乙女心
新連載始めました。
楽しんで読めるようなラブコメを目指していきたいと思います。
是非是非深く感想などお願い致します。
それでは本編をどうぞ。
目は口ほどに物を言う。
言葉にするのと同じくらい目からは相手の情報が分かるという意味だ。
実際言葉は強がり、嘘、社交辞令など偽りが入り乱れるが目からは相手の素直な思いが伝わってくる。
「すみません、ロンです」
「リーチ、一発、七対子で12000点になります」
俺は磐田 葵というなんの変哲もない高校一年生の男です。
数少ない特技として麻雀が得意で麻雀部の新入部員として毎日放課後に先輩方と麻雀をしております。
「くそー、また葵にあがられたー」
「新入部員のくせに生意気だぞー」
今、俺にあがられて不貞腐れているのが部活の先輩にあたる佐倉 楓だ。
二年生で見た目ギャルのような感じで年相応だが性格は子供っぽいと思っている。
言葉にしたら怒られるので口を滑らさないよう気をつけよう。
「次の局にいけないので早く点棒を磐田くんに渡してください」
「いじけていても点数は変わりませんよ」
先輩に大して強気な態度をとっている彼女は俺と同じ一年生で新入部員である白羽 桃花。
先輩に物怖じせずに文句を言うため僕としてはヒヤヒヤするが憧れる。
表情は豊かではないため雪女、雪の女王、鉄仮面等と影で言われている。
あと部員は他に二人いるのだがまだ部室に来ていない。
だから三人でできる三麻をこの面子でやっているのだ。
「だってさー葵は思考読まれてるようで強いし桃花はポーカーフェイスで何を考えてるか分からなくて強いから負けてばっかなんだもん」
「なんで三麻なんだよー私ばっか狙われるー」
「それは楓先輩が分かりやすすぎるんですよ」
「確かに佐倉先輩はちょっとだけ表情に出すぎですよね」
しまった。つい白羽さんの意見に納得しすぎて肯定してしまった。
実際、良い手がくるとニヤついたり誰かがリーチをすると目が泳いだり見ていて楽しいくらいには分かりやすい。
「おーおー、新入部員のくせに先輩を弄るとは調子に乗ってるなー葵」
「い、いや本心ではなくてですね、つい口が滑ったといいますか …… 」
「それを本心と言うんだよー」
やはり怒られてしまった。
こういうところが子供っぽいと思うのだが。
これ以上怒られたくないので謝らなければ。
「コホンッ」
白羽さんが咳払いをする。
それに対して二人とも白羽さんの方を向いた。
「それより先程言っていた磐田くんの勘の良さに関して私は楓先輩と同意見ですけどね」
「そーだよなー相手に全く振り込まないしホントに考えが読めてたりしてー」
佐倉先輩先程までの怒りがどこへ行ったのかというくらいに白羽さんの話題に乗っかった。
白羽さんは助けてくれたのか話題を俺の勘の良さに変えてくれたが逆にピンチだ。
僕には知られてはいけない秘密がある。
それは、
人の目から思考を読めるということ。
相手の目を見ることが条件だが僕は人の思考が読める。
だからこの能力を使って無双できる麻雀が特技になった。
だがこの能力は麻雀だけではなく日常でも僕の意志とは関係なく発動してしまう。
つまり常日頃から頭の中を覗かれているということなのだ。
そうならないために俺は人と話す時は基本的には相手の眉間を見て誤魔化すようにしている。
人の思考を読めると知れば気持ち悪いと思われるだろう。
だから俺はこの秘密を守り抜かなければならない。
絶対に誰にも知られてはならないのだ。
「考えは読めませんけど色んな情報を集めて狙ってる牌は分かるんですよ」
「他の情報?」
よし、佐倉先輩が食いついてくれた。
軽く説明して話題をまた逸らそう。
「例えば相手の河の捨牌だったり手牌を見る時の視線だったりで色々分かるものですよ」
「まぁ、白羽さんくらいのポーカーフェイスになると情報を得るのも難しいですけど」
上手く切り抜けたか ?
このまま白羽さんの話題に変えてしまえば佐倉先輩は疑ってたことすら忘れるだろう。
先輩に対して失礼だが佐倉先輩はアホだから。
「あー、葵それはないわー」
佐倉先輩がそう言うと白羽さんは無言で立ち上がり部室を出ていった。
「え、俺なんかやっちゃいましたか?」
「葵は麻雀では思考を読んでるのかってくらい勘が良いけど女心は全然読めないだよなー」
「桃花は常日頃からポーカーフェイスなの結構気にしてるんだよ」
やってしまった。
こんなことも分からなかったのか。
相手の目さえ見れば考えてることが分かってきたのだ。
俺はその方法以外で相手の気持ちを察するのが苦手なのだろう。
女の子を傷つけて気づくとは。
最低だ。
「そうだったんですね」
「俺全然気づけずに白羽さんを傷つけてしまったんですね」
「何やってんだよ、早く追いかけろよ」
「女の子は傷ついてる時程追いかけて欲しいんだよ」
「だから早く行け」
「はいっ、ありがとうございます」
「昨日部長に借りた少女漫画にそんな風なこと書いてあったから多分合ってる」
最後佐倉先輩が何か言ってたが聞こえなかった。
俺は走り出した。
白羽さんはどこに行ったんだ。
荷物は部室だから帰ってはないはず。
走って走り回って探し回った。
十五分程探しただろうか。
そして最後に辿り着いたのが屋上だった。
「はぁはぁ、ようやく見つけた」
「追いかけてきてくれたんだ」
「はぁはぁ …… 」
「楓先輩の入れ知恵かな ? 」
「はぁはぁ……」
「私は全然気にしてないから大丈夫だよ」
「はぁはぁ …… 」
「磐田くんに悪気がなかったことは」
バタンッ !!
俺は白羽さんが話してる最中に倒れてしまった。
文化系の俺には許容範囲外の運動量だった。
体力の限界で倒れた俺に白羽さんは駆け寄ってくれてきた。
「大丈夫 !? 」
「はぁはぁ …… ごめん、少しだけ待って」
「あ、うん、気にしないで」
シリアスな展開なはずが俺の運動不足のせいでシュールな展開に。
無傷で倒れている男子に心が傷ついている女子が駆け寄っている。
早く回復してくれ俺の体 ……
俺は息を整えるために深呼吸をした。
読んでいただいてありがとうございます。
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