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口に出さないと伝わらない

本当にサブタイトルが本当に、下手だ。これがうまければもっとよくなるかも?と言われたが、うん。苦手だ(笑)


「あ、街が見えてきた。アリシャ、降りてみようか?」

 馬車の窓から見えたのは、ブルフというナーリ国で一番栄えている街。通る道を変えたのか、行きには見えなかった屋台などが見える。

「…はい」

 街のにぎやかさにかき消されるほど小さな声でアリシャは同意を示した。心配そうにレイラがアリシャを見つめる。けれどカミルは気づかないふりをして馬車を止めた。

 帽子をかぶり、上着を羽織る。ライモンドが先に馬車を降り、安全を確認した。

「降りていいぞ」

「ありがとう。ほら、アリシャ」

 差し伸べられたカミルの手にアリシャは自分の手を乗せる。馬車から降りればどこかおいしそうな匂いが鼻孔をつく。

「屋台の匂いだね」

 自分の疑問に答えるようにカミルがそう言った。

 ブルフには大きな港があり、他国から仕入れた商品も多く並ぶ。肌の色が違う人々も多く見られた。いろんな人が行き交い、活気があふれている。店へ呼び込む掛け声が大きく響いていた。食べ物屋の屋台もいくつもあり、いい匂いがあたりを包む。

「すごい」

 アリシャの口から思わず声が漏れた。先ほどまでの暗い雰囲気が楽しげな街の様子にかき消される。それを見てカミルも嬉しそうに笑った。

「いい街でしょ?」

「はい、とっても」

「アリシャの住んでいた街とは違う?」

「はい。私の住んでいた街はどちらかというと自然が多く、静かなところだったので、こんなに多くの人がいて、少し驚いています」

 顔を右に、左にと忙しく動かすアリシャの様子にカミルは小さく笑みを浮かべた。

「アリシャ、はい」

 そっとアリシャに手を伸ばす。その理由がわからず、アリシャはただ、その手を見つめていた。カミルの顔を見る。そんなアリシャにカミルは微苦笑を浮かべた。

「手、つなご?」

「…え?」

「はぐれると困るからさ」

 同意を待たずにカミルはアリシャの手を掴んだ。そしてそのまま歩き出す。アリシャは引かれるまま足を進めた。

 そんな2人を数歩後ろからライモンドとレイラが微笑ましく見ている。先ほどまでのアリシャの様子を知っているだけに、兄妹は目を合わせ「よかった」と口にした。

「…あ」

 思わずそんな声が出た。小さな声をカミルが拾う。

「アリシャ、どうした?」

「あ、いえ。なんでもありません」

「アリシャ?」

「…いえ、その…」

「なんでも言っていいよ」

「…きれいだなって思っただけなんです」

 アリシャが見ていたのは、露店に出ていた珍しいネックレスだった。小さいが異国の地で採掘される宝石がついている。

「あの宝石はルビーかな」

「ルビー?」

「ああ。あの赤い宝石の名前だよ」

「何でもご存じなんですね」

「まあ、よく来るしね」

「よく来る?」

「お忍びで来るんですよ、こいつ。護衛も俺だけで。本当に自分の立場を理解しているのか。…アリシャ様からも注意してください」

 ライモンドが口を挟んだ。そんなライモンドをカミルがにらむ。

「ライ、余計なこと言うなよ」

「余計じゃないだろ。本当のことだ。困ってるのもな」

「わかってるけどさ」

「わかってるなら自重しろ」

「俺がすると思う?」

「思わないからアリシャ様に頼んでるんだろ?」

 2人の様子にアリシャとレイラは小さく笑った。そんなアリシャにカミルはまた一つ笑みを深める。

「ねぇ、アリシャ、あのルビーのネックレス気に入ったの?よかったらプレゼントするよ?」

「あ、いえ、そういうわけではなく、とても珍しかったものですから、つい」

「本当に?」

「はい」

「そうなんだ。でも、何かほしいものがあれば言ってね。何でも買ってあげるから」

「ありがとうございます。けれど、特にほしいものはありません」

「…」

「…?」

 急に黙ったカミルにアリシャは不思議に首を傾げた。カミルがアリシャを見る。真剣な表情はどこか険しかった。

「ねぇ、アリシャ。俺は、アリシャじゃないから、アリシャの気持ちはわからないんだよ。だから言葉にしないと伝わらない。ほしいものを欲しいって言わなきゃ、何も手に入らないよ」

「…」

「カミル、言い過ぎだ」

 ライモンドがカミルの肩を掴んだ。急に馬車の中と同じような空気が4人を包む。レイラも心配の表情を浮かべてアリシャの隣に並んだ。

 狭い通路に4人が並ぶ。上着を羽織ってはいるが、それでも着ているものはいいもので、出で立ちも凜としている。そんな彼らの姿に周りの人たちが何事かと視線を向けた。

「…目立ってきている。もう、戻ろう」

「アリシャ様、戻りましょう?」

 声がそろった。さすが兄妹だな、なんて思っている余裕はない。レイラの言葉にアリシャはうなずこうと首を動かした。けれど、すぐに止まる。

「アリシャは何がしたいの?何が欲しいの?…何が言いたいの?」

「…」

「言葉にしてくれないと何も伝わらないよ」

「…」

「アリシャ」

「…カミル王子の願いは…」

「え?」

「…カミル王子の願いは、白龍と絆のできた私を傍に置くこと。それは……私と、結婚しなくても、できるのではないですか?」

「…」

「メイドとして働くという手もあります。幽閉だってできる。…婚約者として置いておく必要はない。…違いますか?」

また更新遅くなりますが、徐々に進んできた!

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