第24話 共同戦線
翌朝、俺たちは激進したという戦場に向かった。
正直王女様を連れて戦場に向かうのはかなり気が引けたが、決まったことなのでもうどうにも出来ないのだろう。
戦場に到着すると、綺麗な森林であったであろう場所が地の色を濃く残している。
ふと王女様の方を見てみるが、彼女は顔色ひとつ変えない。とりあえずの心配はなさそうだ。
魔力による索敵も残存魔力が多すぎるせいか機能せず、黙示による索敵が頼りだ。
「いくら味方が治めたといえど、戦場です。気を抜かずに」
「わかっている」
ケインの忠告に頷いて、親衛隊の面々に同じ内容を告げた。
「セレスティーナ殿下、以前と比べて周囲の変化は?」
「特に変わったところはありません。以前はもっと平和な場所だったのですが……」
「心中、お察しします」
一行は周囲を警戒しつつ遺体の回収作業に移る。
嵐の後のような晴れ渡る空の下、焚き火が轟々と燃え盛る。
そんな作業をくり返えしてどれくらいたっただろうか。
作業もひと段落と言ったところで沈黙を破る声が聞こえた。
「う、うぁああああ!」
皆が一斉に抜剣し周囲を警戒する。
するとどうだろう、魔物やエルフたちの死体をかき分けながら魔物たちが現れてきた。
「屍食鬼、卑劣な真似を!」
皆一様に作業をやめ、戦闘体制に移る。
セレスがいる場所を守るような形で陣形を組み、迫り来るグールたちを排除していく。
「グールは火属性の魔術に弱い!火属性が得意な魔術師は!?」
「ダメだ!こんな森の中で火属性なんて使ったら」
「我々の森に火をつけるか!」
そんな言い争いが聞こえ始めた頃、セレスティーナが喝を入る。
「グールにしっかり狙いを定めればいい話です!それともお前たちはそんなこともできないのですか?」
「いいえ、いいえ!やれますとも!」
「その意義です!とにかく数が多い!躊躇せずに!」
火属性魔法の轟々とした音に、可笑しな声で笑うグール。
ほぼ無尽蔵に湧き出るグールたち軍はジリジリと後退を迫られる。
「うああああ!」
防御陣形の中程にいる魔術師から声が上がった。
「どうした!」
「す、スケルトンだ!」
「騎士を!騎士を早く!」
安地だと思われていた味方陣地からの敵、陣形を崩すには十分だった。
「この組織的な誰かが操っているのか?」
「この数の手前、そうでしょうな!」
カズヤは敵を切り捨てつつセレスティーナの元へ向かう。
馬を巧みに操りながら剣を右へ左へ。
群がる敵を切り開いて進むと、セレスティーナも戦っていた。
「【エアリ・フェル】!」
風のチャクラムが敵の首を見事に切り裂く。それで終わりかと思えばその魔術は意志を持っているように動き続けて敵を斬り付け続ける。
「セレスティーナ殿下!」
「助かります!」
セレスティーナの背後から襲おうとするグールたちを切り伏せる。
――キリがない。
そんなことを思い始めた時、下手なバイオリンのような声が森に響いた。
『キィシシシシッ!無駄、無駄だよぉ?材料ならいくらでもあるんだものぉ』
「誰だ!姿も表さずとは卑怯だぞ!」
果敢なエルフの騎士がそう声を上げるも即座に首を落とされ、グールの餌食になる。
『ハハッ!そう簡単に見せるわけないだろぉ?でもでも、勇者がいるのなら話は別だよねぇ?』
そう言って姿を現したのは手足をだらんとさせたローブ姿の男。
『初めまして勇者サマぁ。オイラはブリスク!へなちょこクロゥビルの代わりに四天王になった男サ!』
◇
可笑しい。そんな言葉が似合う男だった。
ひとしきり笑った後、彼はスンと黙り、ローブを広げた。
次に見た景色は、血に塗れるカズヤの姿だった。




