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アストリネの一族  作者: 廻羽真架
第一章. 白雷は轟き誕辰を示す【暁煌】
34/56

『リプラント』始


「―――――……………………は?」

吏史は惚けた声を上げる。上げた際に開いた口は簡単に閉まりそうになかった。

聞き間違いではないか、嘘ではないかと疑い何度瞬きを繰り返す。しかし、胸中は何も聞こえない。つまり、それが事実である。

ローレオンの真実を紡ぐ口は止まらない。


「二十年前、『リプラント』は二十五代目エファムの手解きにより現在の人型となる術と共にハーヴァと名乗る権利を経てアストリネと同じ存在に至る。そう、今の彼女の生も姓も二十五代目エファムが授けたもの。――つまり、彼女は人ではないがアストリネでもない。きみと同じだ。同じ、『古烬』の兵器だったわけだよ」

誤ちはない。それは真実である。いくら吏史を始めにした者達が衝撃を得ようとも事実は揺るがず有り続け、心の機微と震動を与えるのだ。


嘘だとも否定したくても、信じられないという拒絶をしたくとも。心理を読み解き看破する異能がそれを許さない。

強制的に殴りつけるように現実を叩きつけて、向き合うことを強要する。


「しかしジルコン=ハーヴァとしての形を保てる期間は限界があった。――二十年だ。この数字の意味はわかるか?この『リプラント』が仮死状態になったのも…二十年前だっただろう」

その場にいる誰もが意味を理解したが沈黙が続く。

「もう、現時点で彼女にはガタが来てる。元よりアストリネとして活動し続けた発電器官の酷使による[核]の寿命、その限界値と言ったところだろう。()()脱走した鎌夜と遭遇し怪我をしたのもトドメ、だったな。今の彼女の再生力は人間程度まで落ち込んでいる」

思わず吏史はジルを反射的に見てしまっても、ジルは主張を肯定するように口元に苦笑を浮かべて、未だ痛む腰の火傷を感じながら唇を噛み、緩やかに瞼を伏せていた。


「…『リプラント』の主核に戻るか、そのまま限界を迎えて絶えるか。いずれにしても終わりを迎えるのに相違ない」


それまで全てが無言の肯定。吏史が心を読むまでもなく示されるもの。背中の傷を隠すために普段は好まないジャケットを着用していた。傷を隠しながら異能を扱い普段通りに振る舞った再生力が落ち込んでいるというのに。

それだけでも相当、消耗するのが想像できる。命を削り続けて目的を成そうとしたのだ。

再生力が落ち込んで自分の死が見えていても尚、勇猛果敢に進むのが吏史がよく知るジルコン=ハーヴァだから。

深く、関係して。性格が分かりきってるからこそ理解して納得できて、嘘ではないと教え込まれる。

どれだけ直視を拒んだとしても、残酷な現実は眼前に置かれるのだ。

「ジル…」

吏史は唇を震わせて僅かに首を横に振る。最早、わかっていても、彼女自身の口から嘘であると答えてもらうしかなかった。否定のしようがない。

しかし吏史には慰めの言葉はかけられることなく、ジルはただ、沈黙に徹して瞼を閉じた。


……ローレオンが語る内容になんの捏造もなく是として伝えるように。静観するしかない朝海やカミュールに、これが偽りなき真実だと明示するようにも。


その発言が真だと理解した朝海は瞠目しながら手で口元を抑え、カミュールは蒼白し切った眉根を寄せて唇を歪めるばかりだ。


「で、も。っそうだ、二十五代目エファム様であれば…!かのエファム様をこれから見つければ!もう一度…!」

「かつて傑作と言われた絵を完成させた画家にもう一度何一つ違えずに同じものを描けと告げて、同一の絵をもらえると思うのかね」

横槍するように希望的感想意見を挙げた朝海を、ローレオンは手厳しくも即座に跳ね返す。その要望は通らないだろう、不可能に等しい。

「そ、それは…」

「そもそも、絵ではなく彼女は紛いなりとも生命体だ」

親が同じでも鏡のような子供は生まれないのと同義。

「環境が同条件であった一卵性双子であろうとも、能力や性格等が異なるようなものだろうな」

指摘を返しつつ、さらにローレオンは畳み掛けるように告げる。

「なのに、エファムを見つけて解決する?第一十五年誰にも見つからずに行方を眩ましているエファムをきみが見つけられるのか?それまでにジルは己の形を繋ぎ続けられるのか?間に合わせて同じように主核の型取り直したとして、その主核はジルコン=ハーヴァと言えるのか?彼女の形をして存在していれば、あるいは主核であるならば、それがジルコン=ハーヴァだときみは宣うのかね」

「……あ、…ッ!」

仮に描かれたとしても同じ作品ではない。後に出たものは全て異なる。名乗り出たとしても真似ただけの贋作と例えても過言ではない、終わった命は決して、取り戻せないのだ。

死を残せない種族であっても人であっても――全ての生命に定められた揺るがない鉄則と言えよう。


「あ、でも…でも、私…」

それがわからぬほど朝海は愚かになれない。口元を抑えていた手が下がり、身慄いを覚えてばかりの朝海に向けるローレオンの目は平らに据えた。


そして早々に話を切り替えるようにもローレオンは吏史に問いかける。


「――見せられてるのだろう?イプシロンの異能がきみに押さえてるはずだ。ジルの二十五代目エファムによって与えられた[核]の形は、徐々に弱まり崩れ始めてることに」


「…………………………………………」


それはその通りだ。ずっと。吏史の視野は異能が発揮しており、否応にも、見えてしまっていた。

[核]があるであろうジルの心臓部には赤色の淡い煌めきがあり、徐々に光が弱まりその輪郭もが崩れゆく様が。ありありとわかるのだ。


「…なあ。あの、オルドの、…異能なら」

「無理だよ」

それでもみっともなくとも追い縋り続ける吏史を、他ならぬジル自身が遮った。


「そもそも、私の期限である二十年の限界自体はとっくに迎えてる。煌瞑が必死になってティアをかき集めて、何度も私に『エンブリオ』を使用させられていたから今それなりに健常に動けるだけで。何年も前からオルドの手による[核]の再構築はもう何度も試みたんだけど……それすらも意味もなくて私の[核]は次第に弱っていくばかりで、無駄だったんだ」

ティアをかき集めてでも、【ルド】に配属されるアストリネに頭を下げてでも奇跡の再生を続けたけれども。間陀邏の願いは届かず、ジルの命の線を伸ばせなかった。宣告は覆らず全てが無駄な足掻き。

だけど上手くいかなくても、ジル自身はそこまで悲観していない。

「いいんだよ。吏史。だって、私は昔に無理を既に言っていたんだ。まだ尽きたくない。死にたくないと……当時みっともなく彼等に命乞いをした。多くの警告や条件を突きつけられて、私の体液を世界に利用されることも全て納得した上で……アストリネとして生きることを選んだ」

元よりどう生きるかを選択肢まで提示されていた身の上。

「【本当に二十年までちゃんと生きられるかは怪しい】とサージュさんにも言われてた。……私は、運が良かったんだよ。時間通り、しっかり生きれたんだ。満足してる……。もう、見えてる限界から逸らさない。私はちゃんと己の終わりを受け入れる」

そうしなければならない。ジルはもう十分生きながらえた限界だ。


『やはりローレオンの言う通りに従うのが正解なんだ。煌瞑も無茶苦茶な無理をし続けてる。…いや、そもそも、危惧したことは始まってるのかもしれない。第一区から抜け出す際に遭遇したあの怪物も…『リプラント』が変質した結果と考えれば……納得がいくんだよ』


無理に引き延ばすことで不幸が生まれ始めてるのは、薄々気付いてる。


『吏史だけじゃなく、ユエルや朝海にも――私が生きてるだけで迷惑がかかるんだ』


一瞬細めたジルの赤眼や胸中には、諦念の色がよぎっていた。

「迷惑だなんて、そんなわけがっ!」

荒げた声ごと吏史は制するよう、ジルは素早く片手を上げる。

「聞いてくれ。もし主核を取り戻せば『リプラント』で生成された蓄電池が…この世界に蔓延る体液が何に変質してしまうか。私にもわからないんだ」

規模が大きすぎる故に未知に賭けてはならない。また、期待してはいけない理由もある。ジルは続けて紡いでいく。


「その上……きっと私の意識が残る可能性はない。仮死状態とはいえ二十年と搾取されつづけている。肉体の損傷は計り知れないし、もしも意識が残ったとて蓄積された苦痛が襲い正常な精神は狂気に飲まれ、本来望まれた通り生物兵器として世界を乱すだろう」

「ジル、ちがう。ジルがそんなことするわけがない。そもそも、今だってこうして立ってて、元気で…頑張って他の方法を探せば、…探そう!ジルがまだ残る形で、生きる手段を…!」

「……吏史」


諦め悪く追い縋る吏史にジルは優しい声調で名を読んで、首を横に振る。


「頼む。私をアストリネとして……最期の責務を、果たさせてくれ」

自身の[核]がある胸元に手を当てながら、ジルは自ら告げた。


「ジル、」

その先を紡がせまいと名前を呼ぶ。

「ジル、だめだ」

煌めく双眸も声も揺れてしまっていた。何せ、何を言うのかが、心が読めるせいで読めてしまっていた。だから紡いではならない、それだけはと懇願するように縋っても。

既に心が決まってるジルは止まらない。


『――吏史、ごめんな』


胸中では聞こえてるであろう吏史に向けて謝罪して、唇を動かし紡ぐ。

「永久機関めいた性質を持つ影響でアストリネ以上の再生能力が『リプラント』には備わっている。だから、世界に流通された既存の蓄電池は残す形で完全に破壊するには…前提として主核を消す必要がある。――つまり、私を消すことでこの世界の平穏は保たれるんだ」

吏史や朝海、カミュール三人をその隻眼に見据えながら。


「未来のために私を消してくれ。『平定の狩者』」


その時のジルが浮かべた微笑みは、自らの消滅の願いを申し出てるにしてはあまりにも、屈託のない笑顔が過ぎた。


「…っ、」

「できるわけないでしょう!」

目の前に机か何か叩けるものがあれば、きっと殴りつけていただろう。現にカミュールは拳を握り荒々しく腕は虚空を切る。

目を震わせてばかりで押し黙り、また一歩と後方に下がる朝海に相反して、いつになく感情を爆発させて訴えた。


「っ道徳的に、できないと言うのも大きくありますが…!この発電所を失えば、【暁煌】は大停電の混乱が起こるでしょう!此処と直結してる第一区にも甚大な被害が生まれるかもしれません!貴女はそれを受け入れると言うのですか…?!」

国を転覆させる行為。平穏を乱すに等しいという警告だ。

しかしそれに対しローレオンが間に割り込むように手を挙げて申し出る。

「無論、対策してる」

少しズレたモノクロの位置を指先で正しながら、深く、鉛のような息を吐いた。


「安心したまえ。平穏が乱れた罰は私が受けるつもりなのもあるが……人々には罪はないのでね。そのために、私は第一区にイプシロンを送った」

「………なんですって?それの何が対策になると…」

「もし、事故が起きてしまっても……彼を失うまいとネルカルが必ず動くだろう?」


他国のアストリネにある、その絆と情を利用するのだとローレオンは言ってのけた。


「きっと彼女自身が直接赴くのだろう。そのために六主の訪問は事前に許可している。ネルカルが来るのならば『民』だけは第一区が墜落したとしても救われるだろう。………但し今の規模の第一区を浮かせるほどの異能はネルカルにない。だから、【暁煌】に住まう五百人の人を救うのが精々できることにして、彼女の限界になるだろうがね」

それを想定して事前準備は済んだ状態だと。つまり、ローレオンは人々を犠牲にせずにこの場で済ますという明示でもあり、此処で行わなければならないという『平定の狩者』に送る提示でもある。

しかし一点の問題に気づいたカミュールは、眉間に皺を寄せた。


「……貴方は……第一区に居るアストリネの命は、意に返さないのですね」

「ああ。発電所を失った後にも必要となるだろう間陀邏は第一区にいない。第一区にいるのは、いなくなってもいいと判断してるアストリネばかりだ」

安堵の裏は聞こえない。吏史は嘘偽りのない本心だと看破する。

「…………………………………………」

もはや、何も、言えなかった。

あれこれ沢山物事を紡ぐローレオンに対し、色々言いたいことはたくさんあるはずだ。なのに、キャパオーバーな情報の嵐で前頭葉が機能麻痺して飲まれてしまう。一番嫌で避けたいこと、ジルが消えることだけでもどうにかしたいのにどうにもならないから。ジルが覚悟してるのも伝わってしまうものだから、見える心に、心を乱しぐちゃぐちゃに掻き回されるように気持ちが揺れて、纏まらないばかりでまともな意見さえ発言できない。

そんな吏史に配慮はされることなく、ペースは一向にローレオンに取られたまま話は進んでしまう。


「さあ、話は…いや、証明と説得は此処までだ。もう粗方内容は想像つくだろうが、改めて正式に私から依頼する」

ローレオンから手を差し伸べるように、否、逃げ場はないと明示するよう手を『ゴエディア』が顕現する手を強引に掴まれる。


「『平定の狩者』の諸君。『リプラント』の主核であるジルコン=ハーヴァを消せ。彼女の意思を尊重したいのならば、出来る限り早くに」


それが正しいことだと先に散々説いた。感情としては拒絶したくとも吏史を始めとした『平定の狩者』には逸らして逃げることは許されない。


「きみたちはこの世の平穏を守るための『平定の狩者』だ。『古烬』を滅ぼしたい、滅ぼさねばならないのだろう?――そう、透羽吏史。これが、きみの報復の誓い。夢への第一歩となるはずだ」


透羽吏史は『古烬』を破壊するための兵器、『古烬』を全て消すと誓うものだから。


「――――――ッ」

『嫌だ』とも紡ぐことが許されない。最も拒絶したいことを引き受けるしかない残酷な現実が目の前にあることが思考に漸く追いついて、身を強張らせてしまっていた。


世界の為に、兵器は消えなければならない。『リプラント』は破壊せねばならない。もしローレオンは強硬に進めても、彼の選択が正しいと少し前の真実を知るまでの吏史なら告げただろう。

『古烬』は滅ぶべき存在なのだから。


「……全部」

一方、カミュールは長く硬直を覚えない。彼女はこれまでのローレオンの発言をかき集めて思考を回し、脳裏を掠めた案を得たらしく大きく瞠目する。


「……貴方は全部、この状況を作り上げるつもりだったんですね」

初めから配役を振り分けこの極致的場面になるよう構成し、舞台を整えたのかと。何処か確信を得た様子で顔を歪めたまま問い詰めた。


「初め『門』をおかしくしたのも貴方ですね?ローレオン。ジルさんを逃すことで冷静さを欠いた間陀邏と吏史君と引き合わせて、交戦させた。それは傷を負わせて僕の場所に落とすためですか?…まさか、僕に…恩を感じさせるために、クモガタも貴方が煽ったのですか?」

ローレオンは少し深い息を吐く。吏史の手首を掴む手の片方を離し、肩にかかっていた己のストールのズレを正していた。


「運命の出会いなんて管理されたこの世界にあるわけがないだろう。そんなものはない、全てはまやかしだ。必ず工作された謀略が渦巻いてる――現に、私もそうだったとも。全ては私に代表管理者争いを下させるため、クオーレと引き合わされた」


そう語るのは、ローレオンの経験談がそうさせてるのだと語られる。


「っ、その時の恨みでこのような強行な行為を測ったのですか?」

「違う。私は彼女と出会ったことは何も後悔していない。私は……彼女と彼女の子は『古烬』だからという理由だけで殺した犯人が裁かれず、それをのさばらせて容認した間陀邏とそのアストリネたちが総じて許せないだけだ」


後にローレオンは偽りない本心を明かす。隠したとしても無駄だと知っている。手に掴む吏史に己の過去を明かし、消そうとしてるジルに対してもはっきりと告げた。

「ジル。正直に言おう。私はきみには恨みはない。イプシロンや…グラフィス、アルデもそうだ。きみたちだけはあの時、罪ある犯人どもを裁くべきだと主張したからな。だから、時の礼も兼ねてきみの限界を虎視眈々と待ち続けたよ。きみは物分かりがいいから私の敷く目論見を明かしても自身の消滅に抵抗はしないだろう。――きみの限界時間が長ければ長いほど都合がいい。その分、きみに依存する間陀邏の傷が深まるのだからな」

恨みがないとしても成し得なければならないことがあった。ローレオンはそれを優先したのだ。


「最も愛するものが、謀略で失う。その痛みと苦しみは必ず与えねばならない」


最も恨めしい相手に同じ傷を与えるために。ローレオンはこのような舞台が整うよう策略を立てたのだと、包み隠さずにこの場にて明かす。

吏史もカミュールも、朝海も言葉を失う。ローレオンの過去に負った傷を知るジルだけは苦い顔を浮かべていた。


「ああそうとも。だから、すべてこの時のために私は動いた。『古烬』が恐れられてしまう要因となる兵器も潰すためにも。【暁煌】にある分だけでも私が行わねばならない。……でなければ、クオーレは報われない。小さな家で愛する者とひと時を過ごすのを慈しんだ、欲のない少女は、」


その傷が致命傷同然のもので、どうしても埋まらない呪いのようなものだと知っていたが故に。

これまで冷徹を装っていたローレオンが、溢れかえる悲しみを明かす中でジルは赤眼を細めて唇を噤むしかなかった。


「誰よりも平穏を愛していた彼女が何故、あのような非業の死を遂げなければならなかったんだ」


その中で、カミュールだけは唯一。口を開く。

「それは貴方がローレオン…だったからですよ」

指摘は、いっそ笑える類だったらしい。ローレオンは此処で漸く、しかし枯れて乾ききった笑いを浮かべていた。

「ああ。そうだ、賢いなカミュール。きみは賢すぎる。その通りだよ。私が三十二代目ローレオンでなければ……きっとクオーレと永遠を誓い、添い遂げれてただろうに…」

心が読めるからこそ、吏史には分かる。

ローレオンが最も憎いのは間陀邏や咎人、『古烬』の兵器でもない。

――謀略に敷かれた愛するものを救えなかった、無力な己自身だ。


その気持ち自体は吏史にもわかる。

唯一の家族を失ったのは無力の自分であると、今でも思うのだから。


「…っ!だから、オレは……アンタと同じ選択はしない…っ!」

もがき、足掻く。ローレオンに強く掴まれた手首を無理矢理にでも振り払おうとする。


「……ずっと固まっていて何を言うかと思えば。ジルは『古烬』の兵器だ。今すぐ消すべきだ」

「ジルはオレの師匠で……仲間だ!『古烬』の兵器じゃない、『リプラント』じゃない!」

「散々それが事実として伝えただろう」

「違う!全然違うんだよ!オレは…ジルコン=ハーヴァとして、アストリネとして生きて一緒に過ごしたジルしか知らない!そのジルは絶対に失いたくないんだ!失われるべきじゃない!」


豪気した瞬間、僅かにローレオンの力籠る手が強張る中、吏史はどうしても割り切れない。決して切り離せない青い本音を曝け出す。

「だから守るために、オレはこの力を利用する…!世界の未来じゃなくて、ジルとの未来を守るためにこの力を使う!」

英雄になりたいなんて傲慢なことは思っていない。そんな無用な夢を吏史に初めから抱いていないのだ。

「…透羽吏史。冷静になれ、自分が何を言っているのかわかっているのか」

「わかってる!オレはこの世界よりジルの方がずっと大事だ!」

「―――――」

己の処される時をただ待つジルの赤眼が大きく開き、唇が噤む。

発言は全て、イプシロンとアルデに聞こえてしまうだろうに。それでもなお吏史は言い切った。


「……吏史」

世界が壊れても、ジルを生かしたいという欲求は認められるわけがない。アルデを始めとした六主や『陽黒』を共に超えた戦友であるイプシロンは、ジルが『リプラント』であるのは承知してるのだ。その終わりすらも仕方ないものだと飲まれている。

だから、吏史の思いは届かぬ夢物語だ。全く無駄になる。その上、今後の立場が悪くなるはずなのに。

「……お願いだ、やめてくれ」

ジルは俯き、目を、逸らしてしまいながら懇願した。

純粋な好意はあまりにも眩しすぎる。犠牲になることを飲んでいた覚悟が眩み、生きたいと望むことを断念して封殺した心が息を吹き返して、間陀邏にも言えなかった言葉を吐いてしまいそうだ。

「やめてくれ……」

心で胸元を掻きむしるよう抑えてしまうことしかできないジルはその場で立ち尽くした。刑執行を断頭台で待つ罪人のように無干渉かつ不動の姿勢を貫きながら。

何せ、世界の平和を約束した。続く平穏を守るのに、正しいのは此処で己が消えることのみだ。


「ならばそのための策は、手段はあるのか?」

「ない、けど…けど、これから考える!すぐにでも、最善策をオレだけじゃなくて皆と…!」

フゥと呆れが籠った息を吐く。ローレオンは首を横に振り、強情な青さを前にして辟易した様子を隠さない。――話にならないというのが明白だからだろう。吏史を掴む手の力は自然と強まっていた。


「執念じみた叶わぬ理想にしがみつくのならば、…此処は強引に従わせるしかないようだな」

最早、対話は無意味だろう。

一手を打つと決めたローレオンが、纏っていたストールと外套を投げ捨てる。

すぐさま着火するよう馬の鬣たる紅蓮は上がり、『ゴエディア』という身体能力向上に加え、カミュールから聞いていた『覚醒剤』を飲んだことで発揮した再生能力が備わる状態であることを利用して着用してた親指の指輪。銀色のリングを弾くように棘部分を剥き出しにし、黒骨の隙間となる手の甲に突き立てる。

「ッ、痛…!?」

皮膚を呆気なく破り、肉に深く突き刺さる痛みで吏史が片目を瞑り顔を歪めるをの構わず、ローレオンの瞳が煌めき、炎は熾された。

熱伝導の高い金属で構築された指輪の棘を通して、傷ついた箇所の血管を通して熱を熾す。そうして腕全体を内部から燃やす苦痛を与える。

「―――っ、ぁ゛あぁああ゛ああ!?」

劈く悲鳴が響き上がる。再生しようが内部を燃やされる苦痛は尋常なものではない。

「吏史君!」

「アゥ!アォン!」

白雪が吠える中でカミュールが近寄ろうとしても炎が許さない。業火の壁が遮るように設置され、阻んでいた。

「…なんて卑怯な…!最低です!言うこと聞かないからって体罰を起こすだなんて…!恥を知りなさい!」

咄嗟に胸元の百合に火が移らないよう腕で庇うのが精一杯の行動で。以降は口だけしか出せていない。負け犬の遠吠えのような様と、もどかしさに苛立ち、カミュールは炎壁に向かって腕を乱暴に振るっていた。

そんなカミュールの肩に、手が置かれる。

「!……朝海さん?」

バッと藍白髪を大きく靡かせて手の主の方に振り返りながら、カミュールは象牙髪の少女を見上げた。

「すいません。そんな状況じゃないのは、わかっております。ですが、一つ。お聞きしたいことがあるんです」

破壊的な異能を前に声を少し震わせながら、それでも唇を噛んで堪えて梅色の瞳でカミュールを映す。

「この場を制する辺り、最も適切かつ権利がある方は――――様だったりしませんか?」

「え?確かにその方であれば力量も権力も共々…ですが、此処にその方は居ないですよ」

その発言を得てから、朝海は着用するHMTを掲げる。

「実は、こんなメッセージが、ありまして」


決して希望的観測の質問ではないと証明するように、朝海はカミュールに己のHMTのメッセージ画面を開き見せていた。



「ぐ…ぁ…っくっそ…!」

吏史は呻き悶える。血管を超えて骨まで届く痛み。斬りつけられたりされるのはわけが違う、尋常ならざる壮絶な苦痛だ。

燃焼された先で再生がされてるのだろう。神経は焼き切れることなく継続し苦痛を永続的に訴えてくる。

だが、嬲られながらも吏史は折れず、力強く目を眇めて苦難に立ち向かう。自由が利く片腕や足を動かす。

しかし足払いを図ろうと動かした太腿は容赦なく馬の蹄鉄のように硬い靴裏で踏まれ、重量で抑えられてしまう。首元を狙った片腕も払われた。

「くっそ!!」

ならばとローレオンの手首を掴む。『ゴエディア』纏う手で引き離しにかかる。互いに拮抗した純粋な力勝負にもつれこんだ。

「ッ、?!ぅ゛…ガ、ァッ゛…!!」

しかし絶えず訪れる燃焼の苦痛で力が上手く入らない吏史が不利。徐々にローレオンにより抑え込まれてしまう。

「無駄な抵抗はよしてほしい。言うことを素直に聞いてくれ。此処できみには死んでもらっては困るのだ」

「っ誰が!アンタの言うことは、俺は聞かない!」

徐々に指一つずつ、業火を纏うローレオンの巨大な手により握りつぶされかけていた。

「これが最善だというのに?ジルの尊厳を保つためにもカミュールの異能を用いて、この場で彼女を消滅させることが最適解だ。尊い犠牲一つで済む」

「それ、は!っそれは、カミュールの命も…使えって、ことだろ!…一つじゃないっ!」

「この世界は誰かの犠牲で成り立ってる。我々アストリネがそうだ。……そうであって然るべきだった。彼女が世のために命を賭けるのは当然だろう。いい加減聞き分けろ。『リプラント』の未知数の被害が生じる前に、破壊するべきだ…っ!?」

主張の途中。ローレオンは額同士をぶつけられる。真下から突き出された頭突きだ。

「グ…ゥ…!」

たとえアストリネに再生能力が備わっていても衝撃で脳が揺れた際に生じる脳震盪は、ローレオンの巨体による均衡を崩させる一手足りえた。

足を、姿勢を崩れそうになるが。なんとか意識の端で保ち、踵を地面に叩きつけるよう強く踏みしめて堪える。

「き…みはっ反抗期にも程があるな!っ、兵士としての自覚はないのかね!?」

「生憎なったばっかり…っそもそも、アンタに育てられた覚えはない!」

絶対に聞かない。此処で片腕を失ったとしても必ずエゴを折らずにこの場を乗り切ってみせる。

「(対抗手段は…ゼロじゃない!)」

強く歯を食いしばって、吏史は懐から取り出した『覚醒剤』の蓋を乱暴に開こうとした。それは頭突きをしかけた動作に合わせて、取り出したものだ。

ネルカルかディーケか。

見えてはないが、どの異能でもローレオンに対する対抗手段となるだろう。管界の六主には六主で対抗する。ローレオンの心理も怒り心頭な今、仕掛どきだ―――。


「見過ごすとでも?」


しかし、それは元よりローレオンが危惧していた展開。心を読まれた場合込みで対策済みである。

炎は鎖と象られ、吏史の『覚醒剤』を掴む腕を強引に拘束した。

肘や肩にかけて関節部分を押さえ込んで、容赦なく不自由を強いて、飲み損なわす。

「なん…ぁぐっ!?」

まだイプシロンの異能は発揮しているはずだ。胸中ではローレオンはこちらの仕掛けた事に気づいてなかったはずなのに、いまだに悲しみに覆われてるはずなのに。何故、読めなかったのか。

覚えた動揺に応えるよう、少しズレたモノクル越しに瞳を据えながらローレオンは僅かな息を吐いて応える。

「イプシロンの異能は対策済みだ。元より精神力が高い相手には彼の異能が通用しにくいように……胸中を覆う感情で己の思考を染めれば、上手く心を見破れない」


警戒してるからこそ徹底して対抗策を編み出していたとローレオンは語り、吐き捨てた。


「きみもイプシロンも、未だ抱える私の悲しみの底に沈む思考を暴けなかったようで、何よりだ」

「…くっそ!くそ!そこまでして…!なんで、そこまで苦しいことだと知っていながら、誰かに同じものを与えようとするんだよ!?ローレオン!」

「そこまでしないと私の復讐は、クオーレの生まれた理由を示せないからだ。さぁ、この世界のためにも、役目に従うんだ。透羽吏史…っ」


熱風の余波で、白絹髪は揺れる。

絶えない苦痛を帯びて膝を突き始めた吏史を眺め、ジルはふと思った。


―――何故、自分は動かないのか。


終わりは、受け入れている。自分自身だからこそわかる限界は近い。だから終わることを理解して貰うためにローレオンの意に従って此処に佇んでいる。

間陀邏の思いもイプシロンの忠告も振り切ってまでして、ローレオンを咎めることなく用意されたこの処刑場《舞台》に望んだ。

のに。

何故自分を礎に先に進ませるつもりの最愛の弟子は。わかってくれずに己を諦めてくれないのだろう。


『アストリネとして選んだからには、平穏のために生きて死んで貰うことになる』

焚べる薪になるのはジルだけでいい。守りたいものは続いて、慈しんだ世界は続く。いつ死んでもおかしくなかった己が二十年という時を貰えたのだから十分な筈。――


『でもね。それは本当に心から望むこと?』

遠くに置いた意識を現実に呼び起こすような、声が聞こえて、息を呑んだ。


「嫌だ!オレは…絶対に、従わない!これが最適だって、正義だなんてオレは認めない!……だって、ジルは死にたいなんて言ってないじゃないか!だから此処で終わらせない、死なせない。オレが生かす!」

兵士という立場を取らず己の願望を泣き叫び訴えるようなその声が、息を呑んだジルの肌を粟立たせる。この世の理に反して足掻くような喚き声のようでいて、足掻くことをやめきれない不撓不屈の精神が響く。


「ジルはオレの世界の一部だ、アンタの身勝手な復讐で、奪わせない!最後まで一緒に生きる為に、っ足掻き続ける!」

「そのような根拠も希望もない威勢と聞こえだけのいい幼稚な言葉に付き合えないな。戦い破壊することのみを期待された無知蒙昧なきみに、寿命という天命を変えられるわけがないだろう…!」

「だからこれから考えるって言ってるんだ!アンタだって神様でもないくせに、試してもないのに…全部、わかりきったように決めつけるなよ!」


ついには吏史は武器を取り、銃形態を取り構える。しかしそれを炎の鎖が容赦なく弾く。防がれた後に蹴られてしまい、手放させられていた。

「ああ、そうだ。そうだとも。私は神ではない。神であればとっくの昔にクオーレを取り戻しているさ。きみの言う通りだとも…私は平穏を守るアストリネ。ならば、私は正しく、きみの精神を焼く。これは最終手段ではあったが……仕方ない。今後、きみの頑固さはいらないと判断されるはずだっ!」

折れぬのならばその精神を燃焼させる。灰となって朽ちるまで行うという宣誓通り。業火は延々と焼き尽くすまで、燃え続けるのだろう。

「安心したまえ。きみが廃人になっても【ルド】では障害者の機能を復活させる機械化の実験が進んでる。忠実なる兵士になれるだけだ」

ローレオンの剛腕が伸びて吏史の頭部を掴む。思考を司る器官を直接焼くために、本格的な暴虐を口にしてまさに実行せんとしていた。


「…ぁ、…ああ……」

失われてしまう。大事な弟子が。五年間ずっと見続けていた、その未来を守りたいと今でも案じてばかりな子が。

――そんな危険性を前にして、ジルの隻眼の赤の蛇目が溢れんばかりに大きく瞠り、揺れた。


『どうか、後悔のないように』

約束までもが脳裏を掠めてしまい、ジルの息が、喉から迫り上がるもので、詰まらせてばかりだ。


「…ぁ……ぅああ……おれは、……私……は…っ」

動いてはならない。この場で、断頭されるべきだと決めていた身体は、酷く戦慄いた。

多くを与えて救ってくれた人生の師と仰ぐべく存在と結んだ約束に反故して、素直すぎて進むことしかできない不器用な弟子の苦痛を帯びる奮起と足掻きを前にして動かないなど――ジルの意思は鋼鉄に成りきれない。


元より、先から目の前で傷をつけられてる行為で心は削られている。この身を千切られ焚べられても良いそう思えるほどの人が、傷つけられているのだ。


耐えられるわけがないだろう。


「私は、私が、愛した人たちの為に、終わるつもりなのに…っ」

その為に処刑場に先導されたとしても構わずな許し、終幕を迎える覚悟していた。

咄嗟に口元を手で押さえたがそれは無駄な行為。最早、込み上げた思いはジルの胸中に留まれそうにはない。


「…っ誰かの大事な存在を奪おうとして、何が平穏を守るアストリネなんだよ!アンタは、ただの強奪者…破壊者だ!オレにとっての悪でしかない!」

声が響く。吏史の異色瞳。夏空を彷彿とさせる青と黄色の目は瞠り、鮮烈に煌めいている。

抵抗を諦めずに己の頭を掴むローレオンの腕に向けて、黒骨の装甲『ゴエディア』の鋭利な刃となる箇所を力強く叩きつけては食い込ませ、苦悶の表情を浮かべさせた。

「…っ、きみという子供は…!」

「何を言われても、何をされようともジルは守る、守ってみせる。それがどんな逆境でもその道を進み続ける…!っこの気持ちを、オレの意思を、アンタなんかに……っ燃やさせれてたまるもんかぁ!」

……そうしてローレオンの力を受けて臆せずに立ち向かう。吏史、は。ジルが、最も想う心残りだ。

その吏史は諦めずにジルに生きていて欲しいと願っている。まだ、世界に生きることを必要として。

なのに。

このまま己は静観に徹して立ち尽くし続けるのか?意思を奪い燃やし壊そうとするローレオンの行為を、見過ごして。


もう納得できないだろう。

何が、守る為か。ローレオンを許すのならば、己の自己犠牲は……意味がない。


透羽吏史に、その想いに応えなくては。


「っ!」

心変わりは果たされた。

赤眼が細まり鋭く据えて、白の閃光たる雷はジルが固く結んだ拳から迸る。


「ローレオン……いいや!ヤマト!今すぐにその手を――」


その雷が走る手前、刹那。

ジルが白雷と共に躍り出るよりも先に、虹色の軌跡が部屋に一閃。走り抜けていく。

「ぬぅ…っ!?」

それは獲物を撃つ弾丸か、咎人を制する杭かに見間違えるものだ。輝く()()()が空気を割いて突き抜け現れ――火炎を熾し続けるローレオンに対し、激突した。


二色は衝撃で放散する。

火の粉が舞い上がり、砕けた鉱石の破片は放散した。

熱風と共に舞う虹の粉を鬱陶しげに、和装の袖纏う腕が弧を描くよう払い退けていく。


「…っチ…!ギリギリセーフってところかよ…」

腰まで伸びた真紅の髪はモダンなデザインの黒色の簪にて後頭部一つに束ね上げられており、紅葉に染まる川の流れを連想させるよう畝り靡いている。双眸の茜色は、まるで夕焼け空を切り取ったようだ。

そんな鮮明なる色を携えた容姿に映えるよう、胸元や両手を覆う金の装甲と組み合わせた漆黒の着物を纏っているその女性は、端正な顔を大きく歪めて舌打ちを零し、男性に近しい低声で唸るようにも不満気に吐く。

「ハァ……最悪だ…郷に貸し一つ作っちまった…おい!」

受ける注目を払うように、振り返った。

「何自分関係ありませんって顔してんだ!お前だよお前!」

「――えっ?!」

方向は『門』の方まで近づいていた朝海。カミュールや白雪の前に立ち庇うような立ち位置でいた彼女だが、いきなり指差しされたように睨まれる理由がわからず狼狽えるのにも構わず、咎めるようにも鋭く睨みつけた。


「何も悪くないと思ってんじゃねえ!とっととこっちの指示通りにやれや!判断がおせぇんだよ小娘が!チンタラと優柔不断に迷いやがって!」

「っぅう!す、すいません…!流石に本物かどうか半信半疑になってましてぇ…!」

()()()。彼女は貴方のメッセージが本物ですよって僕が認めるまで確信持てなかったので、そうあまり責めなくても」

「うるせえ!甘やかすな!…って怒鳴りたいところだがな、この場にて許す。おれに手を貸すと決断した点は褒めてやるよ」


そう二人に対してまとめて罵声を浴びせて、怯える朝海には乱暴に称賛を投げつけた後、鉱石の一撃を咄嗟に編み出した炎の盾で塞いだローレオンと相対するよう向き直る。


「よぉ。クソッタレ」

片目を瞑り耳にかかった髪を乱暴に払い除けて、粗暴な様を隠すことなく怒りを吐き捨てた。


「おれのジーンを何唆せてんだ。ぶっ殺すぞ」


そうして彼女――【暁煌】代表管理者にして二十三代目間陀邏は動く。高圧的かつ威圧的に、質量の暴力を執り行う。

カチン。とその場に電灯スイッチが入る音が聞こえ、パチン。と火花が弾ける音が遅れて起きた。


瞬く間に、虹色の金剛石と紅蓮の炎が一帯を覆い尽くす。


間陀邏の真紅の長髪の一部が獣めいた黒の体毛に変化しつつある中で、ローレオンの脊椎から上がる炎の勢いは増していた。


「…やはり予想外《朝海》はこの場に居させるべきではなく、上手い具合に隔離するべきだったか」

「ハッ、ざまあねえな。わざわざ丁重に『古烬』のクソガキへ投げたおれのメッセージも消してたってのに。眼中になかった子犬がきっかけでお手製の舞台をぐちゃぐちゃにされる気分はどうだ?」

「最悪だな。きみの相手は骨が折れる」

「ああ。おれもそうだ。てめえの相手は疲れる――だから始めから本気でいくぞ」


間陀邏が身を屈めるのを合図に無数の鋭き金剛石は一斉に動き、ローレオンの身を穿つ強固な槍として向けられる。

それに呼応するようにローレオンが吏史を掴む手を緩めつつ、モノクルを掛け直す仕草をすれば、炎は一斉に槍を象り間陀邏に対して槍先が向く。


「ッ!ぁぐ?!」

一発触発たる剣呑な空気に満ちてゆく中で、ローレオンは掴んでいた吏史を炎の鎖で拘束したまま床に投げつけて、自ら間陀邏の方に一歩近づいた。

間陀邏も応じるようにローレオンに踏み込んだ。

互いに互いのみを視界に映し、わずかな素振りも見逃さぬよう榛色と茜色は尖れた刃のように据えている。


古から続く好敵手の姓同士、それらがぶつかろうとしてる緊張感が場を包んでいたことが――総じて気付けぬ要因だったのかもしれない。


カランカランと、五つほどの空の瓶が同時に金属床に転がり鳴った。


そして数拍経たずにカミュールと朝海に白雪。間陀邏、ジル、ローレオン、吏史と。それぞれの五つに分断するよう身体を包むように青白い光が静電気のように立ち続ける。


「え、ええ!?っなん、なんですか!?なんですか!?この激ヤバ状況で…更に混乱が起こるんですか?!」

「いえ、これは『門』の光……っ分断狙いですか!」

即座に行われた転移の目的を判断できたカミュールが、吏史やジルに向けて声を上げた。

「吏史くん、ジルさん!気をつけてください!」

許された時間はそこまで。問答無用で閃光が広がり、弾ける。

放散した光が収束し転移はなされたのだろう。其処にカミュールたちの姿はなかった。


「……チッ!簡易式の『門』…完成していたのか?にしても、一体誰が…!」


『門』であるなら起動した時点で詰みだ。転移の仕様上アストリネであろうと無理に動けない。安全を期すためにもここはこのまま身を委ねるように、どこに飛ばされるかもわからない転移を享受せざるを得ないだろう。

そのことに間陀邏は忌々し気にも顔を歪めるが…しかし、あくまで関心はジルにある。

「ジーン!」

編み出す力を緩めたことで金剛石が溶けてしまい、砂の虹が広がる中で、その心を引き留めるように叫ぶ。


「ッ、腹は立つがおれもそのガキと同意見だ、お前を犠牲にするのなら……世界は要らねえ!お前が生きたい分だけ、生かしてやる!」

「…ッ、煌瞑。私は、」

「だから、諦めるなよ!ッ…そう簡単に、自分のことを諦めるんじゃねえよ…!お前を死なせはしないからな…!」


首元に下げる形で隠し持っていたであろう――間陀邏は風信子石が銀で装飾された指輪を無意識に握りしめながら、またジルと別れることへの苦痛で顔を歪める。

「生きることを諦めずに待ってろよ、ジーン」

ジルが間陀邏へ手を伸ばす仕草を示す前、悲痛が滲む表情ごと転移の光に呑まれてしまい、かき消えていた。


「………ここまで全部、アンタの計画の内か?」

伸ばし損ねた手を下ろしながら、ジルは分断工作までしっかり敷いていたのかとローレオンを見据えて尋ねる。


「違う……」

だが、ローレオンは己の顔を手で覆うように隠す。声は戸惑いに震えて、モノクル越しの瞳は溢れんばかりに瞠目していた。

「違う、これは、私は知らない」

このような事態は、想定外。そもそもここで決着をつけるつもりだった。『門』による分断は吏史やジルにも行われている。

「私は知らない…」

ローレオンが用意していた舞台展開ではなかったのだ。

だったら何故、と疑惑がジルと吏史に浮かびふたりの眉間に皺が寄る中で、カツンとヒール音が立つ。


「どうかご安心ください。ローレオン様」

動作に合わせて頭部に結った黄金髪を揺らす黒を基調とした礼服を纏う蜂蜜瞳の女性――ボード型の電子端末を小脇に抱えて持つブランカが姿を現した。


「…ブランカ?」

「はい。あなた様のブランカです」

名を呼ばれたことを心底嬉しそうな調子で嫋やかに微笑んだ後に、優美とも言える無駄なきお辞儀を披露した。


「後は私めにお任せください。あなた様に代わり、尊き復讐を必ずや果たしましょう」

「待て。ブランカ…どういうことだ。きみは一体何を…」

「主核はハーヴァ様でなくても良い。『ヴァイスハイト』の遺したレポートにはそのように記されておりました」

電子端末を掲げたブランカは虚空に文字列を浮かばせる。

そしてビルダ語で記されたとある一文を大きく表示させて、音読まで行った。

「『『リプラント』を破壊するべき対象、主核的立場は適合すれば成り代われる。それはアストリネでも問題なければ人間でも問題がない』……つまり『古烬』でも事足りる……違いますでしょうか?」

「ブランカ、何をするつもりだ」

広げた青光がボード端末を手早く操作し閉じることで掻き消える。

何から何まで彼女が起こす言動全てに対し理解ができないと困惑が続くローレオンに対し、ブランカは薄紅が差す唇を動かした。


「これより『古烬』が主核足りえるか、『リプラント』適合を試みます。期待はしておりますよ。いいえ、きっと彼ならば適合するでしょう。そうすればあなた様の復讐対象でなかったハーヴァ様を無理に消さずに済むのです。恨みはない彼女に…穏やかな余生を与えられる。世界は荒れるやもしれませんが、吏史様と結託し『リプラント』を討つ正しきアストリネとして動けるでしょう」

正しさがローレオンに戻る。ブランカにとって、その破滅的行動等を行うことに大きな意味があった。


「――つまり、この世界で誰よりも心優しいあなた様が、今でも失った人への贖罪に苦しむあなた様が、無理に悪として振る舞う必要がなくなるのです」


ローレオンの罪や咎がなくなり証明され評価されるのだ。

ジルを生かすという温情ではなく、ヤマト=ローレオンの罪になることを嫌ったのが起因なのだろう。

床に転がったまま吏史はブランカを見上げる。彼女の胸中はローレオンへの温かな想いに満ちていることが見えていた。


「ブランカ。やめなさい。それだときみが咎められる」

だが、それは受け取れないとローレオンは拒絶する。

「きみが罪人となる。『リプラント』の主核をジル以外で埋めるなど…」

起動した『門』の転移に呑まれつつある中で、苦悶に満ちた表情を浮かべていたが、ブランカは頬に手を当てるという柔らかな所作を交えながら告げた。


「ええ。ですが。ローレオン様。『古烬』殲滅に繋がる行為を働いた人間の行動は総じて、事故と取り扱われるのでしょう?」

「――――――」

言葉を、失う。過去にその裁定で深く傷つき多くへの復讐を胸に秘めたローレオンには、その発言はひどく。罵詈雑言の嵐よりも腐り切ったものに聞こえて、仕方ない。

そう絶句するローレオンにブランカは今一度、秘めた敬愛を惜しみなく表すかのようにお辞儀を深々と送る。

転移の光は満ちていた。吏史もジルもローレオンも、問答無用でブランカが指定した場所に強制的に送られてしまうのだろう。


「私はあなた様による『リプラント』の破壊を心より望んでおります。それではまた、後ほどに」

「ブランカっ!!」

怒気を孕んだローレオンが炎を伸ばすと同時に姿が掻き消える。それを蕩けた蜂蜜瞳で見送ったのち、ブランカは顔を大きく歪めたジルを見た。


「…ハーヴァ様、薄々気づかれてるとは存じますが、改めて謝罪いたします。申し訳ありません。無駄にやる気のある朝海様とあなた様を引き合わせた手筈を整えたのは、私でした。彼女のHMTに探知盗聴機をつけておりまして、間陀邏様とローレオン様を同時に第一区から遠ざれられる絶好の機会を見計らっておりましたので…」

「………全部、ヤマトのためか」

「はい。とはいえ…私もあなた様には穏やかに過ごしてほしいと思っているのは本心ですよ。人類のために大きく貢献し、私の家族も救っていただきましたから」


正直に解答した後にジルには多大なる恩はあることを伝え、ブランカは淡々とした調子で告げた。


「なので、あとは無理せず…どうかご自愛ください。もう十分ですよ、ハーヴァ様。あなた様の送り先は【暁煌】の最果ての離島。第二十区『園』です。…以降、騒動に巻き込まれることはないでしょう」

その申し出を、ジルは首を横に振って返す。真っ直ぐに鮮明に輝く赤眼を据えた上で、口元を笑んだ。

「いいや、残念だが…私は最期まで足掻くよ。そうするべきだとたった今…弟子に教えられたからな」

「……強情なお方」

ジルの転移が済まされてしまったのを見届けたブランカは、最後に残った吏史には目もくれない。

何か声をかけるほどまででもないのだろう。――否。


「よぉ。久しぶりだな、吏史くん」

それを行うのがブランカではなく、もう一人が行うべき展開だと分かり切っていたからだ。

「…っ!」

声が、聞こえた瞬間、肌が粟立つ。悪寒めいた感覚に身震いを覚えた。

聞きたくもない、嫌でも覚えてるその声に吏史が瞠目したまま目を凝らすように見上げれば――五年という投獄生活を経て不健康と言える細い手足に白すぎる肌を持ち、乱雑に伸びた波打つ栗色の髪を揺らした鎌夜の姿がそこにある。

囚人服らしい藍色を基調とした服に四肢を抑える黒革の拘束具があるが、それを流し装飾品のように着こなしていた。


「久しぶりだが…まあ、そう話してる時間はねえなぁ」

小馬鹿にする態度を隠さず、小指で自らの耳穴をほじくりつつ、赤い舌を出して侮蔑を行う。


「てなわけだ。これから主核になってぜーんぶ台無しにしてやるよ。お前の大好きなハーヴァは少しだけ助けてやるよ、せいぜい泣いて感謝してろぉ?」

「…っ鎌夜…!」

ローレオンの焼き付ける炎の鎖が未だついてても尚、威勢よく喉元に噛み付こうと身じろぐ。

「誰が、お前なんかに感謝するか…!」

異色の瞳が憎悪に染まり凄みを感じさせるほど鋭く睨まれるが、対象である鎌夜は愉快そうに嘲り笑うばかりだ。

「ハハッ芋虫みてえ」

「こい、つ…っ」

悔しいが指摘通り。今の吏史は手を伸ばせない、だから、代わりに足を動かした。

床に転がっていた武器を足払う要領で器用にも己に寄せる。足先で銃から剣の形状に変えながら、その鋭利な剣先を鎌夜の喉元に向けて、穿とうとする。

「かはっ」

―――鎌夜は乾いた笑いを漏らす。

武器を向けられているというのに、恐れることなく敢えて避けずに不動を保つ。

何故なら既に吏史の転移は実行されている。意味はない動作となるだろう。

だから、全て無駄な抵抗と示すように中指も立てて見下し続け、最期まで抵抗し続けながら届かぬ様をしっかりと見せつけてやっていた。

「ハハっ!無駄だよ、バァーカ!」

「クッソ!お前……お前!お前だけは―――」

噴出する憎悪を遮るように転移の光が収束し放散する。

憤怒に満ちた罵声ごと吏史を『門』は強制的にも指定先に送還し、掻き消えさせた。


先まで六主の争いが勃発しかけてた発電所の動力室に満ちていた鉱石も炎もなくなり今や人二人。ブランカと鎌夜しか存在していない。

沈黙により一時の静寂が生まれ、場の空気を重く包み込んでいた。


「……気が済みましたか?」

その中でブランカは下品な仕草をした鎌夜に呆れた様子で声をかければ、鎌夜は頭を掻いて気怠げに告げる。

「まーな。久々に溜飲下がったわ」

元より仲間でもない彼女と長い話を執り行うつもりはないのだろう。鎌夜はそのまま『リプラント』の方、抽出された体液が溜まる深緑の溶液に足を運んだ。


「――んで、これからここに入れば良いんだな?」

「ええ。お願いします。私はこれより『リプラント』本体の拘束を解きますので」

「へえ、代理様はそんなことまでできんのかぁ?」

「ローレオン様の権限まで代理で使用できますから当然かと」

あくまでローレオンを称賛する姿勢に気色悪さを覚え吐き気を催すようにも舌を出していたが、ブランカは特に気にした様子はなく、説明のみを施す。


「溶液に浸かって問題なければそのまま、落ちてくる本体に入ってください。適合すればあなた様が主核となるでしょう」

「…へいへい」

ひとまず決行しようと端に腰をかけて溶液に浸かる直前、ブランカはさらに告げた。

「その適合に要する時間はヴァイスハイトのレポートによれば三時間です。先にこの発電所の『門』は破壊して彼らの転移先も区を分けたとはいえ…【ジャバフォスタ】に上手く動かれれば時間稼ぎが意味がなくなるかもしれません。なので、より良き結果を期待しておりますよ。鎌夜様」

「おいおい無茶振りしてくれんじゃねーの。とんでもねー女だなマジで」

分析を得意として多くの発明品を編み出し未来視めいたことも起こしていたというヴァイスハイトの報告書を超えろという申し出に、鎌夜は口元を引き攣らせる。


「――だけど、いいぜ。ある意味で利害は一致してんだ」

だが、そうするしかない。鎌夜はどう転んでもいい覚悟はできているし、ブランカの最終目的自体にも面白いものだと乗っていた。


「ローレオン以外が滅ぶ【暁煌】の未来を望む、てめえのそのとんでもない狂気に乗っかってやんよ」

ローレオン以外ならばどうなってもいいというブランカの破滅思考自体は、かなりに気に入っている。

だから鎌夜は彼女の提案に乗った。主核となる前に死する可能性が高いと告げられても、尚。そうすることに決めたのだ。元よりローレオンには恨みはないのが大きいが…――

「好きに暴れてもいいって最高じゃねえか。ありがとうな、ブランカさん。必ず適合して俺が『リプラント』となる。アストリネどもや腑抜けた人間どもに、消えない恐怖を知らしめてやる」

ジルやイプシロン。……吏史を手をかけても良いのならば、願ったり叶ったりだ。


「いえ、礼は結構です。私はあなた様が脱獄後にハーヴァ様を真っ先に襲撃してやらかした時点で私の望み通りには動いてくれないことは予測しております。なので、とっとと適合してローレオン様の手で滅んでください」

「は?あの女が弱ってると聞いてチャンスだと思うだろ普通。刺しといて正解だったろ?」

「はあ……そうですか…ねぇ…」

当然、ブランカは鎌夜を褒めたりはしない。手を掲げて横に振り、好意を跳ね除けるような動作も交えてることから、口にした言葉通りに思うことを包み隠さない態度だった。

全く可愛げもなければローレオン以外どうでもいいのがわかる。――そんな女だと改めて痛感した鎌夜は長々と会話を持ちかけはしない。肩をすくめて払うように手を振った。

「はいはい。ちょっと素直に言ったらこれかよ。ったく…イカれた女しかいねーのかよ。この世界は」

ケッと吐き捨てるような横柄な態度で悪態をついた後、深緑の『リプラント』の体液に落ちるよう鎌夜は身を乗り出していく。


「――んじゃま。派手にやりますか」


水飛沫が上がる。溶液は相当粘度が高く、鎌夜が沈む際に生じた音は重かった。


不思議と。溶液に使っても鎌夜に痛みはない。目を開いてもなお異物で沁みることもなく、寧ろ馴染むような心地に見舞われる。

適合体ということだろうか?確かめるようにも両手を動かし握り締めた。

何度か拳を握ってみても力が湧くなんて感覚もないため、答えも得られそうにない。

拳を広げて、体全体の力を抜く。沈む心地に流されてみる。


……ただ、光景は変わらず、底が見えない。ただただ、深緑色の深海が広がるだけ。


なので、鎌夜は落ちてくるだろう本体を待つようにも、敢えて仰向けに体勢を変えた。

まだ本体は拘束されたままなのだろう。落ちてくる影の揺らぎや気配もない。


そうした暇な時間を過ごすため、鎌夜は思考を巡らせる。

もし適応して主核となり『リプラント』の膨大なる力を有した時に何をするべきだろうか?

加虐対象たる吏史を直接叩く?長年奴隷のように扱った恨みを込めて月鹿を潰しに向かう?ジルやイプシロンに報復を実行する?

否、それはちっぽけなものだ。多大なる力の使い方としては実に矮小で派手さには欠ける。

それだけでは規模が足りない。自分の積年の恨みは晴らすにあたり最適なのは、と。鎌夜は頻りなく考えた。


思案してる間にも肉体は底無し沼にゆっくりと沈むゆく。深緑の体液で蝕まれ、視界もが染まる。

その中で身を任せるよう漂いながら、遠い空を表すような水面の白光を見上げた。


――ふと、思い感じ取る。汚染された海洋を泳ぐ生物はこのような気持ちで空を眺めているのかと。


そう連想した後に開いた唇からは「あ、」と声が漏れたのかもしれない。それは音にならず水疱となってかき消えたが、鎌夜の口元は三日月の形に歪み切っていた。


――嗚呼、嗚呼、嗚呼!あるではないか!


いつになくはしゃげた喜色に満ちた笑顔を浮かべたまま、泥濘めいた中でゆっくりと手を伸ばしては水面の光を撫で回すように動かした。


水面の光で連想したのは空。そこには浮遊する区がある。異能にふんぞり返り人類を支配する傲慢な種族たちが大量にのさばっているのだ。


故に鎌夜の暴虐心の矛先にして標的は定まる。


――第一区『暁』。【暁煌】の象徴と言える区を、地に叩き落とす。


その心内に目的が建設されたと同時に、『リプラント』が降りてくる。

巨大なる蛇を連想させる風貌の生物兵器。

長らく酷使され続けた空の器が、主核という意思を求めるよう開いた大口で鎌夜を飲まんと迫る。


それを歓迎するようにも鎌夜は目元を緩ませ綻ぶように笑み、自ら両腕を伸ばしていた。

……………………………『リプラント』

「永続的な機能を持つ冒涜と奇跡が合する生物兵器」

・『古烬』が開発した対アストリネ用兵器。二十五代目エファムを筆頭とした『古烬』討伐隊が破壊対象としていた物。

人工授精の応用を効かせて、アストリネを内部から破壊すべく画策。

捕獲された『雷』を操作するアストリネの核を解体し、それを元種として動物と人間の遺伝子を組み合わせていき、何百体との人造アストリネが作られる中でようやく完成したのが巨大蛇型生物兵器『リプラント』である。

体内に『発電器官』を保有してる特徴から再生力はアストリネを超え、体液は有毒性の他に永続的な電気を発生させる。最高峰兵器として『古烬』間では高く評価されていた。

最終調整が済み自体【暁煌】を始めとした三国を襲撃させる計画が進むものの…決行寸前となる二十年前。


『古烬』討伐隊『平定の狩者』が『リプラント』を持つ施設に侵入し、製作者を討ち取られたため彼等の計画は頓挫する。

その時、『古烬』討伐隊が『リプラント』と邂逅し、無垢なる意思があることを汲み取った。

討伐隊の筆頭隊長として参戦していた二十五代目エファムは、人でもアストリネでもないその存在に問答を行いとある条件の下、人としての形を与え、アストリネとしての生を与えたという。

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