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アリシャとカミル

完結しました!!


アルファポリス様で修正版を載せていましたが、結構な人数が見てくれているようだったので、こちらも修正することにしました。

(前の方が好きな人いたら、すみません…。)


※こちらは素人が趣味で書いているものになります。また、素人ゆえ、悪役でさえも登場人物すべてが可愛いのです。そのため、苦情や批判は受け付けておりません。それをご了承の上、ご覧ください。

 外を見上げれば目に映るのは、綺麗な晴天で、アリシャは手を伸ばして、窓を少しだけ開けた。風がこげ茶色の長い髪を揺らす。身体をほどよく冷やすそれが気持ち良くて、アリシャは少しだけ目を細めた。

「ア~リシャ。何してるの?」

 開いている扉をトントンと2回叩きながら顔を出したのは端正な顔立ちの青年。明るいその声にアリシャは急いで立ち上がろうとソファーに手をついた。

「いいよ、そのままで。それより、隣、座っていい?」

 青年、カミルは手でアリシャの行動を制しながら部屋の中に入った。アリシャより少しだけ色素の薄い茶色い髪は後ろで小さく結ばれている。カミルはふと、アリシャの後ろに立っている侍女に視線を向けた。それを合図に、彼女は頭を下げると部屋を出ていく。急に訪れた2人きりの空間に、アリシャの心拍数が上がった。

「も、もちろんでございます」

 動揺を隠せていないアリシャの返答に、けれど満足したようにカミルは一つ頷くとソファーに腰かけた。2人の距離は思いのほか近い。その近さにアリシャは一瞬びっくりしたように肩を上げる。その反応にカミルは小さく笑みを浮かべた。

「近い?」

「あ、はい。あの…少し、近いかと」

「そうかな?普通じゃない?」

「ふ、普通でしょうか?…私には、その…近く感じますが…」

 言葉を選びながら口にするアリシャにカミルは片頬を持ち上げた。

「普通だよ。婚約者なら」

 『婚約者』その言葉に、アリシャがわかりやすく動揺する。

「あ、えっと…その…」

「婚約者でしょ?俺たち。少しくらいは慣れてほしいな~」

「も、申し訳ありません」

「違う。違う。謝ってほしいわけじゃないよ」

「…」

 謝罪の言葉しか浮かばず、アリシャは言葉を繋ぐことができなかった。そんなアリシャにカミルは微苦笑を浮かべる。

「ア~リシャ」

「な、何でしょう?」

「俺の名前呼んで?」

「え?」

「俺の名前」

「カ、カミル第一王子」

 形式的な言い方にカミルは苦笑を浮かべた。

「アリシャ、第一王子って、それはないでしょ。『カミル』でいいよ」

「そ、そんなわけにはいきません」

 カミルの言葉に、アリシャは慌てて首を横に振った。

「え~。カミルって呼ばなきゃ返事しないよ、俺」

「…え、あの…えっと…その…」

 困ったように表情をゆがめるアリシャ。譲歩する気がないアリシャの様子に、カミルは少しだけ考える。

「う~ん、そうだな。じゃあさ、せめて第一は外してよ」

「…」

「それくらいならいいでしょう?」

「…」

「アリシャ」

「…はい。かしこまりました」

「本当は敬語もいらないんだけどな」

「そんな恐れ多いことできません。カミル…王子は、ナーリ国の第一王子。私はただの伯爵家の娘です。本来なら、王子の婚約者などになれる身分ではありません」

「まあ、そうだね」

 肯定するカミルの言葉に、アリシャは思わず声のトーンを上げた。

「やはりカミル王子もそう思われているのですね!」

「う~ん。そんなに嬉しそうに言われるのは、傷つくけどね」

「も、申し訳ありません」

「いいよ、別に」

「…あの、カミル王子。…やはり、ただの伯爵家の娘である私に、第一王子の婚約者が務まるとは思えません。だから、…家に帰していただくことはできないでしょうか?」

 懇願するようなアリシャの声色にカミルは笑みを浮かべた。けれど、静かに首を横に振る。

「ごめんね、アリシャ」

「カミル王子…」

「一週間前のあの日、君は爵位以上のものを身に付けてしまったんだ。君にその意思はなくても、君はこの国の第一王子と結婚するしかないんだよ」

「…」

「だからさ、アリシャ。君は、諦めて、俺を好きになってよ。俺も、アリシャを好きになるからさ」

 恋なんてしたことはなかった。貴族の家に生まれたのだからきっと恋とは関係のないところで結婚するのだろうなと思っていた。けれど、人並みに恋に憧れてもいたのだ。恋愛小説のような恋でなくても、ドキドキしたり、時に切なくなったり、そんな恋をしたいと心のどこかで思っていた。もしかしたら、好きになった人と結婚できるのかもしれないと淡い期待も持っていたのだ。

「……王子はそれでよろしいのですか?」

 アリシャの問いにカミルはにこりと笑い、頷く。

「もちろん。だって、アリシャは可愛いし、貴族として教養も身についている」

「…」

「ねぇ、アリシャ。変えられない事実を嘆くより、変えれる未来に向かって努力する方がよっぽどいいと思わない?少なくとも俺はそう思う。だから、俺は、アリシャを好きになるよ。だからアリシャも俺を好きになってよ。変えられない現実を受け入れるために」

 まっすぐ見つめてくる目からは強い意志を感じた。カミルの瞳は青くて、澄んでいて、そういえば、あの日も綺麗な青が広がっていたなと現実逃避のようにそう思う。アリシャは吸い込まれそうな青を見ながら、ほんの数日前の出来事を思い返した。

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