始動
三話目投稿です。
読んでいただきありがとうございます。
是非是非ブクマや感想などよろしくお願いします。
それでは本編をどうぞ。
「可愛かったなぁ」
帰宅し部屋のベッドの上で横になりポツリと呟いた。
あの後どうやって帰ったか記憶にない。
これが無意識に帰れる帰巣本能というやつだろうか。
と、馬鹿なことを考えるがすぐに頭の中には白羽さんの顔が思い浮かぶ。
「あー、なんだったんだよあれー」
枕に顔をうずめ足をバタバタさせてみるが何も分からない。
ただ感謝のためだけに白羽さんが恥ずかしい思いをしてまで大声を出すだろうか。
明日合う時どんな顔をすればいいのだろうか。
唸りながら悩むが結局何も思いつかない。
「もー、兄貴うるさい !! 」
「こっちは勉強してるんだから静かにしてよ」
部屋に突然侵入者がやってきたと思ったら中学三年生の妹だった。
妹に恥ずかしいところを見られてしまった。
だがここで怯んではいけない。
兄としての威厳を保たねばならぬ。
「どうだ勉強の方は」
「分からないことがあったらお兄ちゃんに質問してみなさい」
「誰が兄貴なんかに聞くかよ」
「いいから勉強の邪魔しないように大人しくしてて」
と言い扉を閉めて去っていってしまった。
受験が迫っているんだ、ピリピリするのも分かる。
だが俺ってこんなに威厳なかったのかな?
思春期なのか最近お兄ちゃんからアニキに呼び方変わって傷ついたし。
前は俺にぴったりくっついて来てお兄ちゃん子だったのにな。
これが妹離れと言うやつか。
「時の流れとは早いもんだなぁ」
ドンッ !!
隣にある妹の部屋から壁を叩かれたようだ。
またうるさかったのだろう。
邪魔にならないように静かにすることを誓った俺だった。
家庭内ヒエラルキーは多分俺が一番下なのだから。
その後、夕食を食べお風呂に入り今日の終わりが迫ってくる。
スマホを弄り無駄な時間を過ごしているとメッセージが届いた。
『今日はホントにごめんね』
『磐田くんが人見知り直すの手伝うって言ってくれて嬉しかったよ』
『私頑張るけど、たまには頼っちゃうかも』
『また明日部活でね』
白羽さんからだった。
今まで連絡交換はしていたものの業務連絡ばかりだったので目を丸くした。
なんて返せばいいんだ?
もうこの文章で完結している気が。
試されているような気がする …… 。
これは試練なのか?
言葉は慎重に選ばなければ。
考えた末に俺が送ったメッセージは、
『了解 !! また明日ね』
送った後に冷静になって思う。
なんだこのクソみたいな文書は。
もっと何か他にあっただろう。
何だこの思春期特有の異性を意識しすぎてる感じは。
恥ずかしい …… 。
が既読もついてしまっている。
ここで送信取消をするのはもっと恥ずかしい。
俺はその事を気にしないように気にして眠りについた。
睡魔に負けるまで気にし続けていたので明日は寝不足決定だろう。
不安をかき消すためか一人で呟く。
「おやすみなさい」
ドンッ !!
妹は夜遅くまで頑張ってるんだなと感心した。
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翌日の放課後。
つまりは部活の時間になってしまった。
寝不足のせいか授業中のことは全く思い出せない。
ノートを見返してもミミズが這ったような跡があっただけだった。
「お疲れ様でーす」
「おー、まだ誰も来てないぞー」
部室では佐倉先輩がお菓子を食べてソファで寝そべっているだけだった。
白羽さんがいないことを知り少し安心した。
が、来るまでは時間の問題だろう。
対応パターンを今のうちに考えておかねば。
と、考えようとしたその時。
「お疲れ様です」
「お、おつかれ」
「桃花ー、待ってたぞー」
「楓先輩お菓子食べ過ぎですよ」
「それにスカートが捲れています」
「別にいいじゃんかー、中に短パン履いてるし」
「女の子なんですから気をつけて」
「はーい」
こんな時俺はどんな顔をしていればいいのだろうか。
誰か分かる人がいたら教えて欲しい。
ただ思ったことは白羽さんと佐倉先輩は先輩後輩逆なんじゃないかと思う。
これを言ったら佐倉先輩には怒られるんだろうな。
俺は口が滑らないよう他の話題を振った。
「そういえば今日は部長がいらっしゃるんですよね ? 」
「昨日そう言ってたから来るだろ」
「久しぶりに四麻ができますね」
「一年生は部活に真面目すぎるな」
「楓先輩が不真面目すぎるんですよ」
白羽さんが佐倉先輩にツッコミを入れた。
今までより少し物腰柔らかな気がする。
昨日の件で早速頑張っているということだろうか。
そう思うだけで俺は何も出来ていない。
頼れとまで言ったのに。
そんな自分が恥ずかしくなり逃げるように麻雀卓を用意した。
「部長が来るまで三麻でもしましょうか」
「えー、部長が来てからでいいじゃんか」
「佐倉先輩は何部なのか思い出してください」
「ぴゅーぴゅー」
佐倉先輩は口笛を吹こうとして吹けていない。
誤魔化すにしても古典的すぎるだろ。
「コントはいいですから卓に着いてください」
と、言いながら白羽さんが卓に着いた。
その後を続くように不満を言いながら佐倉先輩が宅に着いた。
「遅いぞー言い出しっぺが最後とはなー」
「卓を準備したのは俺ですよ ? 」
「コントの続きはいりませんので始めますよ」
白羽さんがそう言ってサイコロを回した。
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「リーチです」
南三局の八巡目に親の白羽さんがリーチをかけた。
全員の点数は横並びの状態なのでここは何としても振込みたくない。
白羽さんには申し訳ないが何を待っているのか思考を見せてもらおう。
俺は白羽さんの目を見つめる。
白羽さんは自分の手牌や河を眺めているので俺の視線には気づかない。
そして思考が読めた。
(あーあ、緊張しちゃって磐田くんに話しかけられないな)
(変に意識しちゃってる)
(友達のはずなのになんでこんなに …… )
白羽さんは麻雀とは全く関係ないことを考えていた。
むしろ俺について考えていてくれた。
今のは俺が読んでいい思考だったのか?
もしかして白羽さんは俺のことが …… 。
「葵 !! いつまで長考してるんだよ」
「 …… へ !? は、はい 」
と驚きのせいで適当に牌を捨ててしまった。
「あ、それロンです」
「リーチ、一発、断幺九、三色同順、ドラ2で18000です」
「は、はい」
想像以上に高い手だった。
曲の終盤にこれは痛手だ。
白羽さんの思考に気を取られすぎてしまった。
「葵が振り込むなんて珍しいなー」
「しかも跳満に一発振込とは」
「なんか他のことに気を取られてたかー?」
「い、いや、そんなことないでふよ」
あ、噛んでしまった。
それに対して佐倉先輩はニヤニヤしている。
「図星みたいだなー」
「桃花はどー思うよ ? 」
寄りにもよって白羽さんに。
白羽さんは少し考えて話し始める。
「確かに磐田くんにしては珍しいですね」
ガラッ !!
白羽さんが何か続けて言おうした時に部室のドアが開いた。
正直助かったが白羽さんは何を言おうとしてたのだろうか。
「皆、集まってるようね」
「いきなりですが皆には全国大会を目指してもらいます」
急に部室に入ってきたのは部長だった。
そして突拍子もないことを言い始めた。
この一言で我ら麻雀部は本格的に活動するのであった。
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