぐに触れられる距離だったけど、今はもう引っ付いてるじゃん」
疑問符を浮かべながらしなだれるセレスの頭を撫でる。
「……私、ちょっと飲み物買ってくる」
「お茶でしたら予備がありますのでよかったら――」
「ありがたいんだけど、ちょっとコーヒーが飲みたい気分なんだよね」
葛西さんはそう言って足早に自販機に向かって行った。
「カズヤさん」
「セレ――」
不意にキスをされる。ただの粘膜同士が接触するだけなのにどうしてここまで気持ちが落ち着くのだろうか。
「学校でキスしてくるなんて珍しい」
「なんとなくしてみたくなった、じゃだめですか?」
こてんと傾げる彼女にいいやと返す。
「最近カズヤさんからしてくれないのでちょっと不満です」
「それは、ほら、両親に唯の目もあるというか……その」
少し頬を膨らます彼女。そんな仕草すら愛おしく思える。
「何をしたら許してくれる?」
「それはもちろん――」
可愛らしく突き出された唇に和也は口付けを落とす。
「正解です」
満足げの彼女と共に再び弁当に向き直る。
空を見上げれば青空に月が見える。今夜起こることに不安を感じつつも今はこの日常を謳歌しよう。そう思う和也だった。
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