【実質賃金26カ月ぶり上昇】違和感のある統計の“裏”を解説!【生活満足度過去最高】
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただき誠にありがとうございます。
今回は「実質賃金の上昇」と「生活満足度過去最高」について個人的な解説をしていこうと思います。
◇「実質賃金上昇」の裏側にある「住民税先送り」を誰も報道していない
質問者:
久しぶりにポジティブな統計データが出ましたね。
実質賃金も1.1%上昇ながらも26カ月ぶりのプラスみたいじゃないですか。
筆者:
大抵の記事の解説には「ボーナス給与の上昇、春闘が反映」、
林官房長官「明るい動きが明確に」、
などと実に間抜けなことばかりが書いてあるのですが、
これには“カラクリ“があります。
まず皆さんお忘れだと思いますが6月には「定額減税」がありました。
意外ほとんどの記事に書いて無いのが驚きなんですけどね。
質問者:
そう言えばそんなこともありましたね。どうして報道しないんでしょうか……。
筆者:
これは定額減税について6月の帝国データバンクでは「中小企業の74%が負担があった」、全法連の7月の調査では「定額減税は景気・物価対策として6割以上が効果はないと思う」などと言うマイナスの国民意識があります。
このことから政府としては定額減税については「忘れてもらいたい」と言った意識があります。
そして忘れてくれれば「景気の好循環が起きている」と「誤認」させることが可能になるわけです。
「誤認」に成功すれば利上げやら増税やら「PB黒字化」などに邁進することが出来ますからね。
質問者:
えぇ……結局は国が推し進めたい政策のためですか……。
7月以降として発表される実質賃金は好転する見込みは無いんですか?
筆者:
むしろ7月の結果は「100%の確率で実質賃金マイナス」です。
これは定額減税の中の住民税の計算方法に”カラクリ“があります。
例えば毎年24万円住民税を納めている人は毎月2万円になるわけですが、今回の定額減税は6月の1万円が少なくなっていたというわけでは無いんですね。
質問者:
えっ……そうだったんですか?
筆者:
給与明細を持っている方は確認して欲しいんですけど、6月の住民税は「0円」になっているはずです(そうで無い場合は会社側の処理ミスです)。
これは実務の話なのでマニアなネタですが、住民税の6月はどんなに元の住民税の合計額が高くとも「0円」になり、
7月以降の金額は(総住民税合計額-1万円(×扶養人数)÷11)と言う計算方法を取っているのです。
上の例で扶養人数無しで計算した場合、23÷11で月平均2万円を超え、
7月以降の住民税は前の年より多く払うわけです。
このように「定額減税」は「6月集中住民税減」の要素を持っています。
他の月ではむしろ前年月1万円以上住民税を納めている方の場合は、住民税が増える可能性が濃厚です。
質問者:
だから7月は確実に実質賃金マイナスに戻るという事ですか……。
筆者:
今回の発表の平均給与額49万8884円の中での1%ですから、5000円とか増えたそうですけど、それは住民税の差で消えることは濃厚ですからね。
(逆に所得減税はボーナスの額にもよるがそれ以降も残っている可能性がある)
僕はこの定額減税の性質上、元から6月で「連続実質賃金下落は止まる」と予想していましたが、
僕としては思ったよりも上がり方が弱く、やはり国民の懐は厳しいという見方ですね。
質問者:
「6月住民税0円」についてどこの報道も書いていないのは本当に問題ですね……。
※ちなみに6月の賃金は”ボーナス”も含まれるために他の月より4割ほど高く算出されます。
”賃金”と言う場合においては「従業員が働いたことの対価として、その国の貨幣(金銭)で支払われたもの」のために定額減税も上昇寄与として影響します。
◇「いつ」と比べて「生活満足度過去最高」なのか?
筆者:
次に内閣府が今月9日に発表した「生活満足度過去最高」といういかにも前向きな言葉で彩られているデータについて解説します。
これにも「カラクリ」があります。
質問者:
そもそも「過去最高」の「過去」っていつからのデータなんですか?
筆者:
良い視点ですね。この統計データが最初に開始されたのはなんと2019年からとかなり最近から始まったようです。
つまりこのデータは消費増税が起きた2019年と、コロナ渦と言うマイナスの状況がほとんどだということです。
昨年5月にコロナ5類解除されて1年以上経った今年に、満足度がそれらよりも低かったらそりゃ問題だという事です。
※しかも、この調査はアンケート用紙を配送した地域は東京など3都道府県にとどまり回収サンプル数も1100と“世論調査並み”に少ないです。
質問者:
確かにその6年の中で「過去最高」とか言われてもそりゃ……ね。と言う感じですね。
筆者:
そして“内訳“を見ると大体上がっていますが、
「下がっている部分」に着目したいと思います。
「政治・行政・裁判所への信頼性」は過去最高の下落 マイナス0.15点(10段階評価で)
「生活を取り巻く空気や水などの自然環境」 マイナス0.27点となっています。
「自然環境」についてはソーラーパネルの自然破壊や熊への被害がもしかしたらあるのかもしれません。
そして報道ベースでは重要な項目である「政治の信頼性が下がった」ことについては全く報道されていないのです。
これもまたマスコミが「政権に本当に不都合なことを報道しない」という状態を示しているものだと思います。
◇統計は“参考”にはなるが“報道は正確では無い”
質問者:
単にマスコミが発表しているデータと内容だけでは見えてこないことがあるんですね……。
筆者:
僕も今回は事前に知っていたことと興味があったので詳しく中身まで見に行ったわけですが、実際のところ内容を詳しく見に行く方と言うのは極僅かだと思います。
ただ、「見ていない人が悪い」とでも言わんかのように意外と堂々と公開しているので「不思議な統計だな」と思ったらしっかり元データを調べることをお勧めします。
質問者:
データそのものは嘘を吐いていなくても、「捉え方」や「報道の仕方」でよく見せることがいかようにもできるという事なんですね……。
筆者:
データを意図してかしてないかは分かりませんが、実際とは違っていたこともありますよ。
厚生労働省で2018年度に発覚した毎月勤労統計の不正は全数調査のはずのところをサンプル調査で済ませ、データに狂いが生じた。この統計を基に支給する雇用保険の給付が本来より少なくなる実害も出たようです。
2013年から2021年の間には建設工事施工統計調査の完成工事高が二重計上されており、GDPの上振れは最大0.1%に達したようです。
0.1%と聞くと誤差じゃないか? ……と思われるかもしれませんが、この成長していない日本にとってみれば僅かな差で「成長している」とか断言する政府なので実はとても大きな差です。
四半期ベースなら0.4%ぐらい影響したかもしれませんしね。
質問者:
それじゃ、データそのものすら信頼できないんですか?
筆者:
多少“データお化粧“をしていたとしても極端には大きく変えることが出来ないと思うので、「参考」には間違いなくなると思います。
ちゃんとした見方としてはデータそのものは正しいものの「妙に良いデータに関しては穿った見方」をする必要がある感じがしますね。
今回のように統計を開始した時期がたった5年前という事や
「定義を変える」(最近では需給ギャップデータ内の定義を変更)と言ったことは平然と行われているわけですから、そういった点を注意したいです。
とにかく、「マスコミの発表」と「政府の解釈」をそのまま鵜呑みにしていると増税と緊縮、外国人労働者の誘致と言う長期的に見たら非常に日本経済にとって危険な方向に向かっていくことになります。
後は日銀が銀行に対する「事実上の利益供与」である利上げの理由付けなどに活用といったことですね(中小企業を潰したいため)。
特に先ほども語りましたが見ているデータそのものが全く同じでも、
マスコミの「報道の仕方次第」で全く印象そのものが変わってしまいかねません。
複数の情報と合算して総合的に見ていく必要があると思います。
質問者:
「データは嘘を吐かないけど詐欺師はデータを使う」とかよく言われていますよね……。
筆者:
この日本は「生産性が低い」とか言われていますけど、
本来あるべき実力と比べて相対的に生産性の低い人たちは政府やマスコミの人間だと思います。(ただ単に稼いでいるお金の面だけで見たら高いのかもしれませんが国家にとってはマイナスという事です)
なぜなら素晴らしい学歴や経歴の方ばかりの筈なのに分析が現実とは乖離しています。
そして我田引水で自分の懐に入れることばかりを考えており、国家全体の長期的視野ではプラスになっていない――と思われても仕方のないことばかりをしているのです。
質問者:
うーん、それは分かるんですけど。
でも、いちいち元データまで見に行くの大変じゃないですか?
筆者:
現代人は忙しいですからね。
そのために僕が気付く限りにおいてこれからも統計データ分析について発信していきたいと思います。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は「ポジティブなデータの裏側」について直近の2つについて解説させていただき、それは「政府の増税・緊縮、外国人誘致促進などに活用」するという事を指摘させていただきました。
今後もこのような政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説をしていこうと思いますのでどうぞご覧ください。