第17話 アリシアの学校デビュー
スマホを用意してから数日、俺の家に一通の手紙が届いた。
こちらの世界に来てからは役目を終えた物だから何かが届けられることはもうないはず。
「神様からか」
差出人のところには丁寧にイーディスと書かれている。
内容を確認してみるとアリシアの学校の準備が整ったとのこと。
玄関前に置かれていた小包は察するに制服類一式だろう。
「お父様?お手紙ですか?」
「ああ、神様からだ。アリシアの学校の準備が整ったってさ」
「まあ!それは楽しみです!」
アリシアの年齢だと中学生になるだろう。
しかし、学力的にはもうほぼ終わっていると言っても過言ではない。
アリシアにとって実りがあるかどうか……
そう悩んでいると、手紙の末尾が目にとまる。
追伸
アリシアの実力を加味して考えると高校にもいけるじゃろう。
中学、高校。どちらにもいけるようにしておいたから、好きな方を選択しなさい。
本当に至れり尽くせりだ。どうしてここまでやってくれるか分からないが、とにかくありがたい。
「アリシア、年齢的には中学校だが、学力では高校並みだ。どちらにもいけるけどどうする?」
「高校というのはお父様たちが通われているところですよね?」
「ああ、そうだ」
「だったら、高校に行きます」
「そうか、だったら――」
アリシアがそう決めようとした時、セレスが待ったをかけた。
「私たちの学校は確か中等部もありましたよね?」
「ああ」
「でしたら中等部に行くべきだと私は思います」
「お母様、でも!私はお母様たちともっと一緒にいたいです!」
「そういってくれるのはとても嬉しいわ。けど、例え学力が相応でも人間関係やその辺りの力は座学だけでは補えないわ。あなたならわかるでしょう?」
そう聞くと、アリシアは黙って小さく頷く。
「それにね、私はお母様をやってみたいのです」
「どういうことです?」
「授業参観っていうのだったり体育祭だったりの学校行事に、保護者は参加できるそうなの。私はそれをやってみたいの」
あくまで私がやってみたいことだけどねと枕詞置く。
「いずれ高校にも通うことになるだろうから、大人になるのはゆっくりでいいんだ」
少し頬を膨らませたアリシアの頭を撫でながら俺は言った。
「どちらにしろなんて強制はしないよ。アリシアはどうしたい?」
「……私は――」
◇
次の日、俺とセレスは学校に来ていた。この世界に帰ってきて一ヶ月近く、俺もセレスも、やっと慣れてきた。
人の噂は七十五日、それには半分も達していないが、学生の世間などこの程度だろう。
というより、もっとホットな話題が提供されたのだ。
「なあなあなあ!」
すごい勢いで教室に入ってきた遼は俺に詰め寄る。
「中等部二年に来た超絶美少女転校生はセレスティーナさんの妹って聞いたんだが本当か!?」
本当にどこから仕入れてきたのか、学校が始業してから二時間ほどしか経っていないのに他学年の情報をよく聞きつけてくる。
結局、アリシアは俺たちと同じ学校の中等部に入学した。やはり俺たちと同じ高校に入りたいとのことだったが、同世代との触れあいも大事であると本人も考え、うちの学校は高等部と中等部の垣根が浅いことからこのような判断に至った。
「アリシアだろう?」
「そう!アリシアちゃん!」
「そうだぞ、セレスの妹だ」
「やっぱな!ちょー似てるって噂だぜ」
「お前、あまり他学年を野次馬するなよ」
「ばか、俺がそんなことするわけないだろ?他のやつからの情報だ」
こいつの情報網はどうなってるんだ。
この分だとアリシアの方も相当だろうな。すり合わせた通りに話してくれれば良いのだが。
そんな心配をしつつ午前の授業を受けていく。
◇
昼食は一緒に過ごしたいとのことだったので、俺とセレスは食堂でアリシアを待っていた。
すると、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。アリシアだ。
「ここが食堂ですか〜!すごいです!」
「午前の授業どうだった?」
「皆よくしてくださいました!これからの学校生活が楽しみです!おと……お兄様!」
「それはよかったですね」
セレスが転校していた時のように使い方を説明しつつ確保していたテーブルに着く。
「午後はどういう時間割なんですか?」
「午後には数学と体育が予定されていました」
「体育はちゃんと手加減しろよ?相手は訓練された人間じゃないんだから」
「わかってます。でも、どのくらい手加減すれば良いのでしょう?」
俊敏な動きが得意なエルフは持久力こそないものの、身体能力は人より高い。持久力に関しても訓練されていない人間では歴然の差だろう。
「周囲の人を見学しながら手加減すれば良いだろうが、そうだな……訓練初週の衛士を相手する気持ちで行けばいいぞ」
「わかりました!頑張ってみます」
そんな話をしながら食事をとり午後への英気を養う。
少し不安な親心が見え隠れしつつも午後の授業に臨むのだった。
◇
時は過ぎて月が天高く上がった頃。
俺たちはまた食後酒を楽しんでいた。
「今日はアリシア、早く寝ましたね」
「楽しそうにはしていたが、新しいことを始めたんだ。疲れたんだろう」
学校から帰ってきた後にも楽しそうに今日合った出来事を教えてくれる姿を思い返し、口元に笑みが灯る。
「セレスは大丈夫か?怒涛の一ヶ月だっただろうけど」
「私は大丈夫ですよ。だって――あなたがいるんですもの」
そうして俺たちは影が重なる。夜空に広がる星雲に月が二つ。今日もまだ平和である。
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