第1話 誘拐犯の暗躍1
今回から本格的に話がスタートします。お楽しみください。調子に乗って連日投稿しました。頭が死にそうです。
「由奈ー、美希ー、どこー?」
深夜の学校、女子生徒が1人廊下で声を張り上げながら歩いていた。
「あれー?さっきまでいたのになー。由奈ー、美希ー、いたら返事してー。」
「瑠衣ちゃん、こっちー。」
瑠衣と呼ばれた女子生徒は後ろの教室から声が聞こえたので、バッと振り向く。すると、ちょうど廊下の奥にある教室に明かりがついた。
「なんだー、いるんじゃん。」
瑠衣はその教室へ駆け寄った。教室の前に立つと、扉の窓に人影が移る。瑠衣はガラッと教室の扉を開けた。
「もう、探したん…だよ?」
瑠衣は教室に入ったはいいが、中には誰もいなかった。悪ふざけで隠れているのかと探すが、誰もいない。
「由奈、美希、どこ?隠れてないで出てきてよー。…もういいもん、私帰るからね。」
そういうと、バンッと音を立てて、教室の扉が閉まる。
「ひっ!な、何?」
瑠衣はビクつくが、扉が閉まったことに気づき、慌てて扉を開けようとする。
「あ、あれ?開かない!由奈、美希、開けて!」
すると、今度は教室の明かりがパッと消える。深夜、月の光のみが差す教室はかなり暗い。
「きゃあ!ほんと、やめて!帰るって言ったのは悪かったから!謝るから!帰らないから!だから、明かりつけて!扉開けて!」
『ほんと?』
瑠衣の耳元で声がささやく。
「ほんとだから!」
パッと教室に明かりがつく。瑠衣はホッとして、後ろを振り向くが誰もいない。扉を開けようとしたその瞬間だった、一瞬チカッと教室の明かりが消え、もう一度つく。
「ひっ!」
今度は一瞬だけだったので、そのままホッとため息をつくと、人影が足元に移っていることに気づく。瑠衣は由奈か美希だと思い、後ろに振り向いた。
「由奈!美希…きゃあああ!」
また教室の明かりが一瞬だけ消える、今度は明かりがつくと、教室にはもう誰もいなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「壮真、ちょっといい?」
「んあ?」
俺こと憑代壮真は寝ているところを誰かに起こされた。
「なんだ、楓か?」
俺を起こしたのは幼馴染の柊木楓だった。楓はスレンダーな体型にポニーテールの綺麗系の美少女だ。身長は俺とほぼ同じの170ないくらい。
俺自身は前髪が長めで、顔の上半分が曖昧なくらいで別に特徴はない。強いて言うなら、楓とよくいるせいで、校舎裏に呼び出しが多発し、強くなった。
「うん、壮真って、オカルト系強かったよね?」
「…お前の方が上だろうが。」
「そうだけど、1つ相談。」
「それはお前の後ろにいる女子2人が関係してるのか?」
楓の後ろには女子が2人オロオロとしていた。確か名前は夏木由奈と屋島美希だったはずだ。
「そう!クラスメイトだから知ってるよね。由奈ちゃんと美希ちゃん!」
「で、相談ごとつうのは?」
「壮真はこの高校の七不思議って知ってる?」
「はぁ、そりゃ有名だからな。一般的な七不思議よりかなり凶悪だし。」
この高校、S高校の七不思議はかなり特殊だ。内容についてはおいおい説明するとしよう。
「そう、この2人はさ、昨日の深夜、今日休んでた隣のクラスの安浦瑠衣ちゃんと七不思議の1つ、『神隠しの誘拐犯』を見つけるために肝試ししてたの。」
「はぁ!?バカにもほどがあるぞ?」
S高校七不思議の1つ、『神隠しの誘拐犯』。七不思議の中でも女子生徒に危険があるとされるものだ。
内容は昔、深夜にこの高校に侵入し潜伏しようとしていた連続誘拐犯が忘れ物を取りに来た女子生徒に見つかったせいで捕まり、そのまま獄中で死亡した。その誘拐犯の霊が恨みを持って、夕方や夜に忘れ物を取りに来た女子生徒を何処ともわからない場所に攫うという話だ。
「で、途中でいなくなったから、その七不思議に攫われたんじゃないかって。」
「そこの2人、えーと、夏木さんと屋島さんはそう考えてるのか?」
「お、おう!」
「そ、そうです。」
「…バカバカしい。七不思議なんて所詮噂だろ?深夜に女子だけで出歩いたんだろ?普通に人間の誘拐犯に捕まったんじゃないのか?」
俺はそう推理して2人に伝える。
「ま、まぁ、普通ならそうなんですけど。」
「学校にいる最中にいきなり後ろから瑠衣ちゃんがいなくなったんです。」
「そうよ、壮真!これは絶対『神隠しの誘拐犯』の仕業よ!」
「そうかぁー?オカルトは必ず裏があるからなぁー。」
「むぅ、壮真に頼ったのが間違いだった!もう自分達で解決するからいい!」
「いやいや、現実的に危ねぇから、女子だけで深夜の学校に来るなよ?」
「むぅ、じゃあ他の男子を誘う。」
「それだったら、俺を誘え。結局、七不思議なんて嘘っぱちだってことを証明してやるよ。」
俺自身は、霊が存在することを知っているので、流石に見過ごすことができず、慌ててついて行くことに方針を変えた。
元々は人間の誘拐犯に攫われたというふうに納得させてやり過ごし、俺が1人で解決する方針だった。が、楓がオカルトにここまで頑固だとは思ってなかったのが誤算だ。
「素直についてきたいって言えばいいのに!幽霊いるかもって思ってるんでしょう?」
「オカルトはフィクションとして考えるから面白いんだ!」
「もう!ついてくるのは許すけど、邪魔はしないでね!」
「安浦さんを探すのは一生懸命やるから問題ないだろ?」
「なら、まぁ、いいけど。」
楓は納得したのか、俺がついていくことにしぶしぶ承諾する。楓も女子だから、強がってはいるが、怖いのは怖いのだろう。
「ただ今日はやめてくれ、明日、土曜日の夜でどうだ?」
「うーん、分かった。警備員さんは今日はいるからね。土曜日なら警備員さんも早めに帰るし、そこは納得する。由奈ちゃんと美希ちゃんもそれでいい?」
「いいぜ!」
「大丈夫です。」
「よし、じゃあ、壮真。明日の夜8時に校門前ね。」
「分かった、変更があったら連絡くれ。」
「うん、じゃあね。」
楓は夏木さんと屋島さんと一緒に教室を出ていった。
(くそ、めんどくせぇ、とりあえず、今日は霊と道具の補充だな。)
ブックマークをどんどんしてくれると嬉しいです。感想も募集中。