第25話 セレス
「――カズヤ様!」
和也はセレスティーナの前に立ちはだかり、ブリスクからの攻撃を一身に受けた。
その証拠に、和也の体にはブリスクの攻撃によるものだろう針が無数に刺さっている。
「今、回復を!」
「後ろに下がっていてくれ、当たるかも知れない」
「そんなことよりも!あなたの体が!」
セレスティーナの静止の声を聞き入れず、和也はあの敵を打ち砕かんがために突き進む。
和也は、セレスティーナの周りに土魔法で壁を作り、先ほどの針状の攻撃がまたきた場合に備える。
『キシャシャシャ!無駄、無駄だよぉ?その針には毒が塗ってあるからねぇ?すぐにぃ――?』
可笑しく笑うブリスクはピタリと止まった。
『なんでぇ?なんで動けるのぉ?』
ブリスクは動揺しつつも三度針の攻撃をする。
和也は眼前にロングソードを構えて顔面に攻撃が当たるのは避けるが、それ以外は避けず、突き進む。
『可笑しい、おかしいよ!なんで避けないのさぁ!お前、人間じゃねぇ!』
今度は魔法が混じった攻撃、火属性、風属性の攻撃がカズヤを襲う。
それも和也は避けることはせず、魔法を剣で切り飛ばし、ブリスクに迫る。
『ハハッ!魔法を切るなんてぇ....やっぱりお前可笑しいよぉ!』
そう叫びながら魔術を行使しようとするブリスクの杖ごと首を切り飛ばす。
術者が死んだ影響か、グールたちは活動をやめ、スケルトンは瓦解する。
戦場には味方の息吹だけが残り、死者は沈黙を持ってそれを返した。
「――カズヤ様!カズヤ!」
土の壁からセレスティーナが出てくる。
和也の姿を確認するや否や、絶句し、その足を早めた。
白銀の鎧に突き刺さる無数の針、溢れ出る血。
それとは反対に和也は笑ってセレスティーナを見た。
「ご無事でしたか?殿下?」
「無事な、無事なわけないでしょう!」
「どこか怪我でもしたのですか?急いで治療しなければ――!」
「私はなんともありません!あなたを治療しなければ!」
そう言って患部を見ようとするセレスティーナはそれを見て動きを止めた。
「傷が……塞がっていく……」
「こっちの世界に来てからどんな攻撃を受けてもこんな風に回復するんだ。だから――」
「でも!」
心配ない。そう伝えようとする和也を語気強くそれを遮った。
「でも、痛いでしょう?」
「――うん」
和也のそんな小さな呟きは静寂な戦場に静かに響いた。
◇
一行は戦場の守備を他の軍に引き継ぎ、王都の宿に帰ってきた。
新たな四天王討伐したとあって、騎士たちは宴に興じる。
そんな彼らを和也とセレスティーナは2階のテラス席から眺めていた。
「皆、楽しそうですね」
「うん」
「今回、幸いなことに死者はいなかったそうですよ」
「うん」
そんな会話のキャッチボールとは言えないやりとり。数秒の沈黙の後、切り出したのはセレスティーナだった。
「あなたのこと、教えてくれませんか?」
涙腺が震えるのを抑えながら和也はポツリとこぼし始めた。
「俺は、どこにでもいる学生だったんだ。それで、急にこの世界に呼び出されて、戦いの術を叩き込まれて、戦争に勝てば元の世界に帰れるって言われて戦争に参加させられて……何も、何もわからないんだ――!」
和也は嗚咽混じりにそう呟く。
そんな彼の背中を摩るセレスティーナは言った。
「私はあなたの事、知りたいと思いました。あなたの世界の技術とか文化とか、そんなことよりもあなたの事をもっと知りたいと思いました」
セレスティーナの頬に一筋の涙が溢れる。
月明かりに照らされた彼女の姿を和也は忘れることはないだろう。
「私は、あなたの事を好きになりました。わからないのなら一緒に探しましょう?貴方が帰るその日までで構いません、一緒にいさせてくれませんか?」
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