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勇者として召喚された俺(17)嫁と娘を連れて帰宅します!  作者: 雪代ゆき


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第22話 四天王

四天王と戦う

四天王が来た理由 暇つぶし


次の日の朝、夜襲もなく、平穏に過ごすことが一行は魔族を討伐せんとために戦線へと向かった。

線上には様々な死体が転がっており、死臭や腐敗臭が蔓延していた。


「浄化魔術をカズヤ自身に掛ければいいですよ」

「はい」


そう助言すると、カズヤは自分自身に浄化魔術を行使する。

魔術を学び始めて3か月とは思えない実力だ。


この戦場はたちが悪い。遮蔽物も何もないただの草原。多少強い龍脈……魔力の流れがあるものの、それ以外平和な草原だったのに、今では人や魔物関係なく死体が転がっている。青々とした草原は血みどろに染まってしまっている。


常人では目を背け、逃げ出すような光景だが、カズヤは凛とした体制で見事に馬を操っている。


「カズヤ、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないよ、けど……うん。大丈夫」


しばらく馬を走らせると魔王軍が姿を現す。もちろん、昨日の奇襲なんて目じゃない数の魔族たちが視界を埋め尽くす。


「カズヤ」

「うん、なんか強いヤツがいるね」


魔族側からすごく強い魔力を感じる。きっと司令官だろう。


『ほう……暇つぶしに来てみたら、勇者に出会えるとは……なんと運が良い』


底が震えるような声が戦場に木霊する。


「だれだ!」


突然聞こえた声に同様する人間軍のなか、カズヤがそう声を上げる。


『俺の名前はそこまで轟いていないか、皆殺しにし過ぎるのも考え物だな』


そう言って姿を現したのは3mはありそうな体躯に、漆黒に紫を混ぜたようなまがまがしい色合いの鎧。4mに届きそうな大剣を持った大男だった。


『あえて名乗ろう、我が名はクロゥビル。魔王四天王が一人だ』


これは口上戦だ。その証拠に魔王軍はクロゥビルなる者を先頭にしたまま動いていない。


「敵軍のあの様子、本当に四天王の様ですね」

「俺も言った方が良い感じだよね」


カズヤのその問いに私は無言で肯定する。

つい最近まで民間人だった彼に口上戦を任せて良いのだろうか。口上戦は今後の士気にも関わる。本当に大丈夫なのだろうか。

そんな考えが脳裏よぎるが、この時はなぜか頷てしまった。


「アルバシア帝国特務親衛隊隊長、羽鳥和也だ」

『口上感謝する』

「貴殿らは何用があって、われら人間領を犯さんと欲す」

『我らが神の啓示により、人類を粛清するために参った次第』

「そんな事、到底許容できるはずがない」

『で、あろうな』


交渉の余地はない。クロゥビルが醸し出す空気がそう告げている。


『だが、それではつまらない』

「つまらない?」

『そうだ。ただ人類を粛清するだけだとあまりにも味気ない。故に、一騎打ちを申し込む』

「だれとの一騎打ちだ?」


そうカズヤが聞くと、クロゥビルはゆっくりとカズヤを指さした。


『おまえだ、勇者よ』

「その一騎打ち、こちらが受けるメリットは?」

『万が一この私が敗れた場合、ここに展開している軍は即座に本国へ撤退しよう』

「その保証は?」

『今回連れてきているのは全て魔物だ。魔物は俺に絶対服従、たとえ死のうとも、魔王様でない限りそれは命令の上書きは出来ない』


証拠を見せるように、クロゥビルは近くにいた魔物に自害を命じた。

それに魔物は有無を言わせず従い自決した。


『これでどうだ?』

「わかった、信じよう」

「カズヤ!」

「勝てばいいだけだ!因みにそちらが勝った時はどうする?」

『勇者を殺せただけで十分よ』

「わかった」


そう言ってお互い距離を取る。


「カズヤ……あなたという人は――」


まるで歴戦の勇士の会合だった。戦いというものを知って3カ月の少年とは思えないそれは、勇者というスキルがそうさせているのだろうか。

答えは出ない。


カズヤは馬を降りて、クロゥビルに向かう。

何方ともなく剣を抜く。カズヤはロングソードを、クロゥビルは大剣を抜いた。


『いくぞ、勇者よ』

「こい、クロゥビル」


勇者と口にすると、クロゥビルは体中に力を込めた。

太い血管が浮き上がり、筋骨隆々な体躯が協調される。


クロゥビルは力強い足取りで駆けると、一直線にカズヤに向かう。

クロゥビルは間合いに入ったこと感じ取ると、温まり切った身体で大剣を振り下ろす。

その剣筋に迷いも躊躇もなかった。


「はっ!」


カズヤはロングソードを横に構えてクロゥビルの一撃を受け止める。


『むっ……!?』


受け止められたクロゥビルはカズヤに驚く。

振り下ろされた大剣を体を揺らすことなく受け止めたからだ。


『初撃はとめたか……ならこれではどうだ!』


続けて容赦なく彼は大剣を振る。カズヤも負けじと応戦。両者の剣がぶつかり合うことで生じた咆哮。それが、人間軍の注目を集めた。


「ぐっ!あぁ……」


いくら訓練を積んだ勇者といえど、その期間はわずか三カ月、クロゥビルの猛攻に何とか防御をするも、そのすべてを受け止めることは出来ず。体に傷を作る。


『ふんぬっ……!』

「はあっ!」


その時だった。クロゥビルの大剣をカズヤがはじき返すと、クロゥビルはその衝撃に一歩下がる。

信じられないものを見たといわんばかりの顔をして、体験を素早く構え直した。


次はカズヤが攻撃を仕掛ける番だ。


今のカズヤは俊敏に剣を振るといった技術はない。だから一撃に重きを置いた剣技だ。


『ッ……勇者とは、このような……ものなのかッ!』


器用に大剣を使い防御するクロゥビルだが、防戦一方。数歩後退る。

そんな時、カズヤの剣筋が変わった。


「カズヤ……あれはいったいどういうことなのですか?」


嵐の波止場を思わせる荒い剣筋が、穏やかな清流の様な変貌を遂げた。

穏やかな剣筋に変わったのは事実だが、どうにも流れは穏やかには思えない。


「ふっ――せぁ!」


カズヤは無心で剣を振る。ただ勝利するという事だけを考えて突き進んでいく。


『なんだその剣は、こんな……くぅ!』


一振りは先ほどに比べて軽い。だが、クロゥビルの立ち回りは明らか動きずらそうだった。

気が付けば腕に力をが入らない体制で、気が付けば足元がおろそかになる。


「はぁああッ!」


清流の様な剣撃は滝のような力強さに変わる。

これが初陣とは思えない剣に進化を遂げているカズヤを見る私は瞬きすら忘れるほどに見入っていた。


『さすが勇者よ、これほどとは!』


追い詰められているクロゥビルも内心感動している。これほどまでの強者が敵である。厄介極まりないが、一武人としてとても心が躍っていたのだ。

体勢を崩したクロゥビルへカズヤは剣の柄で当身を食らわせる。


「これで……!」

『させ、ぬッ!』


腹を抑えたクロゥビルへ剣を振り下ろすが寸前で防御される。

だが、カズヤの攻撃は勢い止まるところ知らず、防御したクロゥビルを数メートル吹き飛ばした。


「終われ!」

『ぬお!』


躊躇なく踏み込んだカズヤは大剣ごとクロゥビルを斬り付ける。

大剣は砕け、カズヤの剣はクロゥビルへ突き刺さる。


『まさか……これほどとは……ッ!』


今一度剣を引き抜き構えるカズヤは聞いた。


「最後になにかあるか?」

『……魔王様は強いぞ』

「わかった」


そう言って最後の一振りをクロゥビルへ送る。薄く紫色に光っていた鎧はそれを失い、力なく倒れた。

周囲を確認すると、魔物たちは一目散に帰っていく。


勇者の初陣は四天王撃破という華々しい結果となったのだ。

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