第6話 海と屋敷と無人島1
7話連続投稿達成!前話に話した通り、夏休みに入ってます。今回も短めです。
あれから1ヶ月ほど経ち、夏休みになっていた。俺はゆっくりと家でくつろいでいた。
『のう、壮真?』
左手から勝手に出てきている玉藻が声をかけてきた。
「どうかしたか?」
『いや、のう?夏休みとやらになってから数日も経つのに、家から一歩も出ないのは不健康じゃと思うのじゃ。』
「…そうだな。久しぶりに出かけるか。旅行でもして霊探しにでも行くか?」
『それはいい考えじゃ!』
ピンポーンと家のインターホンが鳴る。多分、楓だろう。俺は慌てず、玄関に向かった。ガチャッとドアを開けるとやはり楓が立っていた。
「どうかしたか?」
「壮真、海に行こう!」
「いきなりどうした?…まぁ、とりあえず入れ。熱気が入ってくる。」
「お邪魔しまーす。」
(あ、玉藻が出っ放しだったの忘れてた。まぁ、いいか。俺の部屋にいるだろうし。)
俺は楓を居間に案内する。冷蔵庫からお茶を出しコップに注いで楓の前に置いた。
「ありがと。」
「で、突然どうした。海に行くのか?」
「そう!壮真のことだから、夏休みにそのまま家でダラダラ過ごしてそうだからね!」
ついさっきまでの俺の考えを見透かしている。さすが、幼馴染だ。
「いや、そろそろ旅行でも行こうかと思ってたぞ。」
「え!どこ行くの?」
楓はガタッと席を立ち、こっちに身を乗り出す。
「まだ決めてない。」
「なら、海でもいいよね!ちょっと遠目のところだから、旅行にもなるし!」
楓は座りながらそう言う。
「ひとり旅が一番楽なんだがなぁ。楓と沙耶と拓実だけだったらいいけどな。」
沙耶と拓実と俺のもう2人の幼馴染だ。沙耶はフルネームで遠藤沙耶、身長は楓より少し低いくらいのツインテールの美少女だ。気が強めで、合気道や空手を嗜んでいるのでかなり武闘派だ。
拓実はフルネームで長峰拓実、俺より身長が少し高めのイケメンというか、顔立ちの整った童顔だ。サッカー部のエースで明るい性格をしている。
「残念だけど、もう1人追加。拓実の友達の湯島啓介って男子も来るよ。その男子の別荘に泊まらせてもらうんだよね。拓実に言って、壮真も参加できるようにしといたから!」
「それ、俺、拒否権なくない?」
「そりゃもちろん!絶対行くよ!」
「…はぁ、分かった、で、いつなんだ、その海に行くのは。」
「明日!あと、二泊三日!」
「はぁ!?急すぎるだろ!?」
「大丈夫、急に決まったことだから!明日の午前7時に駅集合ね!」
そう言うと、楓は席を立ち玄関に向かった。
「じゃあ、明日ね!」
「あー、楓、ほれ。」
俺は玄関の横にある戸棚からあるものを取り、楓に投げた。
「わっ!…これ、鍵?」
楓は俺と鍵を交互に見る。
「あぁ、俺がいない時とかでも、1階なら好きに使うといい。いる時でも、インターホンを鳴らさず入れるのは便利だろ?」
「…うん、ありがとね、壮真!」
「じゃあな。また明日。」
「また明日。」
楓は満面の笑みを浮かべてから、玄関から出ていった。少しドキッとしたのは、多分気のせいだ。2階に戻ると玉藻が俺の布団の上に寝転がっていた。
『あ。』
「何してんだ?」
『ひ、暇だったから、寝てたのじゃ!』
玉藻はバッと布団から飛び乗りた。尻尾と耳がパタパタと動いている。これは大体動揺している時の仕草だ。
(そういや、こいつと会ってからも長いな。…お礼にちょうどいいか?)
「玉藻。」
玉藻がぴくっと肩を動かす。おずおずと上目遣いでこちらを見た。
「安心しろ、別に怒るわけじゃない。お前、耳と尻尾を消せるか?」
『…か、可能じゃ。かなり弱体化してしまうであろうし、元に戻るのにも数分程かかるがのう。』
「なら、いいか。少し待ってろ。」
俺は部屋を出て、楓に電話をかける。
『壮真、どうかした?明日の海行けなくなったの?』
「いや、そうじゃなくて、1人追加できるか?親戚の子をこっちで預からなきゃ行けなくなったみたいでな。その子も連れて行きたいんだ。」
『一応聞いてみるけど、多分大丈夫だと思うよ。』
「あぁ、後で連絡くれ。」
『うん、それじゃあね。』
「あぁ、いきなりすまんかったな。」
俺は電話を切ると、部屋に入った。
「よし、玉藻、海に行くぞ。」
『っ!?本当かの!?』
玉藻は耳と尻尾をピンと立て、期待した目でこちらを見る。
「多分な。明日、楓達と海に行くんだが、1人増やせれるか聞いておいた。多分大丈夫らしい。」
『壮真と海!やったなのじゃ!』
玉藻はぴょんと飛び上がって喜ぶ。最近、玉藻の行動が可愛らしくなった気がする。
「日頃のお礼だ。最近、玉藻にはよく助けられてるからな。親戚の子っていう設定で連れてく。名前は玉藻でいいよな。苗字はどうする?」
『憑代じゃ!』
「却下だ。さすがに同じ苗字はまずい。」
『んー、じゃあ、稲荷かのう?』
「それもやめとけ、楓にまとわりつかれるぞ。」
『何故じゃ?』
玉藻はコテンと首をかしげる。ちょっと可愛い。
「玉藻っていう狐の妖怪の名前に、狐に関連する稲荷だぞ?オカルト好きの楓が食いつかないわけないだろ?」
『うっ!そうじゃな。んー、思いつかん。壮真も何か案出して欲しいのじゃ。』
「そうだな、真白でいいんじゃないか。玉藻の髪白いしな。」
玉藻は白髪で金色の目をしている。
『真白かぁ、いいのう。真白、真白。うむ、妾は真白玉藻じゃ!』
「目の色も変えておけよ。金色の目なんて普通はないからな。」
『分かったのじゃ、無難に黒にしておくのじゃ。』
その後、楓から了承の連絡と用意するもののリストが来た。玉藻にそれを伝えるとすごい喜んでいた。俺はそれを見て、喜んでくれてるようなら良かったと思っていた。
が、玉藻に人に化けて行動するのを許可するのではなかったと後悔する羽目になることを俺はまだ知らなかった。
短いのが2連続なので、次は長めにできたらなと思ってます。未だ、ブックマークなどがゼロです。ゼロから数字が変わって欲しいです!よろしくお願いします。