第93話 限界
帰城してからの記憶が曖昧だ。
気がつけば俺は城に与えらえた自室の天井を眺めていた。
この世界に来て2年。さほど使っていないこの部屋はどことなくまだ他人の家のような感覚が残っている。
それも、今となっては気持ち悪いほどの違和感になり、心底心地が悪い。
「帰れない……か」
現実感がない。
元より現実味のない異世界召喚なんてものにさらにまた異世界に帰るだなんて、想像が鼻から付いていなかった。
だとしても、この世界に来てから戦って、戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って。
……俺は一体何の為に。
「くそ……くそぉおおおおおおおお!!」
◇
カズヤ様が倒れて三日。
強力な結界魔法で部屋に閉じこもった彼。
偶に声が漏れ聞こえてくるようで、生きているようだ。
生きている……彼にとっては私たちには想像し得ないほどの生き地獄なはずだ。
「……カズヤ様」
部屋の前で立ち止まり、彼の部屋の扉を撫でる。
今私が声をかけたところで何の意味もない。
むしろ逆効果と言えるだろう。
でも、居ても立っても居られず、私はこうしてまた彼の部屋を訪れる。
「セレスティーナ殿下」
「……ケイン副隊長」
「隊長はまだ……」
「ええ」
私たちは彼の部屋を眺める。
眺めることしかできない。
「隊長の魔力が大きく揺らいでいます。らしくないほどに」
「それが本当の彼なのかもしれません。今までは完璧な勇者でしたから」
試しにドアノブに手を伸ばすもバチンと弾かれる。
「待ちましょう……隊長ならきっと」
「……そうですね」
◇
その日の夜、私は妙な胸騒ぎがして眠りから覚めた。
ナイトドレスに羽織ものだけという普段なら絶対に室外に出ない格好で速鐘る鼓動のままに足を動かす。
彼の部屋だ。
昼間は部屋全体を覆っていた大きな魔力が今は感じられない。
数度大きく息をして呼吸を整えてからドアノブを回す。
ガチャリと言う音と共にドアノブは回り、扉が開いた。
「――!カズヤ!」
次の瞬間目に入った光景は抜き身の剣を持ったカズヤ様だった。
「?やあセレス。どうかしたの?」
震える口元を何とか抑えながら、毅然と言葉を紡ぐ。
「……カズヤ様こそ、どうされたのですか?抜き身の剣なんて持たれて」
「――ああ、ゲームみたいに死んだら戻れるのかちょっと考えてて。きっとログアウトした時みたいにあの時の通学路に戻れるんじゃないかなと思って」
「……でしたら私もお供させてください」
「どうして?セレスの世界はここだよ?」
「私にとっての世界ってすごく狭いんです。王女なのにって思うかもしれないですが、数少ない知り合いが……好きな殿方がいない世界なんて私は耐えられません」
恐る恐る近寄り、強張った彼の手を優しく抑える。
「ちょっとだけお話しさせてくれませんか?そうしたら貴方の好きな通りにしていただいて構いませんから」
「……うん」
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