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侍女レイラ

新しいキャラ出てきました。ただ、うまく絡んでいかないかもしれない。どちらにしろ、この話は書いてて楽しかったです(笑)

 太陽の光とともにアリシャは目を覚ました。それを見計らったように部屋をノックする音が聞こえる。

「はい」

「おはようございます、アリシャ様。お目覚めでしょうか?」

「はい。今、起きました。どうぞ、入ってきてください」

 アリシャは近くにあった上着を羽織ると、入室を促した。部屋に入ってきたのは、メイド服に身を包んだ綺麗な女性。長い黒髪を一つに束ねたレイラは、細身でアリシャより5センチほど身長が高い。スタイルがよく女性のアリシャから見ても美しい女性だ。

「今日のドレスはいかがいたしましょう?」

「今日もレイラさんにお任せします」

 ベッドから降り、鏡の前に立つ。朝起きて、レイラにドレスを決めてもらうのが、アリシャの日課となっていた。

「アリシャ様。前にもお伝えしましたが、私は侍女です。敬語は不要です」

「レイラさんは私より1つ年上です。年上の方に敬語を使うのは当たり前のことです」

「…譲りませんね、アリシャ様」

「レイラさんこそ」

 見つめあい、耐えられなくなって、2人で声を出して笑った。

 ウラノスに乗って空に飛んだ次の日、朝一番でレイラを紹介された。

『思っていたよりお転婆みたいだから、君を止められる侍女をつけることにしたよ。…余計なこと言われそうで、本当は嫌なんだけど、ライが適任だって言うからさ。あ、でも、ちょっとガサツで面倒な奴だから、いやだったらすぐに言ってね』

『カミル様、だいぶ失礼です、私に。…アリシャ様、レイラと申します。今日からアリシャ様の身の回りのお世話をさせていただくこととなりました。どうぞよろしくお願いいたします』

 そう言って頭を下げたレイラは、端正な顔立ちなのに豪快に笑った。そんなレイラをアリシャはすぐに好きになった。監視役でもあるのだろうが、それでも一緒にいて気疲れしないレイラと一緒にいられるのは楽しい。一緒に過ごす時間が長くなるにつれ、アリシャはレイラに対して友情を感じ始めた。以前にも、友と呼べる人は何人もいたが、アリシャの友はルシアの友でもあった。悪意はなくても2人がそろえばどうしてもルシアと比べられる。そしてみんなの視線はルシアにいった。それが嫌でアリシャは友人たちと無意識に距離をとってきた。そして友人たちもそれに気づいていた。どこか気を遣い合う関係だった。だからこそ、純粋に笑いあうことのできる関係がアリシャには嬉しかった。

「そういえば、今日はカミル様とデートでしたよね?」

「デ、テートって、そんなんじゃないです。…ただ、視察に同行させてもらうだけです」

「必死で仕事を終わらせて、時間を作ったのに、カミル様、報われないな」

「え?」

「いいえ、こっちの話です」

「…?」

「視察に行かれるならあまり派手すぎない方がいいですよね。…この前カミル様から贈られた水色のドレスはいかがでしょうか?」

「はい。お願いします」

「髪もセットしますね。カミル様、喜ばれますよ」

「そうだといいのですが」

 どこか自信なさげにそう言うアリシャにレイラは微苦笑を浮かべる。

「カミル様が好きそうな髪型にしておきますね」

「…レイラさんはカミル王子のことよくわかっていらっしゃるんですね」

「…まあ、兄と同様、カミル様とは腐れ縁ですから」

 レイラはライモンドの3歳離れた妹である。艶のある黒髪が同じで、大きな目に高い鼻、端正な顔立ちもそっくりだった。

「わかっているというより、染みついているという感じです。大人をからかって遊ぶカミル様と兄を不本意ながらいつも見てきましたから」

「カミル王子とライモンド様は本当に仲がいいんですね」

「まあ、悪友って感じでしょうか」

「…私は仲がいい友達というのが残念ながらいなかったので、うらやましいです。それに、レイラさんもカミル王子とも普通に接してらっしゃる。私は、…カミル王子の前だとどうしても緊張してしまうので」

「それは第一王子だからですか?それともカミル様だから?」

「え?」

「いえ、核心を突くにはまだ早いですね。出会ってから1月ほどしか経ってないわけですし」

 最後の方は何を言っているのかわからなかった。首を傾げるアリシャにレイラは笑って誤魔化す。

「いえ、こちらの話です」

 ふと、ノックする音が聞こえた。返事をしようとアリシャは扉に顔を向ける。けれど、返事をする前に、扉が開いた。

「アリシャ、今、いい?」

 カミルは顔だけを部屋の中に入れ、そう告げる。アリシャは思わず上着の前を締めた。

「カミル様!返事をする前に女の子の部屋に入るってどういう神経してるんですか!」

 怒鳴るレイラにカミルはうるさそうにしながら部屋の中に入った。レイラを無視し、アリシャを見る。

「アリシャ、おはよう」

「…お、おはようございます」

「あ、俺が送ったドレス。着てくれるの?」

 レイラが手に持ったドレスを指さしながらカミルが嬉しそうに笑う。それにつられてアリシャの顔にも笑みが浮かんだ。

「はい。レイラさんが選んでくれました」

「アリシャは気に入ってる?」

「はい。とっても。ありがとうございます」

「うん。それならいいや」

「カミル王子!!聞いてます?」

「お前うるさい」

「もし、アリシャ様が着替え中だったらどうするつもりですか!?」

「ラッキーだなって思って、ガン見する」

「…最低ですね」

 即答したカミルにレイラは冷ややかな視線を浴びせた。

「やっぱ、お前うるさい」

「うるさくさせてるのは、誰ですか!」

「ねぇ、アリシャ。今日は視察だけで仕事がないからさ、朝、ゆっくりできるんだ。だからさ、一緒に朝食食べよ?」

「あ、はい。着替えてすぐに行きますね」

「…見てていい?」

「いいわけあるか!!」

 レイラが腹から声を出し叫ぶ。側近であるライモンドの妹とはいえ、侍女であるレイラが第一王子であるカミルにこんな態度を許されるというのは、本当に仲がいいのだなとアリシャは思った。

「ちぇっ」

「ちぇっ、じゃないですよ!早く出て行ってください!」

「アリシャ、うるさい奴がいるから先に食堂に行ってるよ」

「え?あ、いや…レイラさんの言ってることは正しいかなと」

「え~だって、見たいじゃん」

「えっと、その…」

「あ、そうだ、アリシャ」

「はい?」

「今日も可愛いね」

 カミルは一つウインクをアリシャに投げると、反応を待たず部屋を出た。扉が閉まる音がやけに大きく聞こえる。

「たらしですね、カミル様。…アリシャ様、顔真っ赤ですよ?」

「…え?な、なんですか?」

「メイクに力入れますね」

「……お願いします」

 小さな声だったがアリシャの声はレイラに届いたようで、「まかせてください」とレイラは腕を捲った。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん、まあ、素直でよろしい レイラ、君だけが便りだ
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