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友達①

 バイトが決まった日の翌朝。

私は自室のカーテンを少しだけめくって窓の外の様子を確認するとため息を漏らした。


 昨日の快晴が嘘なのではないかという程の黒い雲が空を覆い強く降りつける雨粒は地表を叩く。

外出すれば確実に濡れることを約束された状況に私は憂鬱な気持ちになりながらも、制服へと袖を通した。


 リビングへと降りれば、母はすでに出勤したらしくテーブルには朝食と簡単な書置きだけが残っている。


食べたら流し台で水につけておくこと!


「わかってるって・・・」


 書置きを適当に折りたたんでゴミ箱へ捨て、いつもと変わらず私は朝のニュース番組を見ながら準備をゆっくりと進めた。


「はあ・・・」


 どうして朝の通学前の時間というものはこんなにも早く進んでいくのか。


 気が付いたころにはいつもの星座占いが始まり、それが終わると私は家を出なくてはならなくなる。

 良くも悪くもなかったその占い結果だけを確認してテレビを消すと玄関へむかい、傘立てに立てた少しだけ大きめの傘を手に取って玄関の扉を開いた。


「うっ」


 扉を開けた瞬間に襲ってくる雨のにおいと、ザーザーと雨が建物や地面を打ち付ける音。

ニュースでは滝のような、といっていた言葉がに落ちるほどの雨脚の強さに思わず負けそうになりながらも、半ばやけくそ気味に私は踏み出した。


 足元が極力濡れないように身を縮め歩幅を小さくして歩く。

僅かに反射して目に飛び込んでくる水溜まりも回避して、それから傘から流れ落ちる雨もうまく制御して、そうして登校する。


 そうやって最善、細心の注意を払った結果どうなったか。


 足元はやはり壊滅した。


 そもそも風が吹けば傘で守れないし、大地に打ち付けられ飛び跳ねる雨のしずくの回避手段も持ち合わせていない。


 毎度この時期になるとレインブーツがはければいいのに、と思ってしまうが残念ながらそれはわが校では校則違反に該当する。

 それゆえに私は今日も浸水して重みの増した靴下に気分を落とした。


「あ・・・」


 足元の違和感に不快なものを感じながら教室のドアを開けると、近くでふと誰かが小さく声を漏らした。


「お、おはよう」


 珍しく誰かが私に挨拶をしてきたため少しだけ驚いて顔を上げる。


 誤解を招いてはいけないので補足しておくが、別に私はクラスでハブられているとか、イジメられているとかはない。

 ただ私は休憩時間も寝てるか本を読んでいるかの二択だし、放課後は誰よりも早く帰宅している。

それによって少々クラスで浮いてしまってるだけだ。


 ともあれこのタイミングで話しかけてきたのが誰かはおおよその察しはついていたし、なんとなく話しかけてくるんじゃないかと自意識過剰かもしれないが予想していた私は特に何も気にせずにその相手を見た。


「おはよ」


 花野秋。私に声をかけてきた主に挨拶を返すとそのまま横を通り抜けて着席した。

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