第98話 アリシアの文化祭
俺たちの文化祭が終わった翌週の日曜日、アリシアの通う中等部の文化祭が行われた。
何でもアリシアのいうにはメイドカフェをやるのだとか。
親としては驚くところはあるものの、本人が楽しければそれで良い。
いつも通っている通学路を辿って学校に向かう。
俺は外部受験組なので、中等部に入るのはこれが初めて。ちょっとワクワクしている。
「中等部もすごい盛り上がりですね」
垂れ幕や設置物が楽しげに置かれている。高等部に負けず劣らずの盛況具合だ。
「アリシアのクラスは1年4組だったか」
「そうですね、早速行ってみましょうか」
案内のチラシを片手に学校の中を進む。
しばらくして、1年4組の教室が見えた。
窓にはカーテンがつけれており、中の様子を伺うことはできない。
開店中と立札があるので、それを信用して扉を開ける。
「おかえりなさいませ、ご主人様、お嬢様」
出迎えてくれたのはクラシカルメイド服に身を包んだ中学生たち。
所謂アキバ文化のメイド喫茶を想像していたが、少々違うらしい。
内装は落ち着いた雰囲気を持ちつつ上品さを醸し出す。
店内で働くメイドたちは皆クラシカルのヴィクトリアンを彷彿とさせるメイド服に身を包んでいる。
女子生徒だけではなく、男子生徒も働いている。こちらは燕尾服を着込み、執事といった様子だ。
「お父様、お母様、来てくださったのですね!」
奥の方からアリシアが寄ってくる。
アリシアも例に漏れず、クラシカルメイド服を着ていた。
「驚いた、メイド喫茶って聞いていたからてっきり……」
「皆さんそれを想像するみたいです。しかし、学校行事、しかも中学生が現代のメイド喫茶をやるのはいかがなものかという意見が出まして」
「確かに、現代のメイド喫茶を否定する訳ではありませんが、学校行事としてふさわしいかと言われると少し疑問が残りますね」
「なので、伝統的なメイドの淑徳な姿を模範するのはどうだろうという意見に纏まりました」
「それは良い。礼儀作法はアリシアが?」
「はい、少しですが、スカートの捌き方やお辞儀、歩き方などをお伝えさせていただきました」
周りの生徒に目をやると、それに気がついたのか俺たちに礼を返してくれる。
「立ち話は何ですし、お席にご案内いたしますね」
「ああ、頼む」
「では、旦那様、奥様、お席にご案内いたします」
席に座るとアリシアがメニューを差し出してくれる。
「へえ、けっこう色々あるんだな」
サンドイッチといった軽食からコーヒーに紅茶、ジュース。文化祭にしてはとても気合が入ったメニュー構成だ。
「アリシアのおすすめは何ですか?」
「そうですね……サンドイッチと紅茶のセットなんていかがでしょう?」
「良いですね、それをいただけますか?」
「かしこまりました。旦那様はいかがいたしますか?」
「セレスと同じものを頼むよ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
そういってアリシアは下がっていく。
今一度店内に目をやる。
程よく優雅なBGMに綺麗なパステルイエローのカーテン。そして、白いテーブルクロス。
客の入りも悪くはないが、決して忙しさは感じられない。ちょうど良い雰囲気だ。
「中等部の文化祭もすごいですね」
「そうだな、礼儀作法がアリシア仕込みなら尚更だな」
王宮といういわば淑女教育の本場と言える場所で数多の教師から教え込まれた礼儀作法の数々が遺憾無く発揮されているように感じる。
しばらくそんな雑談に花を咲かせていると、注文した商品が到着した。
「お待たせしました。紅茶のサンドイッチセットにございます」
「ありがとう」
「とんでもございません」
「アリシアはこの後どうなの?」
「私のシフトは午前中だけなので、午後からでしたらご一緒できます」
「じゃあ、午後にもう一度こちらに顔を出すわね」
「はい、ありがとうございます」
それではと、見事なカーテシーを披露してアリシアは去っていく。
俺たちはサンドイッチたちを口に運ぶ。
すると、ただ具材を挟み込んだだけではない味わいが口に広がった。
「すごいですね。ちゃんとマスタードやピクルスまで入っています」
「本格的だな」
「紅茶も、香り高くてとても美味しいです」
文化祭特有の高揚感がそうさせているのもあるのだろうが、とても美味しく感じる。
軽食を終え、雑談をしながら紅茶をいただく。
優雅と言える日曜日だ。
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