第3話 誘拐犯の暗躍2
4日連続投稿!あと1日で目標の5日連続投稿が達成!もちろん、たった5話で終わるわけじゃないので安心してください。
「ふわぁー。」
俺は朝日を浴びて目を覚ました。
「今は3時?もう昼過ぎてんじゃねぇか!」
訂正する。朝日じゃなくて日光だ。すでに昼過ぎているとは思ってなかった。おそらく琴音の重力攻撃が効いていたのだろう。
人形は傷や呪いなどの物理的なものや霊的なものには強力な効果を発揮するが、疲労や精神的なものにはほとんど効果を発揮しない。
「そういえば、玉藻は?」
キョロキョロと周りを見ると、机の上にメモが置かれていた。『ぐっすり寝ていたので、そのままにしておくのじゃ。ご飯は一応作っておいて台所においてあるからよかったら食べるとよいのじゃ。』と書かれている。
俺は一階に降りて、台所にご飯が置いてあるのを確認した。
「あったかいな。これも干渉してるっぽいな。」
俺が皿に触るとご飯から湯気が出だした。玉藻は干渉して俺がご飯に触れるまで保温しておくようにしていてくれたみたいだ。
「いただきます。」
ガツガツと遅い朝食兼昼食を食べる。いなりがあるのはやっぱり狐なのかと少し笑える。
「ごちそうさま。」
食べ終わって皿を食器洗浄機に入れて電源をつける。そのまま放置しておけば、勝手に乾燥までやってくれるので気が楽だ。
「さて、今からどうするかな。あ、人形の補充をやっておかないとな。」
昨日、琴音にかなり枚数を削られたので、人形の作成に移る。紙自体は人形の形にしてあるので髪をくくりつけるだけで済む。といっても、自然に抜けた髪を使っているので、そこまで大した数は作れない。すぐに作業は終わった。
「さて、あとは暇だな。…宿題やっておくか。」
数学と化学からプリントが出ているだけなので、30分もかからずして終わった。S高校は宿題がほとんど出ない学校なのだ。今回の宿題も2週間ぶりくらいだ。
「ゲームでもやるか…」
スマホを操作してゲームを開く、キャラクターをゲットし育成してパズルで戦わせるゲームだ。
「…つまらん。ネットサーフィンでもするか。」
ニュースやSNSなど、あまり考えずに読む。それで時間をつぶしていた。
【楓】
「…よし、行こう。」
私はそう言って午後6時半頃に家を出た。曇っているせいで外はもう既に真っ暗だ。両親が家にいるのに、呼び止められる様子はない。
なぜなら、私が親の飲み物に睡眠薬を混ぜたからだ。ぐっすりと眠っている親に呼び止められることはない。ここで壮真が見ていたら、「なにしてんだ、このアホ!」と叫んでいることだろう。
「急がないと。」
ポシェットを腰に下げて、私はS高校に走っていった。隣が壮真の家なので見つかったり鉢合わせたりしないようにしないといけない。
「よし、大丈夫。」
無事に壮真にバレることなく、S高校に向かうことができた。10分前につくと、すでに校門の前に2人がいた。
「里奈ちゃん、美希ちゃん!」
「こっちこっち!」
里奈ちゃんが私に向かってぶんぶんと手を振る。
「2人とも早いね。」
「瑠衣を早く助けたいからな。」
「そうだよ。もう2日も立ってるんだから、急いで助けないと!」
「そうだね!行こう!」
2人ともやる気バッチリのようだ。私達はS高校にこっそり入る。警備員が帰っているとはいっても、他の人が見ていて通報される可能性はあるのだ。
「ちなみに、瑠衣ちゃんはどの辺りでいなくなったの?」
「私達の教室付近だな。お化けを見つけるためにわざと忘れ物したんだ。」
「私達も忘れ物してたのになぜか瑠衣ちゃんだけいなくなっちゃったの。」
「なら、私達の教室に行こうか。」
私達は本校舎の4階に向かった。1年生が一番上の階なのだ。2年生は3階、3年生は2階、1階は資料室や事務室などがある。この学校は特別な行事でない限り、教室のドアを閉めないので侵入しやすい。今回はそれが幸いした。
教室に入り、里奈ちゃんと美希ちゃんはそれぞれ自分の席の中を探る。2人ともシャーペンをわざと忘れていたみたいだ。
「あった。」
「私もあったぞ。」
「よし、多分これで、霊が出てもおかしくない。廊下に出よう。」
私が先導して廊下に出ると、声が聞こえた。
「ね、ねぇ、なんか声が聞こえるよぉ。」
里奈ちゃんが怖くなったのかプルプルと震えている。私はポシェットに手を突っ込み、塩の入った瓶を手に取り蓋を開けた。
「っ!これ、瑠衣の声じゃないか!?」
美希ちゃんが私を押しのけ廊下に飛び出て、声がする方へ走っていった。私は慌てて里奈ちゃんの手を掴み、美希ちゃんを追いかける。
「瑠衣!」
美希ちゃんが声がする教室に入り、電気をつける。私達も慌てて入るが、誰もいなかった。美希ちゃんが入った同時に声も止まっている。
「瑠衣ちゃん?」
里奈ちゃんが声をかけると掃除ロッカーがガタガタと揺れた。美希ちゃんがすぐさまロッカーに駆け寄り扉をバタンと開けた。すると、瑠衣ちゃんが出てきた。瑠衣ちゃんは猿轡をされ、身動きが取れないように縛られている。
「今、ほどいてやるからな!」
美希ちゃんが瑠衣ちゃんを縛っている縄をほどこうとする。里奈ちゃんも手伝うために瑠衣ちゃんのそばに行く。しかし、私は何か違和感を感じて、瑠衣ちゃんのことを見ていた。
(…そうだ!猿轡だ!)
猿轡をしている瑠衣ちゃんが声を出せるはずがない。なら、誰が私達を呼んでいたのか、それは…
「霊しかない!」
私は塩をバッと教室にまき散らした。
『があぁぁぁ!』
「ビンゴ!」
予想通り霊が私達のすぐそばにいた。塩がかなり効いているのか手をぶんぶんと振り回し、塩を散らそうとしている。霊は黒いローブを着て顔が真っ黒というだけで特に特徴がない姿をしている。
「な、なに!?」
「うわっ!?ゴホ、ゴホッ!ちょっ!塩が!」
美希ちゃんは塩に巻き込まれて咳き込んでいるがそこは気にしない。
(やっぱり霊はいるんだよ、壮真!)
この場に壮真がいたらドヤ顔をしてやるのにと思いつつ、黒ローブの霊の様子を伺う。
『がぁぁ!』
「んむ!!んー!んー!」
縛られている瑠衣ちゃんがなぜかいきなり喋り出そうとするが、猿轡をしているせいで喋れていない。
『…ぐるぁぁ!』
「えっ!」
霊が腕を振りかぶるとピシュッと音を立てて何かが飛来してきた。私は突然のことに驚き硬直する。しかし、その硬直が命取りだった。飛来してきたものは縄で、私の全身を身動きが取れないように縛った。
「きゃあ!」
がんじがらめに体を縛られる。手足が思うように動かない。霊はそのままぐいっと縄を引っ張り、私は地面に引きずり倒された。
「っ!やめ!うむぅ!」
私は抵抗をするも瑠衣ちゃんのように猿轡をかまされる。里奈ちゃんや美希ちゃんは突然のことに未だに硬直していた。
「うむぅ!」
私は2人に逃げるように伝えようとするが、猿轡のせいで伝えられない。霊は2人に近づき首元を触ると2人は崩れ落ちた。どうやら意識を落とされたらしい。
(今なにをしたの?)
瑠衣ちゃんも2人と同じように霊に首元を触られるとクタッとなった。今度は霊が私の方に近づいてくる。
私は身をよじらせて逃げようとするが、縛り方のせいか身をよじることさえうまくできない。私は霊に首元を触られるとバチッという感覚がして意識が落ちていくのを感じた。
(これ…スタン…ガン…)
霊以外全員の意識が落ちると、教室の光がパッと消えた。
お楽しみいただけましたか?そろそろ、ブックマーク、感想、評価ポイントのどれかが欲しいところです!楽しめたという方はプリーズです!