第100話 月光の下で
温泉を楽しんだ後は食事だ。
温泉旅館の食事となればテンションが上がる。
内心ワクワクしながら食事処に向かう。
今回は郷土料理のコースを選んだ。
せっかくの旅行なのだから良いものをと思って注文した。
「温泉に浸かり、料理に舌鼓を打つ。何とも贅沢ですね」
浴衣に羽織姿のアリシアとセレスと共に料理に舌鼓を打つ。
こういう時に俺の語彙の少なさが現れてしまう。
「お米から美味しいですね、ふっくらとつぶだちが良いお米、甘味もあってとても美味しいです」
「そうだな」
「あ、私の言葉を取りましたね?」
セレスの指摘にそっぽを向いて返す。
「全くもう」
「お母様、こちらの天ぷらも美味しいですよ!」
「確かに、お塩と相性バッチリですね」
料理を楽しんだ後、もう一度温泉を楽しむ。
さっぱりしたところで、時刻はもう21時過ぎ。少し早いが眠ることにした。
「何だか初めてですね、みんなで同じ部屋で眠るのは」
「確かに、以前の旅行の時はみんな個室だったからな」
「ええっと確か、こうして寝ることを川の字で眠るっていうんですよね」
「そうだな、親、子、親で眠る様子から漢字の川になぞらえてそう呼ばれてるらしい」
「そうなのですか?」
「諸説あり、だ」
「それじゃあ何でもありじゃないですか」
そうして笑いながら俺たちは床に着く。
明日は何をしようか。
そんなことを考えながら眠りについた。
◇
しばらくして、俺は目が覚めた。
時刻は日付が変わった頃。
いつもより早い時間に眠ったせいか、変な時間に目が覚めてしまった。
(風呂でも入るか)
そう思い立った俺は部屋に併設された家族風呂に向かった。
「ふぅ〜やっぱり温泉は違うな」
そんなことを独りごちる。
「お隣、失礼しますね」
「……起きてたのか」
軟い水音と共にセレスが横に座る。
「何だか目が覚めてしまって……でも、カズヤさんとお風呂に入れるのなら起きてよかったです」
「……そっか」
沈黙が場を支配する。
聞こえてくるのは温泉が湧き出る音ぐらいだ。
「……月が綺麗だな」
「本当に綺麗です。ずっと一緒に見ていたいぐらい」
頭上を見上げると、先ほどの夕焼け空とは打って変わり大きな満月と満天の星空が頭上を埋め尽くす。
「そっか意味知ってたんだな」
「ええ、勉強しましたから」
そういうセレスは俺の肩に頭を預ける。
「どうでしたか?文化祭」
「すごくよかった。けど、俺はやっぱりあんなにかっこよくはないよ」
「そうでしたか?今回取り上げませんでしたが、他の四天王との戦いの時の口上戦なんか特に……」
「あーあ!あれは忘れてくれ!」
「ふふ、はい。わかりました」
俺はセレスの肩を抱きながら言った。
「ありがとうセレス。セレスのおかげで話せたよ」
「いいえ、当然のことです。夫婦ですもの」
俺と唯や父さん母さんの関係はいい意味で変わることはなかった。
特段遠慮や配慮をされている様子はなく、唯が異世界のことを聞きたがるくらいで、いつも通りだ。
「なあセレス」
「はい」
「月が綺麗だな」
「はい、あなたとなら何度でも」
そうして俺たちは月光に照らされながら影を重ねた。
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