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勇者として召喚された俺(17)嫁と娘を連れて帰宅します!  作者: 雪代ゆき


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第126話 驚きの朝

 朝、微睡の中にあった意識は覚醒する。

目を開けると、愛しい人の顔が映った。


「んんぅ……」


彼女はまだ夢の中。冬の寒さが肌を突く。

彼女の方へ身体を持っていこうとすると何かに阻まれる。


「……ん?」

「ふあぁ」


聞いたことのないほどに幼い声が鼓膜を振るわせる。


身体を起こして確認すると頭の片隅にあった眠気がどこか彼方へ吹き飛ぶ。


「セレス、セレス」

「んぅ……どうしたんですか?カズヤさん」


彼女を急いで起こす。

二、三度揺らすと彼女はその微睡から目を覚ます。


「見て、見て」

「どうしたんですか?そんなに慌てて」


彼女も身体を起こすと固まる。


「う、あ〜!」

「……まあ」


俺とセレスの間におくるみに包まれた赤子がいたのだ。


「……どういうことだ」


困惑していると声が聞こえてくる。久しく聞いていなかったが、忘れもしない声だ。


『いきなり赤子が間にいて驚いたことだろう。ワシとて驚いておる』


「イーディス様!」


『久しいの、和也、セレスティーナ。まず簡潔に言おう。この赤子は其方らの子供じゃ』


「どういうことですか!?」


『驚きは当然じゃろうて。もちろん、生物的な子供ではない。妊娠も出産もしておらんじゃろう?この赤子はこの世界の新しい魔力、すなわち其方らの魔力から生まれた新たな精霊じゃ』


イーディス様の言葉に俺たちは驚きのあまり口を開ける。


『精霊の生まれる仕組みは知っておるじゃろう?』


「それは、知っています。魔力の循環によって精霊は新たに生まれると」


『しかしじゃ、この世界はもう魔力を扱う生物は存在しない。そんな中に魔力を扱える其方らが舞い込んだ。微精霊を残しただけのもう魔力が循環しないこの世界に』


「それとこれがどう関係するのですか?」


『この世界で新たな魔力。それは其方らじゃ。あとはもう察しがつくじゃろうて』


精霊は魔力の循環から生まれる。けれど、循環するところが俺とセレス後はアリシアだけ。となるとつまるところは……


「私たちの魔力から生まれた精霊、ということですか?」


『その通り。しかし、精霊とは本来自然と一体であるもの。人間の魔力から生まれたせいか、この赤子は人間として現界しておる。肉体を持ち、身体構造や魔力の宿り方まで全て人間と同じ。謂わば、魔力から生まれた人間じゃ』


俺たち二人は笑顔を振り撒く赤子に目をやる。

それに気がついたのか赤子はめいいっぱいの笑みを浮かべる。


『最初はこちらで預かろうかとも思ったが、人間であるのなら話は別。神の世に人間では居れないし、何より親元で暮らす方が良い。ということで、この赤子を其方らに預ける。預けるというよりも返すと言った方がいいかもしれんの』


「しかし、俺たちには何の準備も、それにこの子の戸籍や病院は」


あまりの気の動転に余計なことばかり考えつく。

イーディス様はそれに対して一つづつ回答していく。


『役所関係や病院関係はすでに細工済みじゃ。其方の家のポストに全てまとめておいてある』


「はあ」


『いきなりで大変申し訳ないが、この赤子を頼んだ。もし何か困り事等があれば手紙を書いてこの封筒に入れるが良い。数日内に返信するでの』


ではの、という声と共に何もない空中からふわりと封筒が現れて俺の手元にやってくる。



精霊といっても子供だ。この世界ではまだ学生の俺たちには荷が重い。などなど。様々な思考が錯綜する。

そんな中、口から出たのは極々一般的な言葉だった。


「マジかよ」

「……イーディス様」


さすがのセレスも頭を抱えるようだ。


「うあ〜」


赤子が声を上げる。まるで構ってというように。


「……どうしましょう」

「とりあえず抱っこするか?」


様々な疑問が浮かぶ中赤子を抱く。


「あう〜!」


セレスが赤子を抱くと赤子は嬉しそうに声を上げる。


「……この子からカズヤさんの魔力を感じます」

「俺もセレスの魔力を感じる」


本当にこの子は俺たちの子供なんだ。

かつて生まれたばかりのアリシアを抱いた時と同じ感覚に陥る。


「セレス、セレスはどうしたい?」

「私は……」


率直に聞いた。一度アリシアで経験したからわかる。子育てはとても大変だ。筆舌しがたいほどに。


「私は育てたいと思います。魔力がどうとか関係なく、私はこの子の親なんだと。アリシアの時のように感じるから。だから……うまく言葉がまとまらないですけど、この子を育てたい」


彼女の真剣な眼差しに俺は頷いた。


「俺も、そう思う。この子の親なんだって。一緒に頑張ろう。今度は一緒に」

「はい、一緒に」


抱いている赤子は、はだけたおくるみからめいいっぱい手を広げて空中をつかもうとする。

そこに指を持っていくと、弱くけれど力強く握ってくれる。


「アリシアにどう紹介しようか」

「お義母様たちになんて説明しましょう」


同じような悩みを同時に吐露する。

それが何だかおかしくて思わず笑う。


さあ、長い1日になりそうだ。

読んでいただきありがとうございます!



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