第15話 女子会
セレスが学校に通い始めて二週間が過ぎた。
転校初日のテンションは鳴りを潜めたが、それでもまだまだ学校では噂の的だ。
一年と少し経っているクラスの中にうまく入れるかどうかで心配をしていたが、そこは持ち前の社交性でなんともあっさりグループに入って行った。
「カズヤさん」
「どうした?」
今の時間はちょうど昼休み。セレスお手製の弁当を手に俺とセレスは学校の中庭で昼食をとっていた。
「実は女子会というのに誘われまして」
「それがどうかしたのか?」
どこに迷う点があるのか気になっていると彼女は話す。
「何を手土産にすれば良いのでしょう?無難にお茶菓子でしょうか?」
「学生同士のものに手土産なんて……ああ」
学生同士の集まりに手土産なんてと思ったが、彼女は根っからの貴族どころか王族。たとえ学生同士のお茶会でも手土産やら社交辞令のオンパレードだったわけだ。
「もっとフランクに行って良いと思うぞ?場所ってどこなんだ?」
「駅にほど近いところに開店したお店だそうです」
「だったらお茶菓子もいらないな。手ぶらで行っても良いと思うぞ?」
「そういうものなのですか……」
疑問は無くなったようで、彼女は弁当を口に運ぶ。順調に関係を築いているようで安心したのが昨日の話。
◇
どうして俺はここにいるんだ?
所は駅前に新規にオープンした話題のカフェ。噂を聞いてか若い女性を中心に店内は賑わっている。
そんな中、俺はクラスの女子二人とセレスの四人でテーブルを囲んでいる。
「――それでさ、A組の田中さんが付き合っているの社会人らしくてさ」
「えーダメじゃんそれ」
「しかも初対面の時に――」
もう一度言う、どうして俺はここにいるんだ!?
時は遡り昨夜。俺たちの家のリビングでくつろいでいる時にセレスがこんなことを言い出した。
「明日の女子会の件なんですが」
「どうかしたのか?」
「カズヤさんについてきてもらっても良いですか?」
「え、ど、どうして?女子会だろう?」
「道が心許ないと言いますか……」
こちらにきて電車を使った移動はショッピングモールに行った時の一度だけ。しかも駅までは車で行ったことを考えれば自然なことだ。
「わかった道中案内するよ」
「助かります」
そうして今日、件のお店に到着するとあれよあれよと店内に。
「なあ、葛西さん、二子山さん、俺ここにいていいの?」
「いいのいいの!むしろそのために来てもらったんだから」
「うんうん!」
すごく興味ありげに二人をおいておいて、セレスをみる。
「セレス」
「……なんです?」
「どうして言わなかったんだ?」
「……内容が内容ですので、その、断られるかと……」
すみませんと小さくなって謝るセレス。
「別に行ってくれれば承諾したぞ?」
「だって、クラスの方達からの質問には怪訝そうに答えていらしたじゃないですか」
「そりゃあ、あんな詰め寄りかたされたら誰でも怪訝になるさ。ちゃんとセレスに呼ばれれば俺はいくぞ?」
「……次は素直にお伝えします」
「ああ、そうしてくれ。な?」
しゅんとしている彼女の頭を撫でる。いつなでても彼女の髪は心地良い。
「なんか騙し打ちみたいになってしまったみたいでごめんだけど二人に聞きたいことがあるんだ!」
葛西さんが勢いよく聞いてくる。
「なんだ?」
「ズバリ!二人の馴れ初めについて!」
「男女16歳で結婚できるようになってしばらく経つけど、あまり私たちの年齢で結婚している人って聞かないじゃん?だから気になってて」
彼女たちの疑問はもっともだろう。
何せ俺たちが結婚している状態でこちらの世界に来るときに神様が法律を変えてくれたのだから。
なのでこの年齢で結婚している人はいないだろう。
しかし、どうしたものか。
当たり前だが、異世界の話なんてできるわけがない。まあ、したところで信じてもらえるわけがないが。
そう思案している中、セレスが口を開いた。
「事故だったんです。車と事故に遭いそうになった時にカズヤさんが助けてくださったんです」
「ええ〜!セレスティーナさん大丈夫だったの?」
「ええ、怪我はありませんでしたよ」
「吊り橋効果的な?」
「それについてはよくわかりませんが、事故の後にお話ししているうちに……て感じです」
その回答に葛西さんと二子山さんは黄色い声を上げる。
半分嘘が混じっているが、ありありと語られてすごく背中が痒くなる。
「いつ頃結婚したの?」
「半年ほど前に」
「どっちから告白したの?」
「両方ともカズヤさんからでした」
……公開処刑だ。
「ホント、なんで俺ここにいるんだろ」
「この後セレスさんのことも聞くから!もうちょっと待ってて」
「……くそ」
どこを向いていいかわからず視線を外す。すると今度はセレスが俺の頭を撫でてきた。
「今のカズヤさん、かわいいです」
「……うっさい」
それから延々と根掘り葉掘り聞かれ続け、セレスも俺も耳を赤くした。
聞いている葛西さんと二子山さんも耳を赤くさせているようにも感じる。
「さ、最後に!二人ともどのくらい好き?」
難しいことを聞くなぁと思って考えを巡らせているとセレスから思いもよらぬ発言が飛び出た。
「好きではありませんよ?」
「へ?」
するとセレスは艶然とした表情で言った。
「愛しているのです。せめて大好きと言ってもらわないと困ります」
そう言い切る彼女の表情はとても澄んでいてかつ美しかった。彼女に見惚れるのはこれで一体何回目なのだろうか。
「ああ、俺も愛しているよ」
そう言って俺は提供されていた水を一気に飲み干す。燃え上がる炎に水をかけるつもりで。
「あっまい、コーヒーが甘いよ」
「うん、そしてお熱いねぇ」
会計を終えて外に出ると妙に涼しい。なぜだろうか。
皆目健闘がつかないが、二人とは駅で別れ、俺たちは家に帰宅する。
「今日は楽しかったか?」
「はい!カズヤさんのことをいっぱい惚気られたので!」
「次からは俺がいないところでやってくれ。体が持たない」
「考えておきます」
次が来ないことを祈りつつ付き始めた街灯のしたを歩く。今日も平和だ。
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