第93話
作者名を本名にしました。肩もなんとなく治りました。
フィリスとマティーナが治療を行い、マリアーナ、ミロ、ハクアがその支援に回っている頃、四龍達はミカヅチ国内の水源の元、即ち地下へとやって来ていた。巨大な洞窟の奥に水源があり、地下300mと言ったところか?かなり深い場所にあった。
「うーん、ヴォルファー王国よりも水源としては問題無さそうなんだけど…スイレン、どうなの?」
「…地下から汲み上げて、地上に流しているのは問題ない。…でもそのせいでその水が全て汚染されたことに問題がある。」
「でも水源の元に何があるのかしらね?」
「ライファ、それを私達が調べに来たのでしょう?兎に角、何かしらの原因はあるはずですわ。」
縦穴ではなく斜めに進んでいく形のその洞窟、途中で螺旋状になっていたり、幅が狭かったりと、最深部まではかなりの距離があった。と、先頭を歩いていたライファが立ち止まる。
「どうしたの、ライファ?」
「なんか…臭くない?」
「…この匂いは…?」
「水の匂いにしてはおかしいですわね?」
四龍達は先を急いだ。ライファが明かりを灯しているので、足元は危なくないが、何が居ても対処できるようにゆっくりと歩いていたのを、少し早足で向かった。と、変な匂いがしてから30分後、ようやく最深部まで到着した。そこで見たものは、巨大な湖に近い水源だった。洞窟の天井からは巨大な管が取り付けられ、水を汲み上げるようになっているのだが、いち早くスイレンが気づいた。
「…やはり…」
「どうしたの、スイレン?」
「…この地下水脈、そこにヒュドラがいる。」
「え…!?」
「そんな…確かですの?」
エンレン、ライファ、ランファが驚く。本来、ヒュドラは水生の生物ではない。陸上において毒を吐く巨大な蜥蜴だ。しかし、水のスペシャリストであるスイレンは、地下水を手で掬い、一口飲んだ。
「…かなり微弱だけど、人間には充分過ぎる猛毒…間違いない。」
「水の中で生きれるヒュドラなんて、聞いたこと無いわよ。」
「どうしましょう、お姉様…」
「一度陸上に戻って、フィリス様に報告すべきかしら…」
「…そんな時間は無い。」
「スイレン?」
「…水を通して確認出来た。…あと1日でヒュドラは完全体になる。…そうなったら、今より強力な毒素がミカヅチ国内に拡がってしまう。」
「そんな…!?」
「…この場で対処する。…力を貸して。」
「勿論よ、これ以上犠牲者は出させたくない!」
「スイレン、指示を下さいな!」
そう言うと、スイレンは他の3人に指示を出す。
「…ライファは水に雷を落として。…姉さんとランファは襲いかかってくるヒュドラを攻撃して欲しい。」
「解ったわ!」
「任せて下さいな!」
「…私はこの水源を元に戻すために力を使うから、戦闘は出来ない。…お願い。」
そう話をして、全員が頷き合う。そして、ライファが地下水にボルテックランスという、強力な雷を落とした。凄まじい爆雷が水源の奥まで伝わり、数秒後、水源から巨大なヒュドラが姿を現した。
「こんなに大きかったっけ?」
「そんなのはどうでも良いですわ!エンレン、やりますわよ!」
そう言って、エンレンはフレアバーストを、ランファはソニックスラッシャーを唱えてヒュドラを狙う。フレアバーストはヒュドラの胴体に当たり、ソニックスラッシャーは見事に首を切断した。ヒュドラの毒は胴体、それも胃で作られている。それを吐き出す口、その両方を同時に攻撃されて、ヒュドラはなす術なく絶命した。
「よし!スイレン、やったわよ!」
「これでオッケーね!毒素もエンレンの炎で無効化したし!」
「あとは出来ることはあるかしら?」
「…大丈夫、任せて。」
ヒュドラの死体は、スイレンが水の膜を張り、陸に置かれ、そのあとスイレンが水の浄化をする為に水へと潜る。一時間程経った頃、ようやくスイレンは水面へと顔を出した。
「…終わった。」
「お疲れ様、スイレン!」
「よかったぁ。心配したわよ!」
「これで帰れますわね!」
「…でもご免…すごく…疲れた…」
陸にあがるとスイレンは倒れ込んだ。それをエンレンが受け止める。
「寝てて良いわよ、お姉ちゃんがおんぶするから♪」
「…有り難う。」
「ヒュドラは私とお姉様が運ぶわ!」
「安心して休みなさい。」
そうして、見事に任務を果たして帰路に着いた。
読んでくださっている方々、有り難う御座います!




