第105話 親友が勇者だった話
「ねえ、さっきの話なら、文化祭で……」
「ああ、文化祭でやったことはこれが元だったんだ」
一通り屋敷を見て回った俺たちは屋敷のリビングに通された。
本当なんだな。
それが俺が屋敷を見せてもらった感想だった。
床や家具、天井に至るまで意匠を凝らされたものを見つけると、どことない重厚感というか、圧を感じた。
「この話、みんなにはしないのか?」
「ちょっと考えてはいる。けど、信じてもらえるかどうか……」
「文化祭の件もあるし、みんな素直に信じてくれると思うけどな」
「勇者と言ってもやったことは人殺しと変わらないから、あまり大っぴらにいうのもね」
「そうか……お前が思う通りにやるといいよ。俺たちからは何も話さない」
俺がそういうと葛西さんも頷いてくれる。
「ありがとう」
そう話す和也はどことなく大人の雰囲気を醸し出していた。
そうか、和也は俺より10年歳を取っているのか。
以前感じた違和感の正体を掴めた俺は腑に落ちた。
「なあ和也、武器とか見せてもらっていいか?」
「やっぱ気になるか?いいぜ。ついてこいよ」
そう言って笑う和也は年相応で、なんとも不思議な感覚だ。
「うおー!すげー!」
和也に連れられて入った部屋は武器庫のような場所だった。
剣や槍、ハルバートに鎧、多種多様な武器が揃っている。
「ここにあるのは屋敷の使用人用に用意した武器たちだな。一回も出番がなかったからどれも新品だ」
「武器をみて興奮って、中島くんも男の子だね」
「男なら壁一面の武器って憧れるだろ!」
「なんだったら試しに持ってみるか?」
「いいのか!?」
シャラリと剣を鞘から引き抜き、抜き身で俺に渡してくる。
「いいか?手を離すぞ?」
「おう」
和也の手から離れた武器は俺の両手にずっしりと重量感を感じる。
中身の詰まった鉄の塊なのだ。さもありなん。
俺は両手でなんとか正眼の構えを取ってみる。
「中島くん手、震えているよ?」
「これすっごい重いんだよ」
「訓練してないと重いよな、俺も最初そうだった」
俺の手から剣を奪い去った和也はヒュンヒュンと剣を片手で降ってから鞘に収める。
「カズヤさん?そんなにカッコつけなくても」
「いいだろ?このくらい」
俺が両手でやっとだった武器を和也は片手で……唖然としていると、セレスティーナさんが気にしなくていいですよと言ってくれる。
「訓練をしていない一般の方だとあれが普通ですよ」
「セレスティーナさんも武器を使えるの?」
「私は杖とレイピアを少々」
「……すっげ」
「ねえ和也くん!さっき廊下に飾ってあった風景画すごかった!あれって異世界の風景なの?」
「あそこに飾ってあるのはユグドラシア王国にあるベネルって街の風景画だな。こっちの世界でいうヴェネツィアみたいな風景が続いている街なんだ」
「へぇ、そうなんだ!他にもあるの?」
「だったら美術室に行こうか。他にもいろんな絵が飾ってある」
「行ってみたい!」
そう言って扇動する和也の顔は少年のような健やかさがあって。
でも、どこか達観しているような深みがあって。
なんとも不思議な空気を醸し出す彼。
俺の親友、勇者だったんだぜ?信じられないかもしれないけど、本当なんだ。
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