第10話 海と屋敷と無人島5
目標達成!今後はちょくちょく気分が乗ったら、書いて投稿という形になると思います。
次の日の朝、約1名を除き、清々しい朝を迎え、朝食を食べていた。朝もバイキング形式でまるでホテルのようだ。俺が席に着くと、拓実がものすごい勢いでご飯を食べていた。
「拓実はよく食べられるね。」
心なしかげっそりした啓介が拓実の前に座る。啓介が取ってきた朝食はかなり少なめだ。
「ん?そりゃ、食べなきゃ力が出ないからな!今日は無人島だろ?いっぱい動く可能性が高いからな!啓介もそれの10倍くらいは食べろよ!」
「そりゃ、お前だけだ、拓実。…まぁ、啓介のは確かに少なすぎるけどな。その2倍くらいは、食べておいた方がいいと思うぞ。」
啓介が取ってきたのは小さいロールパン1個とデカめのフライドポテト数本とコーンスープ、そして紅茶だ。
「ハハハ、ちょっと食欲なくてね…」
昨日、餓鬼を見たのがよほど怖かったらしい。眠れなかったのか目の下に隈ができている。
「まぁ、啓介も無人島に行ったら元気出るさ、気分を変えるのにちょうどいいだろう?」
「そうだぜ!無人島だろ?なんかロマンじゃん!」
「…うん、そうだね!そう考えたらなんか元気が出てきたよ。」
啓介は持ってきていた食事をサッサッと食べる。食べる速度は速いのに、拓実と比べて圧倒的に品がある。いや、比べるのが失礼だ。
「おかわりしてくるよ。」
啓介はすぐに食べ終わり、追加を取りに席を立った。
(元気になったみたいだな。とりあえず、一安心か。)
「ふぅー、ご馳走様!うまかったぜ!」
「少しは啓介みたいに綺麗に食えよ…」
机にポロポロと食べカスが落ちている。拓実がバクバクと食べた時に散ったものだ。
「んー、俺には無理だ!美味しく食べるのが俺の精一杯のマナーだ!」
「何げによさげなこと言ってんじゃねえよ。」
拓実はお腹いっぱいになったのか、腹をポンポンと叩いている。俺も自分で取ってきた朝食を食べる。
啓介ほど綺麗には食べれないが、親にテーブルマナーは叩き込まれたので問題はないレベルの筈だ。拓実ほどの量ではなかったので、すぐに食べ終わる。
「…確かにうまいな。これ、再現できるといいんだが。」
俺も一人暮らしのため、料理をする。これだけうまいならたまに作って食べたい。
「よかったら、レシピをお教えしましょうか?」
「うおっ!?」
「おっと、失礼しました。」
ビクッと後ろを振り向くと、執事の爺さんが立っていた。どうやら、俺のつぶやきを聞かれたようだ。
「え、レシピって教えてもらっていいんですか?」
「えぇ、売り物にするのでなければ、構いませんよ。ぼっちゃまの大事な友人なのですから。」
「じゃあ、お願いします。」
「爺、ぼっちゃまはやめてくれないかな。せめて、他に人が来ている時は勘弁してほしい、さすがに恥ずかしいよ。」
動揺しているのか啓介は皿を置く時にカチャリと音を立てる。
「いえ、ぼっちゃまはぼっちゃまですので。」
「よし、食べたら無人島に行く準備をしよう。」
啓介は執事さんが言うことをスルーする。多分、頑として曲げない執事さんの言葉を聞かなかったことにしたいのだろう。
「そういえば、楓達は?」
「お嬢様方なら、お先にお食べになりましたよ。今頃、お風呂に入られている頃かと。」
啓介に聞くと、後ろに待機していた執事の爺さんが答える。
「…ご馳走様。爺、料理人に今日の昼食と晩食はいらないと伝えておいてくれないかな?昨日疲れていて忘れていたんだ。」
「かしこまりました。そのついでにレシピももらってきましょう。」
「あ、すいません、ありがとうございます。」
俺は執事の爺さんに頭を下げる。執事さんは一礼して部屋を出ていった。
「じゃあ、僕達は部屋に戻って、準備をしておこう。お姫様達もすぐに上がってくるだろうからね。」
「思ったんだけどさー、あいつら、お姫様って柄か?」
部屋に向かう途中、拓実がそう呟く。
(…玉藻は直接聞いたことはないが、有名な話に貴族の愛人みたいなものだったっていうのがあるから、お姫様だな。楓はお姫様って感じじゃないな、お転婆すぎるし危なっかしいからな。沙耶は一般家庭に比べるとかなりお金持ちだし、お姫様みたいなものか…?)
「女性はみんなお姫様だよ。特に年若いあんな綺麗なお嬢さん達ならね。」
啓介はキザな言い方をするのがよく似合う。金持ちの風格と品、そして、イケメンさがそれを助長しているのだろう。
「えー、沙耶なんか無茶苦茶つええじゃん、楓も暴れ馬だしさ。」
俺はゾワッと悪寒がしたので振り返ると、女子達が階段の下にいた。楓と沙耶の目からハイライトが消えている。それを見て、玉藻は苦笑いを浮かべていた。
「…ちょっ、拓実。」
「ん、なんだ?」
拓実の肩を叩き、後ろを見ろとジェスチャーで伝える。
「げっ!?」
「…拓実?ちょっとこっちに来てくれないかしら?」
「拓実、来なきゃどうなるか分かってるよね?」
2人はニッコリと不自然なほど微笑む。拓実が冷や汗を流しながら、俺と啓介に助けを求めるような目で見る。俺は首を横にブンブンと振った。
なぜなら、怒った2人がどれほど凶悪か身を以て知っているからだ。
「任せて、拓実。」
啓介は階段を降りて、2人の前に行った。
(…勇者すぎる。一応、2人に分別は残ってはいるだろうが、瞬時にやられるだろうな。)
俺はその場から逃げるためにこっそり動く。拓実と啓介には悪いが、巻き込まれたくはない。
「お嬢さん達、綺麗なお顔が怒っていると台無しですよ。落ち着いてください。」
「ごめんなさい、湯島君。先に謝っておくわ。」
「遠藤さん?何をっ!?」
沙耶が凄まじい速度で啓介を取り押さえ、意識を刈り取る。合気道の応用だ。啓介も合気道をやってたはずなのに、対応すら出来ずに意識を落とされていた。
「楓!」
「分かってる!」
「うおっ!」
沙耶が啓介を取り押さえた瞬間、既に楓は拓実に向かって一直線に駆け上がってきていた。拓実は慌てて楓から逃げる。
ちなみに俺は既に拓実達から離れ、俺達の部屋とは逆方向の小部屋に隠れていた。
「待てー!」
「待てと言われて待つわけないだろ!」
拓実はギリギリ楓に捕まらず、部屋に入って鍵を閉じた。楓は扉の前で立ち往生している。
「拓実!開けて!」
拓実は返事をせず、しんとしている。
「うーん、あ!壮真、開けて!」
俺は呼ばれてたので出ていくしかないかと思い、部屋から出る。
「あ、壮真!そっちにいたの?」
「あぁ、巻き込まれたくないんで逃げたんだが、楓が案外落ち着いてるんでな、呼び出しに応じて出てきた。」
「少し説教をしようと思っただけだから。それにそんなに怒ったことなんてないよ?」
どうやら楓は覚えていないらしい。昔、沙耶と楓が喧嘩で尋常じゃない強さを発揮して、男子高校生を10人ほど叩きのめしたことがあった。
今でも多分、S高校の先輩に知っている人もいるはずだ。というか、叩きのめされた本人もいるはずだ。
「ま、まぁ、そうだな。そんなに怒ってないなら、拓実を読み出してやるよ。」
「ほんと?」
「あぁ。」
俺は俺達の部屋の扉を叩く。
「おい、拓実。沙耶達が来そうなんだ。今なら大丈夫だ、開けてくれ。」
「お、おう。まかせ…うぎゃあ!」
「てい!往生して、拓実!」
楓が拓実を引っ捕まえて、ズルズルと1階に連れて行った。多分、沙耶と一緒にお説教をするんだろう。俺は拓実の足がズルズルと引きずられて視界から消えるのを見て、これの方がよほどホラーだなと苦笑した。
俺はしばらく帰ってこなかった拓実や啓介の代わりに荷物を整え、部屋の整理していた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「やれやれ、まだ落ち込んでるのか、拓実?」
俺達は既に船に乗っていた。啓介が2人に説教をされて魂が抜けた拓実を背負って部屋に戻ってきた後、すぐに屋敷を出発しプライベートビーチに用意されていた小型船で無人島へ向かっている最中だ。
無人島で行うキャンプ用の道具は船に積まれているらしい。
「お前だけ、逃れやがってー!」
「まぁ、あれはお前が悪い。というか、巻き込まれた啓介がかわいそうだ。」
「えー、俺は事実を言っただけなんだけ…ひっ!」
拓実がまた楓達を怒らせるようなことを言おうとしたので、楓と沙耶から殺気が拓実に放たれる。拓実はバッとその場から逃げて行った。
「やれやれじゃのう?」
拓実が逃げるのを見届けると玉藻が俺の隣に来ていた。
「確かにな。まぁ、皆それぞれ自由に過ごしてるんだからいいんじゃないか?」
「自由すぎる気もせんではないがの?」
「お前ももっと自由にはしゃげよ。」
「無人島ではそうさせてもらおうかの。そのために、無人島に霊がいないことを祈っておくべきじゃの。」
「それこそ、ほんと確かにな。」
霊がいるのを見つけたら即座に封印しようと密かに決意する。
「おーい、啓介ぼっちゃん!」
「ぼっちゃんって言わないで!」
「ぼっちゃんはぼっちゃんなんで。」
どこかの誰かが言っていたような言葉が聞こえる。啓介の後ろで執事の爺さんが私の言うことは間違ってなかったみたいな感じでちょっとドヤった顔をしていた。
「はぁ、もういいや。で、どうしたの、権田。」
「もうちょっとで島が見えるようになるんで知らせた方がいいと思いましてね。」
啓介に権田と呼ばれた男は、いつもは他の地域で漁をしているが、この時期のみ湯島家のモーターボートの整備と操縦の係として雇われているらしい。風貌はまさしく海の男といった感じの雰囲気を醸し出している。
「そうか、ありがとう。…もうそろそろ前方に島が見えてくるみたいだよー。」
啓介が大声を張り上げて全員に知らせる。俺と玉藻が船の前の方に行くと、楓と沙耶と拓実は既に船の前の方にいた。
「まだ見えねぇな。」
「そうじゃのう。とりあえず霊がいるならば見ればわかると思うがの。」
「そうだな。といっても地中や密集した森の中にいたら見えないけどな。」
右眼は霊が見えるけど、透視能力はないので障害物に姿を隠されていたら霊は見えない。
「お、見えたぞ!」
拓実が船から身を乗り出して遠くを見る。俺も遠くを見ると確かに、島のようなものが見えた。しばらくすると、だんだん島に近づき、全体図がある程度見えるようになった。
「やっぱでかいな。これ普通は個人で所有できるようなもんじゃないだろ。」
「水が綺麗!」
「ほんとね!」
「ここだったら、素潜りとかで何か取って来れそうだな!」
沙耶と楓は底が見えるほど澄んでいる海の水の綺麗さにきゃいきゃいと騒いでいる。拓実も海の水の綺麗さについて言っているが、意識は完全に遊びか食欲の方だ。
「ここの水はね。海の水なのに塩が少なめなんだ。それも霊がいるって噂を駆り立てているのかもね。」
啓介が俺達のところへ合流し、しゃべっているが騒いでいる楓達には聞こえていない。まともに聞いているのは俺と玉藻だけだ。
「…のう、壮真。」
「どうした?」
「何か変な感じがせんかのう?」
「まぁ、確かにうっすらと霊気があるが、強大な霊の残り香みたいなものだろうな。いても、人魂がいるくらいだろう。多分、衛星写真で撮られた当時は『領域化』してただけじゃないか?」
「そうかのう?何か違和感がするのじゃ。」
「まぁ、この霊気ならそう大したことも起こらんだろ。まぁ、何か気づいたことがあったら言ってくれ。」
「そうしようかの。目一杯楽しませてもらうのじゃ。」
「つきやしたー。」
「さて、皆、荷物を忘れず下船してね!」
結局、ブックマークなどはゼロだったので残念です。
今後はブックマークが10以上、又は評価ポイントが100以上、総合ポイントが80以上になったら、特別話を公開します。




