第125話 クリスマスイブ
クリスマスイブ。聖なる夜の前夜は至って普通の日であった。
「ねえねえお兄、クリスマスパーティーっていつやるべきなんだろうね。イブ?それとも当日?」
クリスマスパーティーの為の準備をしている唯はそんなことを口にした。
「そうだなぁ、日本人はどちらかと言えばイブにやっているところが多いんじゃないか?」
「クリスマスは24日の日没からなのでイブにやっても問題ないそうですよ」
「よく知ってるねセレス」
「今調べました」
そう言ってセレスはスマホを振って見せる。
「セレスもだいぶ現代に馴染んだな」
「便利ですから。ちゃんと節度を持って使っていますよ」
今回のクリスマスはいつも以上に気合いが入っている。
以前は確かケーキを食べた程度のはず、10年も前だからあまり良くは覚えていない。
「お兄、そろそろケーキ取りに行ってくれる?」
「今回はケーキ屋さんに発注したんだったけか。わかった」
「でしたら私もいきますよ」
「お父様、私も」
「じゃあみんなで行くか」
向かう先は近所のケーキ屋。昔から付き合いがある個人店だ。
「いらっしゃいませーって、和也くんじゃないか。久しぶりだね」
「店主さんもお久しぶりです」
「今年はクリスマスケーキを発注してくれたよね。嬉しいよ。ちょっと待っててな、今用意するから」
セレスとアリシアはショーケースの中にあるケーキたちを眺めている。
「お待たせ。6号なんて今年は随分と人が集まるんだね」
「家族が増えましたから」
「え?もしかしてそこの二人……」
「妻と娘です」
俺の紹介に合わせてお辞儀をする二人。
それに対して店主はあんぐりと口を開けた。
「娘って、和也くん今君いくつだい?」
「ちょっと事情がありまして……娘なんです」
「そ、そうか。まああまり詮索はしないよ。ていうか結婚したんだね。驚きの連続だよ」
「すみません」
「謝る必要なんてないさ、何せおめでたいことなんだから。これを持っていくといい」
そう言って手渡されたのは人数分のジンジャーブレット。
「ケーキ屋だからね。これぐらいしか渡せるものはないけど、結婚おめでとう」
「ありがとうございます」
ケーキを受け取って家路に着く。
「お知り合いだったのですか?」
「そうだな、近所だったからいつもあそこのケーキを買ってたんだ。個人店だから顔も覚えてくれててな」
「なんだかいいですね。そういうの」
もらったジンジャーブレットを一口。
食べたことないのにどこか懐かしい味がする。
「美味しいですね」
「そうだな」
「唯お姉様には内緒ですね」
「それもそうだな」
夜。照明をいつもより落とした室内はクリスマスツリーの電飾が映えて光る。
「これで全部かな、食べよう!」
机には七面鳥、ローストビーフにパイシチュー。所狭しと料理が並べられている。
「豪勢だな」
「初めての6人でのクリスマスだもん!このくらいじゃなきゃ」
「ありがとうございます、わざわざこんな」
「いいのいいの!私がやりたかっただけだし!それにみんなとクリスマス会ができて嬉しいもん!」
「見たことのない料理もあります!楽しみです!」
俺たち6人は新しいダイニングテーブルに着き、クリスマス会を始める。
「こんなのを買ってみたんだ」
そう言って父さんは箱を取り出した。
「何これ?」
「シャンパンのボックスくじ」
買った金額分のワインやシャンパンが保証されているいわば福袋。
あまりこう言った類のものを買ってこない父さんにしては珍しい。
「和也もセレスさんも飲めるし、たまにはこういうのもいいだろ?」
「いいわね。美味しいのが入っていればいいけど」
中を開けてみると、コルクで栓がされたワインが出てきた。
「これは何等なんだ?」
チラシと照らし合わせて確認してみる。
「3等か、まずまずだな」
「100本中の3本でしょう?中々の確率じゃない?」
「どれ、早速飲んでみるか」
ポンと景気の良い音と共に封が開く。
「せっかくだし、乾杯しませんか?」
「いいね」
皆各々のグラスに飲み物を注ぎ、乾杯する。
グラスとグラスが合わさる華麗な音と共に皆の乾杯の音頭が聞こえる。
「美味しいですね。爽やかで」
「買ってみるもんだな、美味い」
豪勢な食事に舌鼓を打ちながらワインを楽しむ。
平和だなと実感しながら。
「息子と酒を飲む日が来るとはな……俺も歳を取るもんだ」
「本来ならもう少し先なんだけどね」
「なんであれば息子の嫁と酒を飲む日が来るとは……いやぁ感慨深い」
「そうねぇ」
「私もお義母様やお義父様と一緒にお酒を飲めて嬉しいです」
「アリシアちゃんはまだ飲まないのよね?」
「はい、イースガルドでは16になる前までお酒はダメと決まっていましたから」
「もうこちらの世界に来たんだから20までダメだな」
そう言って笑うとアリシアはムッとした顔で抗議してくる。
「お父様はいいのですか?今の体は17なのでしょう?」
「俺はいいの。27だから」
「都合がいいですわねお父様」
「ははは、大人はそういう生き物なんだ」
こうして夜は更けていく。特別な夜はすぐそばに。
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