第23話 エルフの国
カズヤがこちらの世界にやってきて半年が過ぎた。
彼の活躍あってか、アルバシア帝国領の魔族たちは概ね一掃され、我々特務親衛隊はエルフの国、ユグドラシア王国へ向かうことになった。
彼らの王都に辿り着き、謁見を済ませた後、我々はすぐに戦場へと発った。
「隊長、少し休んでから行かれたほうが良いのでは?」
隊員の一人がそう提言するも、カズヤは首を横に振った。
「今も戦場で戦っている兵士がいるんだ。直ぐに向かわないと……いや、隊員たちのことも考えないと。今日は一旦ここで休みにしよう」
「我々は平気なのですが、隊長が」
「そうです!隊長が倒れられたら……!」
カズヤを心配する声が多く聞こえたが、彼の耳には届いていないようで、どこかへ向かおうとしている。
「隊長、どちらへ?」
「ちょっと魔物を狩ってくる。少しでも近隣住民の助けになれば……」
カズヤが少しズレた重心でそうものを言っていると、我々に用意された宿にまた一人入ってきた。
「近隣の魔物は王都の冒険者たちが駆除しています。あまり民間人の仕事をとらないであげて下さい」
「セレスティーナ王女殿下!」
「楽なさって下さい。明日以降に関して変更があるので伝えにきた次第です」
「その変更というのは?」
「次の作戦、エルフ軍の指揮官として私も同行いたします」
殿下の発言に驚きを隠せない我々を代表して隊長が意見を述べる。
「王女殿下。戦場は遊び場じゃないのです。どうか王城で吉報をお待ちください」
「そんなことは百も承知です。実際に戦場に出たこともありますし、王女は他にもおります。大丈夫ですよ」
「そう言うわけではなく!」
何度も問答を繰り広げたが結果変わらず、王女を連れて戦場に行くことになってしまった。
◇
あんな目をした人を私は見たことがなかった。
英雄と、勇者と呼ばれる異世界人がどんな顔をしているか見てみたい。最初はそんな好奇心だった。
けど、彼をみた時にはそんな好奇心は消えていった。
張り詰めたようで、虚なようで。えも言えぬ雰囲気を纏った彼。
表情こそ平静で、笑いもする。けれど、その目はどこか諦めたような表情。
人が立ってはいけない境地に立ってしまっているそんな人に見えた。
私の従軍の話は元よりあったものだ。王族自ら戦地に赴くことで兵士の士気を上げる。
これまでも何度か戦地訪問は行っている。いつものことだ。
今回は人間軍との合同作戦。挨拶を行うことは特段おかしなことではない。
ただ、態々私が赴く必要もなかっただろう。
けれど、私はどうしても彼のことが気になり、半ば強引に挨拶に向かった。
人間軍の人たちじゃもちろん驚いた。王女が自ら挨拶にくるなんて異例だから当然だろう。
「次の作戦、エルフ軍の指揮官として私も同行いたします」
私がその発言をすると人間軍の人々はさらに驚いた。これも当然だろう。
不思議な彼――カズヤ隊長も驚いた様子だった。
「王女殿下。戦場は遊び場じゃないのです。どうか王城で吉報をお待ちください」
何度も押し問答をしてなんとか納得してもらったが、カズヤ隊長はどこか不満げ。けれど、最後には
「俺が守るから絶対にそばから離れないように」
そう言う彼の目は、やはりどこか諦めた様子で、虚だった。
けど、その目には優しさの明かりが灯っていた。
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