第90話
再び謁見の間に戻り、フィリスはマーティスと暫く話をして、カスミ達が来るのを待った。1時間ほどして、皆が謁見の間に集まった。
「ヴォルファー王国国王陛下、お初にお目にかかります。ミカヅチ国国王レイジ・ミカヅチの娘のカスミ・ミカヅチです。」
「うむ。楽に話してくれて構わない。私はマーティス・ヴォルファーだ。」
「先ずは命を救っていただいたこと、感謝を致します。しかし…時は一刻の猶予もありません。ミカヅチ国を救っていただきたいのです。」
「ふむ…詳しい話をして貰えるか?」
「実は1週間前位から、我が国では奇病が流行っておりまして…」
「奇病というのは…貴女と初めて会ったときに発熱していたことと関係が?」
フィリスが質問する。
「はい。原因は不明なのですが、国の一部の人間が全員かかっているのです。既に800人程が死んでいるのです。」
「その病、フィリスならば治せるのか?」
「私を救っていただいたこと、それが証明なのです。」
「フィリスよ、どう思う?」
「ミカヅチ国は敵対している国ではないと叔父上も仰ったではないですか。救える命は救いたいと思います。」
「ふむ、確かに。フィリスよ、ミカヅチ国へ向かい、原因の究明、そして国民の命の救助を任せたい。」
「解りました。」
「ミカヅチ国の姫よ、案ずることはない。だが、取り敢えず今日はゆっくりと休まれよ。焦りは重要な事を見落とす原因になる。皆も休んでくれ。ただフィリスよ、少し話がある。」
そう言って、フィリスとマーティス、大臣のみが残った。
「フィリスよ、かの国の事、どう思う?」
「そう言われましても、行ってみなければ解りません。」
「確かに…しかし、お前に頼みがある。」
「ミカヅチ国と友好関係に持っていきたいということですか?」
「いや、最低でも現状の維持を頼みたい。」
「解っています。カスミさんと敵対はしたくありませんから。」
そう言って、フィリスは部屋へと帰った。
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