第88話
取り敢えずフィリス達はマーティスに出掛けることを伝えて、何処か良い場所はないかと訪ねると、マーティスは、
「南のミカヅチ国との国境付近に湖がある。」
と、教えてくれた。海に行くよりも近いらしいので、行ってみることにした。折角なので、食材等は現地で採ることにして、ミロに乗り、上空から湖を探すと、ゆっくり1時間程で湖に着く。対岸まで5キロ程の大きな湖だった。フィリス達は直ぐに水着に着替えて、各々の得意な事をする。即ち、フィリスとスイレンは魚釣り、エンレン、ライファは狩り、ミロ、ハクア、マティーナはキノコ等の採取、ランファとマリアーナは料理するための場所の確保を始めた。1時間もする頃にはそこそこの量になった。勿論料理はランファとマリアーナがしてくれた。そして皆でバーベキューを始めた。
「やっぱり皆で食べる料理は格別に美味しいな。」
「んぐ…そうですねぇ、フィリス様。」
「…ランファとマリアーナの味付けも完璧。」
「それにこのキノコも美味しい!」
「ふふふ、いっぱいありますから、ゆっくり味わいましょう。」
「そうじゃな、沢山あるしの。」
「もぐもぐ…魚も貝も美味しいよ!」
「お肉も新鮮で美味しいです!」
「水も綺麗だもんねぇ、これもまた美味しいよ。」
食事が終わると、皆で水遊びを行う。流石に砂場は無いので、マリアーナを埋めたりしなかったが、四龍がフィリスを1日独占できる権利を賭けて競争したり、またマティーナがフィリスにセクハラ紛いを行うために大きくなった際にダマスクス製の指輪が発動せず、全裸をフィリスに見せてしまって恥ずかしさの余り悲鳴をあげたりしたが、それ以外はゆっくりとした時間が流れていた。一泳ぎ終えた後、皆で木陰の芝生で寝そべっていた。
「うぅ…まさか水着が…」
「マティーナ殿、お気になさるな。そういうこともあろう。」
「しょうがないよ、マティーナお姉ちゃん。」
「わふぅ、そうですそうです。」
マリアーナ達に慰められ、少しは落ち着いたマティーナだったが、恥ずかしさは抑えられない。
「…まあ見られたのがフィリス様だけで良かったですね。」
「うん…確かに…」
「マティーナさんの綺麗な肌は、他の殿方が見たら、即座に倒れるほど美しいですからね。」
「皆、それは慰めにはなりませんわよ。」
そんなことを四龍は言う。
「フィリス君…ごめんね…」
「どうして私に謝るのです?」
「だって…私みたいなお婆ちゃんの裸なんて…」
「マティーナ先生は美しいですよ。そうですねぇ、…眼福とでも言いましょうか?」
「そ、それはおかしいんじゃないかな!?」
「見て嫌なものではありませんから。気にしないで下さい。」
「それもどうかと思うよ…」
そんなこんなで話は進み、フィリス達は夕方頃までゆっくりと遊んだ。と、帰る準備をしていると、フィリスが急に湖の対岸の方を向く。
「どうなされた、フィリス様?」
「…対岸に何か?」
「いや…なにやら嫌な気配が…」
そう話していると、対岸の森の木がバキバキッと倒れていく。皆が目を凝らして見ると、森の中から湖に向かって人が走ってきて、その後ろからミノタウロスが3匹、追ってきていた。人物は走っている最中に足を縺れさせて転んだ。
「危ない!」
「ここからでは!」
そう叫んだ瞬間、フィリスはスナイパーライフル、レミントンを召喚し、狙いをつけて3発立て続けに撃った。ズドンッズドンッズドンッと凄まじい銃声がしたかと思うと、3匹のミノタウロスはばたりと倒れた。即座にミロに乗って対岸まで行くと、人物は女の子で、気絶をしていた。
「「しっかりしろ。」
フィリスが抱え起こすが、女の子はすごい熱で息が荒い。フィリスはすぐさま回復魔法ヒール、キュア、リカバリーをかける。ものの数分で、女の子の呼吸は落ち着いた。よく見てみると、フィリス達が着ている服とは違い、和服を着ている。
「この服、見たことないな。」
「…確かに。」
「でも南から来たってことは?」
「十中八九ミカヅチ国の方ですわね。」
「ふむ、フィリス様、どうなされる?」
「どうって?」
「このまま放置するの、パパ?」
「わふぅ、それは可哀想なのです!」
「兎に角、対岸の木陰に移動しよう。」
そう言って、再びミロに乗って対岸に移動し、木陰に入り、水を飲ませたり、涼ませたりすることになった。
読んでくださっている方々、有り難う御座います!