第95話 いく久しく
「何だか情けない姿を見せてしまった」
夜も更けてきた中、カズヤさんはそう言って背中を丸めていた。
「私はようやくカズヤさんの腹の内を知れたようで、嬉しいです」
「……そっか」
そう言って笑うカズヤさん。
先ほどとは打って変わって、憑き物が落ちたような顔に私は内心安堵する。
「さて、今後どうしようか」
そう言ったカズヤさんは大の字になってベットに身を委ねる。
「そうですねぇ、しばらくは揺れた各国の立て直し、それに魔王軍残党への対応でしょうか」
「魔王を倒してはいおしまいってわけには行かないもんな」
そうですねと相槌を打ちながら私も一緒になってベットの横たわる。
肌から伝わる熱は先ほどの嫌な熱気はどこかに消え、カズヤさんの優しさが伝わってくる。
「なあセレス」
「はい」
「結婚しないか?」
「は、へっ!?」
驚いて振り返るとしまったという表情を浮かべている。
「ごめん、今の忘れて」
「忘れません!どうして急に……」
「……セレスはユグドラシア王国の王女なわけだろ?だったら、暫くしないうちに国に帰るんじゃないかと思って」
「……そうですね、魔王も討伐したことですし、そのうち国の方から帰還命令が出るかと」
「正直、もう帰したくない。ずっとそばにいて欲しい。だから……」
「それは私も一緒です。たとえ異世界でも私は貴方について行きます。だって愛していますもの」
私のその言葉にカズヤさんは顔を赤く染めた後、私を抱きしめる。
「……本当はもっとちゃんとしたところで言いたかったんだけどね」
「良いのです。人に話すことでもありませんし」
そう言って私も抱きしめる力を強くする。
カズヤさんの首元に私の頭が入る。鼻腔を擽るのは私の大好きなカズヤさんの香り。
「プロポーズはもう一度ちゃんとやるとして……セレス」
「はい」
「愛している」
「はい、私も。愛しています。いく久しくよろしくお願いします」
◇
赤裸々に、あるがままを家族に、父さんと母さん、唯にアリシアに伝える。
皆思うとことがあったのだろう。思い思いの表情で話を聞いてくれた。
話の内容もそうだが、空気が重い。
なのでちょっとおどけて見る。
「なあセレス、そこまで話す必要あったか?すっごく恥ずかしいんだけど」
「必要です。カズヤさんのことを伝えるにはここまで伝え切らないと」
この会話の流れに唯が乗っかってくれる。賢い妹だ。
「ねえねえ、お兄ってその後ちゃんとプロポーズやり直してくれたの?」
「わ、私も気になります!」
「そうですね……それから数週間経った頃に行われた戦勝パーティーの時にしてくださいました」
その回答に女性陣は黄色い悲鳴をあげる。
その手の話題はやはり興味を唆るのか、セレスにあれやこれやを聞いている。
頼むから俺がいない時にやってほしい。
話していれば時刻は時計が二周していた。
この教室が使えるのも限度があるので、俺たちは退室する。
やっと話せた。
それが俺の感想だ。
あまりにも長かった話ゆえ、話損ねていた。戦争の話でもあるからなかなか話しづらかったのと、改まって話をするのも何だったので良い機会だった。
俺にとってはもう、過去の事。
家族を隔ていた壁が一枚剥がれたような気がする。
そんな1日だった。
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