好きだよ?
また、更新遅くなります。
6時に予定投稿していたつもりだったのに、できていなかったみたい・・・。
「取り乱してしまい、すみませんでした。まず、こちらが、子どもたちが勉強をしている部屋です」
顔を上げると、ミーナは何事もなかったように案内を再開した。
「時間は決まっていませんが、子どもたちが自主的に部屋に集まり、勉強しています。上の子が下に子に勉強を教えることも多いです」
説明しながら静かに部屋の中に入る。部屋の中では何人かの子どもたちが机に向かっていた。
「あ!カミル様!!」
気配を感じたのだろうか一人の少年がこちらを見た。少年と言っても、アリシャとほとんど年齢は変わらないように見える。17歳のアリシャにとっては、全員年下であるはずだが、アリシャから見る彼らは、どこか大人びていた。
「本当だ!」
「カミル様!ライモンド様とレイラさんもいる」
彼らの座っていた机には本とノートが広がっている。はじめに声を出した少年のほかに、彼と同じくらいの年齢の少年が2人、少女が1人。そして、彼らより少し幼く見える少女が1人いた。彼らはペンを置き、こちらに駆けてくる。その様子にカミルはミーナを見た。
「ミーナ先生、案内はここまでで大丈夫そうです。お仕事に戻ってください」
「え?」
「あとは子どもたちがしてくれるはずですから」
ミーナはカミル達を囲む子どもたちの楽しそうな顔を見て軽く頭を下げる。
「また、必要でしたらいつでもお声かけください」
「ありがとうございます」
ミーナが去ると、カミルたちは嬉しそうに子どもたちを受け入れた。
「久しぶり!元気にしてたか?」
「もちろん!」
「あら?あなたは少し大きくなった?」
「はい。今、成長期なんです」
「ライモンド様、あとから手合わせしてもらいたいです」
「ああ。いいぜ」
賑やかな声が届いたのだろうか。庭で遊んでいた子どもたちも集まってきた。
「あ!本当だ。カミル様いる!」
勉強をしていた彼らよりも少し幼く見える子どもたちも集団に加わった。それぞれが自分の話を聞いてほしくて、思い思いに言葉を発する。
「あのね、僕ね、この前ね…」
「それでね、うんとね、…」
「わかったから落ち着けって」
苦笑いしながらカミルがそう言う。一人に集中すると他の子が拗ねてしまう。みんなの話をまんべんなく聞いていると、「ちゃんと聞いてる?」と怒られる。そんな状態は大変そうで、けれど幸せそうでもあった。勉強を教えていた先生たちも微笑ましくその光景を見守っている。
アリシャは一歩引いて、その輪を見ていた。カミルもライモンドもレイラも子どもたちと同じようにきらきらしている。いつも大人びているカミルが少年のような顔を浮かべているのが新鮮で、アリシャはただその光景を眺めていた。
「ねぇ、カミル様。あのお姉さんは誰?」
ふいに向けられた視線に、アリシャは思わず姿勢を正す。
「あの…私は…」
「ああ。彼女はアリシャお姉さん。俺の恋人」
「そうなの!?」
子どもたちの声が重なった。驚きとわくわくの両方を含んでいる。
「ああ」
「え?」
カミルの肯定とアリシャの戸惑いが重なった。一致しない反応に子どもたちは首を傾げる。
「まあ、正確にはカミルの片思いってところかな?」
「ラ、ライモンド様!」
「当たらずも遠からず、ってところですか?アリシャ様」
「レイラさんまで…」
兄妹のいれるちゃちゃにアリシャは必死で首を横に振った。そんな様子にカミルは楽しそうに笑みを浮かべる。その顔があまりにも余裕だったので、アリシャは睨むようにカミルを見た。
「アリシャ、睨んでるつもりだろうけど、可愛いだけだよ」
「な、何を言って…」
「本当の事言ってるだけ」
「カミル様…ほんと、もうやめてくだ…」
「ねぇ、アリシャお姉さんは……カミル様のこと、嫌いなの?」
アリシャの言葉尻を取ってそう聞いたのは、6、7歳くらいの女の子だった。つぶらな瞳に心配を浮かべてアリシャを見ている。みんながアリシャの返答を待つように口を閉じた。
「アリシャ、どうなの?」
一人だけにやにやと笑みを浮かべるカミルをもう一度睨むが、きっとそれも怖くないのだろう。アリシャは諦めて目の前の少女を見た。なんと言おうか迷いながらしゃがんで視線を合わせる。
「あの…えっと…」
「カミル様じゃ、だめ?」
「だ、だめじゃないよ」
「じゃあ、好き?」
「…」
「好きじゃないの?」
「……す…き、だよ」
もしこの瞳を前に「好き」以外の言葉を言える人がいたら教えてほしい。そう思いながら少女の顔を見ると、花が咲いたように笑った。これでよかったのだなと安堵の息を吐く。
「俺も好きだよ、アリシャ」
アリシャの選択肢が1つしかなかったことを知りながらもそんな風に言うカミルを今度こそ本気で睨みつけようとアリシャはカミルを見た。
けれどできなかった。
いたずらが成功した子どものように、けれどどこか嬉しそう微笑んでいたから。カミルの笑みにアリシャの頬が赤く染まっていく。子どもたちからは歓声が上がった。
「やった!」
「よかったね、カミル様」
自分の事のように喜ぶその歓声に応えるようにカミルはアリシャ手を伸ばした。包み込むようにアリシャを抱きしめると、歓声がより大きくなる。
「カ、カミル様!」
「ん~?」
「あの、えっと…」
「いいでしょ。アリシャも俺が好きなんだから」
「…あの、それは…」
「はい、カミル様、そこまでです」
そう言いながら2人の間に右腕を差し込んだのはレイラだ。軽く触れあう程度だった2人は簡単に離れる。カミルは不貞腐れながらレイラを見た。
「レイラ、邪魔するなよ」
「お触りは今の言葉が本当になってから、ですよ」
「…わかったよ」
「お~い、俺と手合わせしたい奴は庭に行くからついてこいよ」
ライモンドが仕切り直しとばかりに声を上げる。数人の子どもたちが勢いよく手を上げた。
「よし、行くぞ!」
「はい!!」
綺麗に声が重なる。
「じゃあ、俺は勉強を見てあげようかな。どう?」
「俺、カミル様に教えてほしい!」
「私も!あ、でも勉強のあと遊んでほしい」
「いいよ。勉強したら時間まで遊ぼう」
「それなら私もカミル様と遊ぶ!」
「僕も!」
「しっかり勉強もするんだぞ。あ、そうだ。誰かさ、アリシャに施設を案内してあげてくれないか?アリシャ初めてここに来たからこの施設のこと知らないんだ」
「私が行く!」
「俺も行くよ。ミヤだけじゃあ心配だから」
「もう!なんでリカはそういうこと言うの?」
「本当の事なんだから仕方ないだろう?」
「おいおい、喧嘩するなよ。俺の大切なお姫様、任せたからな」
「うん!」
「はい」
「じゃあ、私は、何しようかな」
「レイラさん、刺繍のやり方、教えてほしいです」
「刺繍?いいよ」
「私も!」
「俺も教えてほしい。…男だけどおかしいかな?」
「そんなことないよ。好きなものを好きだって言えることが一番格好いいんだから。よし、刺繍教えてあげる」
ライモンドは庭で剣術を教え、カミルはこの部屋で勉強を教えることとなった。レイラは隣の大きなテーブルがある部屋に行き、刺繍を教える。
「アリシャ様、こちらです」
「行こう!アリシャお姉さん」
そして、アリシャはミヤと呼ばれた少女とリカと呼ばれた少年と一緒に施設を回ることになった。
「よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げるアリシャに2人は一瞬驚いたように目を丸くし、すぐに笑みを浮かべた。ミヤがアリシャに手を伸ばす。アリシャはその手をぎゅっと握った。
実家に帰ると田舎でやることないので、小説が進む。そして、家に戻ってくると進まない。の繰り返しです(笑)
実家でたまったストックがもう切れてしまったので、またゆっくり更新になりますが、待っていていただけると幸いです。