第7話 海と屋敷と無人島2
8日連続投稿達成!後2日で目標達成!
俺は今、海にいる。そして現在、女子3人とビーチバレーをしている最中だ。これだけ聞けば、リア充と思われるかもしれない。
(頭おかしい威力のスパイクだな!)
俺は楓の打ったスパイクを受け止めるとあまりの威力に足がくるぶしの辺りまで砂浜に沈んだ。
「おかしいだろっ!?」
「まかせるのじゃ!」
玉藻が飛び上がり、楓に向かってスパイクを放つ。ズドンとどう考えてもバレーボールがぶつかった音ではない音が発生する。
玉藻のスパイクを受けた楓も俺と同じくらい足が砂浜に埋まっているが物ともせず、ネット際に移動しジャンプする。
「沙耶ちゃん!」
「分かってるわよ!」
「そりゃあ!」
運動神経抜群のはずの沙耶が苦しそうに楓の動きに食らいついている。そんな状態でも、マイナステンポ(トスが上がる前にジャンプすること)で動く楓に合わせてトスを異常な速度で上げているのはさすがだ。
「もう…無理…」
さすがの沙耶もそのトスで力尽き、コートの上にヘタリと座り込んだ。玉藻が異常にうまく、俺を吹っ飛ばしそうなくらいの威力のボールをなぜか砂浜に沈まず、綺麗に返している。
俺は思うように体が動かず、ギリギリボールに間に合い、無理矢理上にあげた。そのままズザッと砂浜に顔からダイブする。
「しまったのじゃ!」
玉藻がブロックに飛んだ楓を避けるように打ったスパイクの先にはへたり込んでいる沙耶がいた。
「へっ!?」
予想していたので俺はボールが沙耶に当たる前に沙耶を庇うように覆いかぶさる。
「ぐっ!」
ボールが当たった腰からミシッとなってはいけない音がした気がした。手足から力が抜け、沙耶を押しつぶすようになってしまう。
「き、きゃあああ!」
「ぐあっ!がっ!」
悲鳴を上げた沙耶に腹パンで吹き飛ばされ、背中を地面に強く打ち付ける。俺はもう既に瀕死の状態だった。
「壮真!大丈夫かの!?」
「大丈夫!?」
玉藻と楓が俺の元に駆け寄ってくる。俺はその時、意識を手放していた。
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時は遡り、3時間前。俺は玉藻と一緒に駅に向かっていた。今回は楓は用事があって先に出たらしく、一緒に来ていない。
「いいか?楽しむのはいいが、力はセーブしとけよ。」
「分かっておる。年下の娘に本気は出さんから安心するのじゃ。」
玉藻は耳と尻尾を隠し、目の色を黒に変えている。元々、美少女だったが、日本人の風貌に近くなったので、余計に美少女に見える。はっきり言って俺の好みにストライクだ。
「ちなみに今大体どれくらいの力まで出るんだ?」
「権能が使えず、幻は半径2メートルが有効範囲じゃの。身体能力で言えば、1割半が限度くらいじゃ。」
「かなり落ちるな。」
「やはり尻尾をないことにするのはかなり力を削るようじゃな。」
「でも、身体能力は1割半でも俺の2倍以上はあるよな?」
「そうじゃの。」
「1割も出すな、5パーでいい。分かったな。」
「緊急時は出すかもしれぬが、通常時は大丈夫じゃ。」
「それでいい。まぁ、しっかり楽しんでくれ。」
駅の広場に楓と沙耶と拓実がいるのが見えた。どうやらもう1人の湯島というのはまだ来てないようだ。
「おーい。」
「おー!?」
「うわ、これまた美少女ね。」
「…壮真?その子は?」
楓からなぜか威圧が飛んでくる。俺は何か気に触ることでもしたかと考えるが、した記憶はない。
「…俺の親戚の真白玉藻だ。」
「真白玉藻じゃ、よろしく頼むのじゃ。」
玉藻がペコリと頭を下げる。拓実が俺の首に手をかけ、顔を近づけて小声で話してくる。
「(おいおい、むっちゃ綺麗じゃんよ、壮真。)」
「(まぁな。)」
「(あんな子と同棲してんのか?)」
「(一応、家を貸してるな。といっても、生活スペースが別だから、あまり同棲しているという感覚はないな。)」
「(くぅ!でもいいな!うらやましい!)」
拓実はよほどうらやましいのか、俺の首にかけている手が徐々に力が入ってきている。
「玉藻ちゃんね。私は柊木楓。よろしく。」
「よろしくなのじゃ、楓。」
楓はあくまでもにこやかに握手を求め手を差し出す。玉藻もその手を握った。
「っ!」
楓は強めに握ったつもりだったが、逆に痛みを感じるほど、玉藻に手を握られた。
(この子、やってくれる!)
実を言うと、楓は壮真に恋愛感情を抱いている。当初、楓自身あまり分かっていなかったが、沙耶に相談しているうちに自分の感情が恋であることに中学卒業頃に気づいた。
今は、自分より綺麗な女子が壮真の近くにいるということに危機感を覚えている。
(負けられない!)
玉藻はというと、何故楓に敵意をぶつけられているのか分からず、混乱していた。握手の時も、力のセーブがうまくいかず、力が入りすぎてしまっただけであった。
(壮真、どうすればよいのじゃ!?)
「ごめん、待ってたかな?」
黒いリムジンが俺達のすぐそばに止まると、中から金髪の美少年が出てきた。
「君が憑代壮真君かな?僕は湯島啓介。ぜひ、啓介と呼んでほしい。」
「あぁ、憑代壮真だ、俺も壮真でいい。」
啓介が手を差し出してきたので手を握る。
(へぇ、鍛えてるな、こいつ。)
啓介の手には剣だこができており、剣道をやっていることが分かった。
「…君は?」
啓介が玉藻の方を見ると、首を傾げた。
「俺の親戚の真白玉藻だ。」
「真白玉藻じゃ、よろしく頼むのじゃ。」
「あぁ、話は聞いてるよ。とても美しいお嬢さんだね。君みたいな美しい女性は大歓迎だよ!」
啓介はさらりとキザなことを言う。それが似合っているのでなんとも憎めない。
「綺麗どころ3人と一緒に行けるんだ、僕達は幸運だね!拓実、壮真!」
「そうだぜ!」
「そうだな。」
俺と2人では反応に温度差があるが、俺も楓と沙耶と玉藻が美少女であることはよく分かっているのでかなり嬉しい。
「じゃあ、行こう!お嬢さん達はお先に車の中へ。」
啓介はリムジンのドアを開け、女子3人に移動を促した。女子に続き、リムジンの中に入る。
「うおっ!すげぇな。」
「驚いたろ!」
アハハと拓実は笑っているが、かなりすごい。まず、何故か机がある。椅子は運転席と助手席を除き、机を囲うようにソファが設置されている。ソファに座ると体にフィットするかのように形を変えた。
「目的地まで2時間ほどだから、それまで、トランプでもしようか?」
啓介は懐からトランプを出した。
「はいはい!大富豪!」
「さすが、拓実。いい選択だね!ジョーカーは2枚とも残しておくよ!」
啓介はバッバッと凄まじい速度でシャッフルを行う。
(プロかよ。魅せるなぁ。)
シャッフルを終えると、1枚ずつピッピッと6人にカードを配布した。
「準備はいいかな?」
「いいぜ!」
「ええ。」
「大丈夫。」
「問題ないのじゃ。」
「いいぞ。」
「それじゃ、ダイヤの3持ちの方から時計回りにするよ。」
「妾じゃの。」
(つーか、玉藻。大富豪のやり方分かってるのか?)
手番順は玉藻→楓→沙耶→啓介→拓実→俺だ。俺の手札はジョーカーにダイヤとハートの2、ハートのエース、クラブの10、ハートとダイヤの8、ハートの4、クラブの3だ。かなり強い手が揃っている。
「まずはダイヤの3出しとくのが普通かの。」
「私はダイヤの5で縛りを設けるわ。」
「ちょっと、いきなりひどいわよ。私はジャックね。」
「僕はエースだよ。」
「俺ねぇし、パス。」
「俺もパス。」
このまま、ゲームは続き、結局、一位から順に玉藻、俺、啓介、沙耶、拓実、楓になった。その後も何回かやると、すぐに2時間が経ち、海についた。
「うおー、海だー!」
拓実はリムジンから降りるとすぐに服を脱ぎ、服と荷物をほっぽり投げ、海に走っていった。下に海パンをはいていたらしく、そのまま海に飛び込んでいった。
「うわー、すごーい!」
「綺麗ねー。」
「誰もいないのじゃ。」
「それはここがプライベートビーチだからだよ。毎年なら一般解放するんだけど、その前に貸し切りで遊んだ方がいいと思ってね。」
「さすが、金持ちだな、スケールが違う。」
「おーい、早く来いよ!」
「そこに更衣室があるよ。着替えてくるといい。」
「そうさせてもらうわ。」
「そうね。」
「妾も行くのじゃ。」
女子3人はすぐそばにある建物に入っていった。
「爺、僕達の荷物と服をロッカーの中に入れといてくれるかな?」
「お預かりいたします。憑代様、初めまして、湯島家の執事です。ぜひ、爺と呼んでください。それでは、お着替えをどうぞ。荷物と服をお預かりいたします。」
「あぁ、まだ水着は着てないかな?」
「いや、着ている。すいません、よろしくお願いします。」
「いえいえ、存分にお楽しみください。」
服を脱ぎ、荷物と服を執事の爺さんに渡す。一応、拓実の服と荷物も拾って執事さんに渡した。
「驚いた、君は脱いだらすごいね、壮真。」
「あぁ、すまん。少し見苦しいか?」
筋骨隆々とまではいかないが、壮真は細身にもかかわらずかなり筋肉が付いている。野性味溢れるというべきだろうか、鋭さを感じさせる筋肉だ。傷跡が残っていることもそれを助長していることだろう。
胸に大きな切り傷の跡と他にも細かい切り傷の跡のようなものが体に刻まれている。
「いやいや、すごいよ!鍛え抜かれているのが一目で分かるさ!僕も剣道と合気道をやっているからね!」
「お待たせって、そんなに待たせてないか。」
「そうよ。」
「そうじゃの。下に水着を着ておったから、服を脱いで荷物をロッカーに入れるだけで済んだからの。」
後ろを振り返ると、水着姿の美少女が3人いた。楓は赤色のワンピース、沙耶は黄色のビキニ、玉藻は黒色のワンピースだ。
「うわぉ!すごいね!女神のようだよ!」
「あぁ、3人とも綺麗だぞ。」
啓介が大げさに腕を広げて叫び、俺が3人を褒める。すると、3人の顔がボッと真っ赤に染まった。
「そ、そう?」
「そうかな?」
「綺麗か?壮真。」
玉藻は見せつけるかのようにくるりとその場を回り、俺に微笑む。俺も玉藻の不意打ちに少し顔が赤くなる。
「やれやれ、君も隅に置けないねぇ、壮真。」
「お前はイケメンだから、俺より圧倒的にモテるだろう?」
「アハハ、まぁ、そういうこともあるね。」
(壮真、君、まさかの鈍感かい?柊木さんと真白さんは君に好意を持ってそうなのは分かっていたけど、これは遠藤さんもかな?うーん、これだけじゃ情報不足かな?)
啓介は苦笑いを浮かべる。彼はイケメンという要素がいい女性を惹きつけるわけではないのを身をもって知っているからだ。
「さ、さて、ビーチバレーでもしようか!」
「そ、そうね。」
「ビーチバレー?なんじゃ、楽しそうじゃな。」
「あぁ、少し離れたところにビーチバレーのコートがあるから使うといいよ。ほら、見えるかな?」
「あれね?」
「すごいわね。何コートあるのかしら。」
「壮観じゃのー。」
啓介が示す先には、ビーチバレーのコートが何コートも存在していた。数えてみると、8コートあるように見える。
「ボールは持ってきてるみたいだから、倉庫は開けなくても良さそうだね。」
「おーい、何してんだー!早く来いよー!」
拓実が海から上がり、こちらへと駆け寄ってくる。
「今からビーチバレーするんだけど、拓実もやる?」
「おぉ、俺もやるぜ。」
楓に誘われ、拓実もビーチバレーに参加することになる。バレーコートにつき、男子と女子に分かれて、勝負することになる。
「よっしゃー、来いや!」
「女子と男子じゃ身体能力に差がありすぎるんじゃないかい?」
啓介が心配そうに女子に声をかける。
「あいつら相手にその心配はいらんな、気をつけろ、気をぬくとやられるぞ。」
(当たり前だ、スポーツに武術を応用してくる運動神経抜群の沙耶に、身体能力お化けの玉藻だぞ。気を抜いたらやられる。唯一、楓は安心していいけどな。)
「そうなのかい?」
「拓実がやる気を出してるので分かるだろ?」
拓実がやる気を出しているということは、ある程度、敵が強いと認めている場合だ。それ以外はただ楽しんでいるだけだ。
「…確かにそうだね。オーケー、気は抜かない、全力でやろう。」
「そっちサーブでいいわ。」
沙耶がぽいっとこちらへボールを投げ込む。それを拓実がパシッと取った。
「俺がサーブだ!…いくぞ!おりゃあ!」
拓実は初っ端からフルスロットルで、ジャンピングサーブを放つ。球速は速いがボールの落下地点に既に沙耶がスタンバイしている。トンッと球速に対してあまりにも軽い音で、ボールをレシーブする。
「食らうのじゃ!」
玉藻が思い切り腕を振り、拓実に向かってスパイクを放つ。
「来…いっ!」
ボールは拓実の顔にぶち当たり、拓実を吹っ飛ばした。
「拓実!?大丈夫かい!?」
啓介が拓実に駆け寄ろうとするので、俺は拓実の犠牲によって上がったボールをきちんと返す。
「い…け、啓介…俺の…仇をとってくれ…」
「ま、任せて!僕がきっちり君の仇を取るよ!…爺!拓実の介抱を頼んだよ!」
「お任せください。」
サッとどこからか執事の爺さんが現れ、拓実をお姫様抱っこをして連れて行った。
「さぁ、仇うっ!」
啓介は戻ってきたはいいが、その瞬間、腹に沙耶が打ったスパイクがクリーンヒットした。拓実と同じように吹き飛んで、砂浜に寝転んでいる。
「ぼっちゃまー!!」
またもや執事の爺さんがサッとどこからともなく現れ、啓介を連れて行った。
「なぁ、こっち1人来てくれ、1対3は無理だ。」
ここで冒頭に戻る。結局、俺も早々にリタイアしたというわけだ。
海でビーチバレー!私自身は一度もやったことないです。というか、海に行った経験が少ない(笑)。しかも、友達といった経験が0です。むなしい。
未だ、ブックマークなどが0です!お恵みを!皆様からプレゼントが欲しいです。