第26話 それでも
昔話を終えたセレスさんは若干耳を赤くしたお兄を一瞥した後、両手をポンと叩き言った。
「夜も老けてきました。続きはまたの機会に」
セレスさんのその一声で一様に解散となった。
お兄は一体どんな10年間を過ごしたのだろう。
初めはワクワクドキドキなファンタジーライフを想像していた。
けれど、どうやら現実は違うようで、悲惨な戦場。
セレスさんとケインさんが語ったことはほんの僅かだろう。
私はどうにも筆舌し難い気持ちに苛まれた。
◇
両親と唯を屋敷から家へと帰した後、屋敷の応接室には和也とセレスティーナ、アリシアにケインが残った。
頃を見計らったのか、ケインが膝をついた。
「――隊長、身勝手な振る舞い申し訳ございません」
「いや、いい。いつかは話さなきゃいけなかった内容だ」
そうは言いつつも視線は俯く。
「大丈夫ですよお父様!魔術や私たちを受け入れてくださった方たちです!何も心配――」
「そういうことではないんですよ、アリシア」
明るく振る舞うアリシアに笑いながら訂正を入れるセレスティーナ。
「お父様――カズヤさんが気になさっているのは、自分の事を開け助けに話されて恥ずかしいのです」
「わかっているのなら言わないでくれ……」
そう言い口元を抑える和也。それを見て一同笑う。
「全く、アリシアもそろそろ寝なさい。ケインはいつもの部屋を使ってくれ。来客の予定なんてなかったんだ、少し不便でも文句言わないでくれよ?」
「お心遣い痛み入ります」
「はーい、お父様」
おやすみと挨拶をして二人も部屋から出る。
そうして沈黙が部屋を包む。
それがどうにも辛く染み入る。
「……」
「……お部屋に行きましょうか」
◇
和也とセレスの部屋、二人は装いを楽なものに着替え、それとなしに並んで座る。
「……カズヤさん」
ポンポンと膝を指し、和也を誘う。
和也はそれに応じ、力無く頭を預けた。
「大丈夫です、きっと受け入れてくれますよ」
「だけど……俺は人殺しだ」
和也がもっとも引っ掛かっていたのはそこにあった。
例え、異世界であっても、危機的状況であったとしても、魔物を魔族を、人を斬ったことには変わりない。
「そうですね、それは変えることはできませんね」
セレスティーナは和也の頭を撫でながら続ける。
「でも、その時カズヤさんがその選択をしなければ、ここにはくる事はなかった。私たちのもとに帰ってくることはなかった。そう考えると、私はカズヤさんの罪を許容します」
ひどい王女ですよねとセレスティーナは自嘲する。
「それは――!」
「だって、幾千幾万の犠牲があったとしても、カズヤさん一人がいなくなることの方が私にはひどい話です。想像すらしたくありません」
何も言えなくなった和也はまたセレスティーナの膝に頭を預ける。
「もっと言えば私も人殺しです。一緒ですね」
見惚れるほどに艶然な彼女、さらに彼女は言葉を続ける。
「もし受け入れられなかったら、旅に出ましょう。日本を回ったら別の国へ、この間アメリカという国の話を聞きました。あそこも行ってみたいです!お金なら心配ありませんしね」
「でも、アリシアはどうするんだい?」
「今度聞いてみます?迷わず貴方を選ぶと思いますよ?」
――どうしてそこまで
そう喉から出かかった時、和也の唇は彼女に塞がれた。
「愛しているからです。例え貴方が魔王になろうとも、私は貴方を愛しているのです」
「――ありがとう」
そうして今度は和也から口付けをした。
3つの月が霞む夜、また二人の愛が深まった。
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