第114話 庭のお手入れ
庭に出ると少し草木が茂った木々が出迎えてくれた。
自慢ではないが、我が家の庭は広い。どのくらい広いかと言えばこの屋敷2つ分に少し満たない程度だ。
セレスが自然を感じられるようにするために造った庭だったが、いつの間にか人を招けるような立派な庭園に成長していた。
侯爵以下の貴族家では破格に大きかった庭園はハトリ庭園としてそこそこ名が知れていたりした。
そんな庭園はセレスの魔術によって管理されていたが、こちらの世界にやってきて半年余り、庭師や従者たちがいなかったので流石に成長に合わせた管理は行き届いておらず、木々たちは逞しく成長を遂げていた。
「……これを手入れするのか」
「アリシアも呼びましょうか」
「そうしよう」
流石にこの量を二人で捌くのはキツいので、アリシアにも参加してもらう。
「お手伝いをするのはいいですけれど、私なんかが触っても良いのでしょうか?」
「本当は専門家を呼びたいところだが、この屋敷に呼ぶわけにはなぁ」
「……そうでしたね、頑張ります」
脚立とハサミを用意して木々の剪定を始める。
パチン、パチン。
小気味良い音が庭に広がる。
いくら使用人たちが剪定しているところを見ていたといえど素人、途中で触っている木から離れて全体のバランスを確認しながら進める。
ふとセレスの方を見ると、綺麗にかつ素早く剪定を行っていた。
「すごいなセレス、よくそんなスピードでやれるもんだ」
「屋敷に来ていた庭師の方に教わってたんです。流石に実践するわけにはいきませんでしたけど」
まあ、地方ならいざ知らず王都の貴族、貴族家当主奥方が土いじりをするのは体裁的に良くはない。セレスに至っては王女だった訳だから余計だ。
今の様子を見るにきっとやりたかったのだろうなと思いながらその様子を見守る。
「セレス、木は俺がやるから、二人は薔薇とか植物をお願いしていいか?」
「わかりました。わからないことがあれば聞いてくださいね?」
「わかった」
ときよりセレスに教えを乞いながら剪定を進める。
しばらくして、剪定が大方終わると、次は東屋の整備に移る。
「使っていなかったので当然ですけど、なかなか汚れていますね」
箒で中に入り込んだ落ち葉を掃き、テーブルを拭く。
すると以前の輝きを取り戻した東屋。
「外身も中々汚れているな……そうだ、二人とも一旦東屋から離れてくれ」
二人にそう指示を出して俺は魔術の準備をする。
「――【スプラッシュ】」
魔術によって生み出された水が東屋に降りかかる。シャワーヘッドから出たような水はみるみる東屋の汚れを落としていく。
「お父様?最初からそれをやれば中を拭き掃除する必要なかったのでは?」
「悪い、今思いついた」
「カズヤさん?木によっては多量の水がダメな子もいるんですよ?」
「え、そうなのか?……ごめんなさい」
「ふふっ、大丈夫です。幸いこのあたりの木は丈夫な子ばかりですから。さ、水浸しだと余計に汚れがついてしまうので拭きますよ」
水に濡れた東屋を拭いていく。
ここまでの重労働を複数人がかりとはいえ日常的に使用人たちが行っていたと考えると全く、頭が下がる思いだ。
庭の整備は日柄一日続いた。
と言っても全て行えたわけではない。太陽が傾いて中々作業が難しくなったことから今日の作業は終了となった。
「……一日では終わらなかったですね」
「……疲れた」
「確かに疲れましたね……」
体力的にはまだまだ余裕があるのだが、ずっと上を向いている慣れない作業に疲れた。
「さて、夜ご飯にしましょうか」
「今日は疲れたし、外食でも良いんじゃないか?」
「ふふっ、今日は疲れると思って先に作っておきました」
「お母様!今日のご飯はなんですか?」
「今日はカレーですよ〜」
「楽しみだ」
そうして今日もまた終わる。日柄1日の作業は疲労感はあれど、どこか充実感がある。心地よい疲労感を感じながらも俺たちは屋敷へと戻った。
読んでいただきありがとうございます!
下にある☆を★★★★★にしていただけると嬉しいです!




