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アストリネの一族  作者: 廻羽真架
序章.
11/38

2-3

兵士になれば各国区間の移動機会が増えると聞いて、ひどく安心していた。


だって、そうなれば此処に。嫌いな奴が多い場所に大好きな人を置いて行っても苦しくない。

いつだって《《どこに行ったって》》世界を回るように進んで行けばいずれ再会するだろうと希望があった。

早く成長して夢に前進したかった理由がある。

強くなって認められたいのも一つだが。奮起させる大きな軸がもう一つあった。

サージュに『恵』から出させるためだ。

自分という枷さえなければきっとできる。必死にしていることにも集中できて、酷いことも言われずに済む。邪魔にならないで自分の益に動けるだろう。


知っていたことがある。

大事にされていたけど、窶れさせてしまっていたこと。体力を削りながら、二度と寂しくならないよう、我儘に付き合ってくれていたこと。


気づいたことがある。

母親を話題にした時のこと。子供には母が本来居るもの。だから、自分の片親が気になって尋ねた時に。


『居たよ。でも、お前が生まれてから別れて、それっきり』


その時は普通に笑っていたのだけれど。わかっていた。家族だから些細な変化も汲み取れたのだ。

サージュの表情は過ぎ去った思い出に浸ることに苦痛を覚える顔だと。

その存在が隣にいないのを寂しがるような瞳の彩度に、気づいてしまったのだ。

サージュにも会いたい星が居るのに、探しには向かえない。

それは吏史のせいだ。

速く動けるのに、自分だけならなんだってできるのに行動できるだろうに。たった一人が引き止める枷となっていた。

だから、なら、だったら。

吏史にとってはサージュが一番、顔も知らない母親よりも大事な家族だから。

自由になるきっかけを作ろうと、思った。それ故に今日の適性検査は失敗したくなかったのだ。


『星を追いかける』と同じ夢を見たのなら、そうしてほしい。お互いに飛び立てばいい。

もう十分じゃないだろうか。ずっと、五年間。生まれ生きて寂しかった分を満たすように見てもらえたのだから、得意じゃないことで身を削らせてまで苦しく生きないでほしい、だから。

だからお互いにこんな村に閉じ込められず、進もうと決めていた。したいことをして進んでほしいとも願っていたのだ。

帰る家がなくなる心配はない。新たな場所を作るだけ。どれだけ世界が広くて二人の間が離れても、家族であることは不変だろう。


――そう、吏史はどこかで二人に都合良く世界が回ると信じてた。


全て願い通りに巡るわけがない。優しさばかりじゃないと知っていたくせに。


「父さん!…とうさぁん!!!」


返事はない。反響されることはなく、黒煙に飲まれるばかりだ。乱れた息を整うために口呼吸をしてしまえば灰が器官に入る。

「っゲホゲホ!…ぉえ…」

吏史はその場で何度も咳き込んだ。

幸い、外部の燃焼だ。酸素は供給されて危険な一酸化炭素は発生していない。

だが問題は匂いだ。意識してないようにしていたが、今し方は匂いまで感じてしまった。

肉の焼ける、鼻に油がこびりつくような不快感しか覚えない悪臭。

嘔吐すら漏らしてしまう。数量の唾液を地面に吐き出した後は、吏史はその場に蹲ることなく腕で口元を塞ぐ。

止まりかけた足を、震えを、無視して意識的に動かし帰路に進めた。

目尻に涙が浮かぶ。黒煙ばかりの景色が霞み、意識が朦朧とする。だけども。吏史は引けない。決して引かない。


「(とにかく家に、家に行かないと。無事、無事であるかどうかだけ――)」

大丈夫。自分の家族だけは特別だ。なんて、馬鹿な考え通りだと思わさせてほしい。誰か、どうか。

誰か。


「リッくん!」

祈りを込めた胸中に反する声が明瞭に聞こえて、声がした方向に顔を上げた。

「あ、やっぱりリッくんだ!リッくん!」

喜色で満面の笑みを浮かべた月鹿だ。

彼女も火災に巻き込まれたのだろう。頬に煤をつけてしまいながらも元気よく此方に手を振っていた。

何故か、手には地獄のような光景が広がる場には不釣り合いな金平糖のように咲く白い花を持っているのが酷く奇妙に思えて仕方ない。

「月鹿、」

彼女が生きてたことに吏史は、驚愕よりも勝る嫌悪感で顔が歪む。焦燥感だって感じれる。

だが、今。この場、限定的には。彼女が希望の光に見えた。

「月鹿、父さんは――」

腐っても隣同士。月鹿が生きているというのならばサージュも無事である法則が成り立つのではないかと。

期待と希望を持って質問をするべく、口を開いた。


「よぉ。養子の吏史くん」

木炭の山めいた家の残骸を踏み越えるような形で、十代後半と思わしい灰色のフードパーカーを着用した男が月鹿の隣に並ぶ。

切り揃えることなくざんばらに伸びた栗色の髪に影響して片目が隠れているが、目つきの悪い三白眼が印象的なターコイズの瞳がある。

どこか月鹿の容姿に似通ったこの男は、彼女の家族にして兄である鎌夜れんやだ。

率先して吏史の村八分に加担した人物。――眉が自然と顰める。

「相変わらずうちの姫様を前に生意気な顔しやがって。で、何用だぁ?」

「……別に何も。今は質問しようとしただけ」

それだけ返して背を向ける。まともに話せない。話すような相手たちではないと痛感しているからだ。

今気にするべきはサージュの安否だけだろう。


「お前の血が繋がってない父ちゃんなら、もういねーよ」


鎌夜の。物言いに。身が震わせてしまいながら弾かれるように勢いよく振り返る。

葉を見せて悪辣に笑いながら何かを掲げていた。青色に煌めく、青色に灯る水晶めいた石をネックレスに仕立てたようなペンダント。


「――――――は?」

毛が、逆立つ。それはサージュが身につけていたものだ。毎日肌身離さず。

渡してからずっと大事にしてくれたものだ。


「なんで…っ」

「んなことよりもさぁ」

声を荒げて吠える前に、言葉で遮った鎌夜は首を傾ける形でコキ、と鳴らす。

「アストリネって不思議だよな。花?…核を取られたら飛び散った血や肉体がまるで砂みたいに消えちまうって初めて知ったわ。まあ、完全にぶっ▪︎すんなら、基本は核を潰すしかねーみたいだけど」

「…いきなり何の話だよ。意味がわからな…」

「あ?わざわざ見せてやってんのに気づいてねーのかよ。間抜けが。お前の父ちゃんアストリネだったって話だってのに」

「そう、アストリネの中でもかなり有名どころ。三代目ヴァイスハイト。ほら、HMTを始めに世界を発展させた機械発明の貢献者!」

吏史は言葉を失って絶句する。

自分の父親であることを信じて疑ってなかったとも言える反応そのものに、月鹿は口元を手で押さえて無知への憐憫を込めた眼差しを送り、鎌夜は心底呆れた様子で耳をかく。

指に付着したゴミを息を吹きかける形で飛ばしてから、説明を続けた。


「吏史くん。安心しろ、お前はアストリネじゃねえよ、人間だ。但し普通の人間じゃねえ。俺たち『古烬』の最新兵器『ゴエディア』に適合した始まりの子供アダムだ」

脳が理解を拒んでる。声帯を震わせてしまいながら、冗談ではないかと訴えた。

「何言ってるんだよ。全然、何言ってるか、わかんないよ」

「こんな冗談言うと思ってんのかぁ?お前は偉大なる『古烬』の創世者にして対アストリネ兵器の数々を編み出したベルンドーラ様の恩寵の化身だよ。身体能力向上だけならず、アストリネどもの核を食してその異能を保持する機能までついた人類がアストリネに対抗しうる革命的なものだ」

「他にはものを増やすとか、玩具にしちゃうとか、新しいの作っちゃうとかよね!」

「そうだな姫様。でもそれは自慢のものだから内緒にな。…ああ、悪い話が逸れた。つまりお前は、たまたま『古烬』のメンバーの子供として生まれ…」

「っ知らない」

首を横に振り、吏史は否定する。

「知らない……母親には会ったこともない。…何言ってるか全然、わからない。…っ、知らない!」

声を荒げて吠えて、激しく振った。そんなものは知らないのだ。何も。サージュはそれらを教えてくれなかった。血筋も、自分の母親も。

それに信用できない奴に言われたって、鵜呑みにできるものではない。荒唐無稽の話にしか聞こえず、彼らが吏史に起こした過去の所業による信用の喪失は大きくあって飲めなかった。

戸惑いは覚えるが、吏史は夏色の瞳を吊り上げながら鎌夜を鋭く睨みつけて叫ぶ。

「オレの家族は、父さんは、サージュだけだ!本当に…本当にアストリネだったとしても、変わらない!」

事実は、これであると。

自身には十年間共に過ごしたかけがえない家族が居るのだと、手を強く握りながら吠えた。

「今更なんなんだよ!こんな状況で、月鹿と一緒にオレを追いやっておいて、仲間みたいな態度してくるなよ!」

そう息を荒げて噛み付くよう捲し立てる吏史に対し相反して鎌夜は――

「はーーーー……」

冷淡冷静冷徹に。氷じみた精神性を体現したような熱を感じせない真顔で溜め息を深く吐く。

のちに、片手を上げては払うように横に振る。

「仲間だって。なんせ、俺たちはお前を、アダムを洗脳したアストリネを打倒する機会を伺ってたんだ。まあ、……下手に住民と仲良くされても困るから姫様の案に乗ったところもある。…今日の適性検査の時にイプシロンのやつが予想外に来たせいで少々段取りが狂ったわけだが…」

「ねぇ。そのイプシロン《《も》》倒しちゃえばいいじゃないの?」

「――は?」

割り込んできた月鹿の信じられない発言に、吏史は何を言ってるのか分からず息を呑んで瞠目した。

「ねぇ、今なんて」

鎌夜は吏史に構わず、甘やかな顔で話しかけてきた月鹿を優先して会話し続ける。

「すまねえ姫様。【ルド】のアストリネは避けた方がいい。『三光鳥』となると強さがダンチなんだ」

「でもあたしはアストリネ倒せたよ?」

「あーいやいや、そう軒並み平均されてるわけじゃなくって。『間陀邏』『グラフィス』『ディーケ』とは絶対に戦うなって父様にも言われてんだろ?ディーケは三光鳥。その一翼のイプシロンはそいつらに次ぐレベルで…」

「だから、なんで止めるの?所詮は次程度なんでしょ?実際お父さんには止められてはないじゃない。だったら、大丈夫。リッくんに触れようとしてる奴を倒せる」

説明してもなかなか通じない。我儘で揺るがない自論を貫く幼心の横暴を前に、鎌夜は困った顔で頬を掻いた。

「……イプシロンとぶつかったら姫様の可愛いワンピースも台無しになる。それは嫌だろ?な?」

「!そうね!洋服が汚れるのは嫌!」

「そうそう。だから、やつが来る前に吏史くんをとっとと回収しようぜ」

回収という発言は不信を抱かせるのに十分だ。彼らとはまともに会話しない方がいい。

そうだと理性でわかっていている。

また探しにいけばいいこのまま立ち去ればいいのに脳が疑問の開示に勝手に働いていた。その際溢れる感情の昂りで、堰が壊れ始めた吏史は躊躇いながらも口を開けて問いかけてしまう。


「父さんは?」


行方は、どこかで分かってながら。

だけどどうしても、先の答えを見出したくない。切るのを恐れた者の思考停止めいた言の葉。

その溢れ落ちた葉を拾うように、月鹿が喜色に満ちて蕩けた微笑みを浮かべる。


「これだよ」


手に持っていた白い花を自慢するように見せながら、口元に寄せて咥えようとした。

毛穴全てが開く感覚が走る。

「……ろ」

否定できない。今、ここで漸く。ここまで全ての発言が集約した。今更、壊れた思考防衛本能が強制的に解答まで到達させたのだ。

鎌夜が持つ身につけたままである筈のペンダント、月鹿の言動の意味と手に持つ白花の答え《正体》に。

「やめろ!!」

「ううん。大丈夫、心配しないで。ちゃんと見てて、リッくん。あたしたちならアストリネの異能を自分のものにできるから」

意味の齟齬だ。そして、それは吏史の最悪を肯定する決定的な解答でもある。


今すぐに月鹿の行為をやめさせないといけない。

そうでなければ、できなければ、吏史が想像しうる最悪は実行される。

覆水は盆に返らない、否。《《命》》は一つしかなく失われたら元に戻らないだから。

「やめ、やめろぉ!!!やめろ!!それに、触るなぁ!!」

最早なりふり構ってられなかった。両腕の力を、装甲を誰にも見られないようにしないというサージュの忠告を殴り捨ててでも吏史は実行した。

感情の爆発に呼応させた両腕の手甲を解禁し、己の身体能力を飛躍的に向上させる。

大地を踏み抜き黒い砂塵を巻き起こさせながら、月鹿との距離を一気に詰めた。

その胸ぐらを掴んで抑え込もうと――否、唯一で大事な存在である白花に向けて、手を、伸ばす。

必死な形相で、剣幕で、喉が裂けることも構わず、劈く叫声を上げた。


「―――オレの…!オレの、家族に…触るなぁああああぁあああ!!」


悲壮的で痛々しさすら覚えさせる制止の叫声を聞いてもなお、自らの正しさを盲信する月鹿は止まらない。

これが最適、正当な正義だと思ってやまないままに。

月鹿はカルミアの白花を前歯で食む。


「可哀想なリッくん。あたしが今、助けてあげる。これもあたしの役目だもん。だって、」

長い栗髪が風でなぶる。

巻き上がるマルーンのカーテンの向こう側で夏の異色の瞳と合わさったペリドットの瞳は喜色に満ちており、やがて細まって歪んだ。


「世界は人類あたしのために回っているんだから」


鋭い前歯が花弁と噛み千切り、花柱を斬るその拍子。

ぐちゅりと。身が詰まった果実が潰されるひどく生々しい音が響いた。


「――――」

時が、止まったように感じられる。


遅れて、重力がなくなり中に浮いてしまうような感覚に見舞われて、最中、声が。過去の記憶が、走馬灯のように遡り脳裏に溢れ流れ、一番最後の。最期となってしまった玄関でのやりとりが、笑顔が浮かぶ。


『思いっきり羽ばたいておいで』

思い出となってしまった、されてしまった笑顔に。自然と涙が浮かんでしまう。


「(――それを見せたかった)」

ただでさえ煙に苛まれて霞んでいた視界が、溢れた涙で輪郭までぼやけさせる。


「(オレ、遠くなっても。離れても、離れていても、頑張ってるところ、頑張れてるところを。父さんに見ていてほしかった)」

どれだけ苦しい世界でも、夢に進み生きることが楽しいと、生きる理由を教えてくれたのは他ならぬサージュだった。だから。


「(こいつは。こいつが、……月鹿が………!!!)」

許せない。その一文に思考が支配されていく。

こともあろうか月鹿《この女》は、吏史の生きる理由まで奪ってきた事実が心を憎悪に占めさせる。


ギリっと大きく歯を噛み合わせた。あまりに強く力が篭りすぎてか唇が傷つき、口端からは血が一筋流れていく。

激情に呑まれきった年無相応の憤怒の表情を浮かべた吏史は、月鹿の胸ぐらではなくその喉元を鋭く穿とうとする。

「!」

意図に気付いた月鹿が口内の液を飲み込みながら、本能的にも拒絶するよう己の手甲を、『ゴエディア』を起動展開し強化した身体能力で迫る手の先を素早く弾く。

反動で二人の距離が数メートルほど空いた。

互いに体勢は崩れない。両者ともに強化された脚力を惜しみなく用いて、地を踏み抜き転倒を塞いでいる。

臨戦態勢を崩さず、直ぐに次の手を打とうと動いたのは吏史だった。

なんの躊躇いもなく炎が残る瓦礫に手を突っ込み、引っこ抜くように木材を取って霞の構えのまま月鹿に飛び込んでいく。

「姫様!!」

慌てふためいた鎌夜が駆け寄って間に割ろうとするものの、月鹿が片手を挙げて制止した。

「来ないで。あたしとリッくんとの喧嘩なんだから邪魔したらダメ。怒るよ」

「……!」

それは実に抑制が効く言葉だ。肩を揺らした鎌夜は一秒で割り込むことをやめる。

「……マジで気をつけろよぉ、本当に……」

元々、月鹿には敵わないと思ってるが故に萎縮して今回もまた彼女の我儘に付き合ってしまい、待機する姿勢をとるしかないのだ。

そんな兄の態度をミリとも気にすることなく月鹿はあくまで自分のことを、大好きな吏史を優先した。

今し方距離を詰めてきて振られた木材に対し、拳を握って硝子細工めいた装甲にぶつけるよう破壊して対処する。ただ、それから詰め寄ることはしない。敢えて月鹿から跳んで距離をとった。

「っ、はぁ…」

唇から漏らす苦しげな吐息は、核を飲んだ際の反動だろう。心臓から熱い血潮が流れて全身の動脈を焼かれるような苦痛がある。

「あはは…!」

だが、それでも、月鹿は吏史に恍惚の笑みを浮かべた。

「やっとあたしをちゃんと見てくれたね、リッくん」

心の底から嬉しそうに、溢れる感情を表に出す。

それは、声に出さないと共有できない。想いは伝えないと意味がないという傍迷惑な律儀さからだ。

「すっごく嬉しい。やっぱり運命だったんだよ。あたし達はお互いに欠けていけない存在、一緒に居るべき存在なの」

「うるさい……」

「でもさ、そこで短気するのはおかしくない?気が短いのは良くないなぁ。短気は損気だよ?あたしはちゃんと我慢できるのに!そもそも考えてほしいな〜寧ろ感謝するべきだって、あたしは偽物のお父さんからリッくんを解放してあげたんだよ?」

「うるさい、……うるさい!父さんは……偽物なんかじゃない…なかったんだよ!お前のせいで…お前の…お前のせいだ!!」

返されるのは聞いたこともないような憤怒の声。相手の事が憎いことが伝わる怒気。夏の空に通り雨が溢れたようにいくつもの涙の筋が頬を伝う。

まさに憎悪、連なる殺意とはこのことだ。

「……あはっ…!」

それがひどく、興奮を覚えさせた。

何せ吏史が今までに抱いたことのないであろう感情の対象として選ばれた事実がある。

自身の揺るがない特別感、サージュすら至らなかった感情の極みに選ばれた。

勝ち取れたのだ。

月鹿は優越感と共に高揚を得て、背筋がぞくりと震えて口角が釣り上がる。

彼女の笑みはあくどく、周囲環境状況等も相待って悪魔と評するに値しただろう。


「……じゃあ、もう少しだけ喧嘩しよっか」

どうしたって先の展開は読めているとばかりの余裕綽々の態度を晒しながら、月鹿は自身ありげなペリドットの目を輝かせる。


「付き合ってあげる」

吏史に発破をかける気持ちの上で――挑発的な手招きを披露した。


……………ヴァイスハイト

・物事を制作、構築するにあたり必要な創造物を判別しそれを製作する際の的確な計数率を分析することを可能とする精神作用的異能『観測』操作能力を持つ一族。

顕現姿は不明※。


※前線に向いた能力ではないことが彼の顕現姿を確認できなかった要因ではないかと推測されている。


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