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魔弾転生  作者: 藤本敏之
第3章
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第86話

そこからは話が早かった。流石元々学校長をしていたマティーナだけあって、必要な事を色々と教えてくれた。その上で更にこういうことも必要だと、フィリス達が考えていた内容以上の事を詰め込んだ教育内容を提示してくれた。その通りに準備し、それから1ヶ月後、ヴォルファー王国王立学校が出来た。元々5歳から12歳迄の子供だけを集める予定だったが、大きく2つに分けることにした。1つは読み書きや経済などを学んで行く学問部、もう1つは農業や産業等を実際に学ぶ実業部だ。学問はマリアーナが元々バーバラ達に教えていたことの延長。最初は読み書きを教え、徐々に複雑な世界情勢等を学んでいく。実業は勿論読み書きは勉強するが、主だって作物の育て方や漁業、採掘等の方法を学ぶ。将来を見据えた内容が学べ、それは国の財源、即ち税金のみで賄われるので、誰でも入って良いと決められた。だからか、300人にも及ぶ生徒が集まった。校長にはマティーナが就き、マリアーナが教頭だが、2人は勉強をみることにして、主だった面倒事は大臣や財務長官達が何とかすると言ってくれた。なのでマティーナもマリアーナも実業部の授業もみることになった。元々生徒の情報を収集することが仕事だったが、それに不満があったマティーナにとって、生徒達と触れあえるのは嬉しい事であったし、生徒達も喜んで真面目に授業を受けている。幼女の姿なのはご愛敬とされ、なにも問題はないのだが…ティル先生と呼ばずにマティーナ先生と呼ぶ生徒には容赦なかった。そんなこんなで半年も経った頃、久しぶりに9人で集まって現状の報告をしていた。

「いやぁ、真面目な子が多くて助かるよ。半年で読み書きは殆ど出来るし、この国も安泰だねぇ。」

「そうですね。妾は最初不安でしたが…マティーナ殿の教育方針は実に解りやすい。生徒もその家族も安心して貰えてますね。」

「良かった。でもマティーナ先生、何かあったら連絡してください。こうしたいとか、意見でも構いませんので。」

「解ってるよ、フィリス君。でも皆良い子だからね。問題はないよ。」

ランファとマリアーナが用意してくれたクッキーを食べながらマティーナも話している。

「フィリス様、北の方も粗方片付きました。」

「あとはこの国の兵を鍛える必要があります。」

「それはどうして?」

「実力が無いのにモンスターに挑んで、勝手に怪我する人が多いんですよねぇ。」

「ゴブリンにも苦戦するのに、一人でトロールに挑むとか…無謀にも程があります。」

「うーん、ハクアはどう思う?」

「わふぅ、正直言って良いです?」

「勿論。」

「エンレン姉ちゃんとライファ姉ちゃんの邪魔する人が多いです。無駄に突撃するより、街の守りに徹して欲しいのに、突っ込んで怪我する人が多いです。」

「ハクアから見てもそうなら、何とかしないとな。」

「わふぅ、でも実際にはそういう人はこの国の人ではなく、バリロッサ帝国の人なのです。」

「そうなの?」

「人の気配や匂い等から解るです。少なくともヴォルファー王国の人じゃないのが突っ込んで怪我してるです。」

「…それはまた問題だな。何とかしてみるよ。」

「わふぅ、宜しくお願いしますです。」

「…じゃあ私達の方も。」

「えぇ。報告を致しますわ。」

「宜しく。」

「…現在、海沿いを開拓して、街が出来ています。」

「約20程の家や漁船制作用の建物、食料保存庫等も作り、人も50人が滞在して海産物の収集に勤しんでおりますわ。」

「…元々移住目的の人ばかり集めたので問題はないのですが…」

「何か問題が?」

「家族も移住させたいと言っているのですわ。どうしたら良いのか悩みまして…」

「問題ないよ。それは元々考えていた事だから。」

「…それで、暫くはハクアちゃんをこっちに来させたいです。」

「…それはどうして?」

「ハクアちゃんの魔法で海産物を凍結させて運びたいのですわ。スイレンはあまり凍らせるのは得意ではありませんので。」

そう言われてスイレンが頷く。

「解った。ミロもこれからは北への遠征で問題ない?」

「うん、ただ場所は教えて欲しいなぁ!」

「勿論よ。ねぇ、ライファ。」

「えぇ。ミロちゃん、宜しくね!」

「そういえば、フィリス君、君はなにをしていたの?」

「私は…少しアンタイルの街やガデル王国へ行ってました。」

「え…?」

「…そうなのですか?」

「知らなかった…」

「それはまたどうしてですの?」

「ふむ、興味深い…」

そう言われて、フィリスも説明をする。

「ガデル王国に行ったのは、砂漠の街へ帰る事がほぼ無くなったから、家の売却をしてきた。」

「あぁ、あの家…」

「…忘れてた。」

「それとソーン村の現状の把握。もう帰ることも無いからと思って、お墓から皆の遺骨を持ってきてこの国のお墓に祀った。」

「なるほど。」

「それは盲点でしたわ。」

「あと陛下やテッド、ティファやハーヴィ家に連絡もしてきた。」

「おぉ、それは僥倖。」

「皆に会えなくなるの?」

「わふぅ、寂しいですぅ…」

「大丈夫、何時でも来て欲しいと言っていたよ。で、アンタイルにはバリロッサ帝国の状況を聞きに行ってきた。」

「それは?」

「どうやらあの国は…私達にとって敵となる…それははっきりしたよ。」

「具体的には?」

「先ず私達ヴォルファー王国を食い物にしている。税金の殆どを上流貴族達で食い潰しているらしい。」

「…最悪。」

「その上で武力主義らしくてね。いつ戦争を起こすか解らない。」

「たちが悪いですね…」

「ミカヅチ国へ戦争を仕掛ける噂もあるらしいけど、そのためにはこの国を経由しなければならないから、それはやめているらしい。」

「無茶苦茶ですわね…」

「本当に厄介な国だよ。叔父上も困っているらしい。」

「ふむ…フィリス様はどうされるおつもりか?」

「…取り敢えず、この国の兵を鍛えるつもりだよ。」

「パパが?」

「最低限、この国を守れるだけの実力をつけさせる。その上で何とかするしかない。」

「わふぅ…厄介です…」

「そのためにも、小さい子供達に生活力をつけさせるための学校だった。」

「なるほどね…孤児は辛いからね。」

「兎に角…今はバリロッサ帝国に何かするつもりは無いよ。時間をかけてこの国を変えていくから。皆もそのつもりでいて欲しい。」

フィリスの言葉に、皆大きく頷いた。フィリスは頼もしく思いつつ、これからのヴォルファー王国の発展を願った。

読んでくださっている方々、有り難う御座います!

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