第82話
マーティスの寝室に戻ったフィリスは、マーティスと話をする。
「叔父上、先程の件、了承しました。」
「おぉ、フィリス。国王になってくれるか?」
「ただ、ガデル王国やフレデリック王国にいる家族や知人に、説明をしなければなりませんし、この国の情勢なども解りません。今暫くは叔父上が国王で、その秘書のような役割で見聞を広めたいと思います。」
「解った。私も急ぎすぎたと思っていた。」
と、そこまで話していると、扉がノックされた。
「お父様、入ってもよろしいですか?」
「入っておいで。」
マーティスがそう言うと、年の頃はミロと同じぐらいの女の子が付き添いのメイド達と入ってくる。
「お父様、体の具合は…?」
「うむ。こちらのフィリスが治してくれた。もう大丈夫だ。」
「フィ…リス?」
「お前の従兄だよ。前に話しただろう?」
「フィリス兄様!」
そう言って女の子はフィリスに抱きつく。
「お会いしとうございました!でも、ガデル王国の方にいらっしゃるのではないかと聞いておりましたし…まさか会えるとは思っておりませんでした。」
そう言う女の子。
「私はフィリス。貴女は?」
「あ…済みません。私はバーバラ。マーティスお父様の娘です。」
「母親は既に他界してしまってね…城の者達が親代わりなのだが…」
「そうか…宜しく、バーバラ。」
そう言って、フィリスはバーバラの頭を優しく撫でる。と、ミロとハクアがじーっと見ている。
「ミロ、ハクア、仲良くね。」
フィリスにそう言われてパアッと明るい笑顔になる2人。
「バーバラちゃん、ミロだよ。」
「わふぅ、ハクアです!」
「悪いけど、3人で遊んできてくれるかい?」
「うん、パパ!」
「はいです!」
ミロとハクアが元気良くそう言うと、3人で部屋を出ていった。慌ててメイド達も出ていく。
「フィリス…あの子達は…子供なのか?」
「娘のように育てましたからね。」
「ふむ…結婚はまだか。それなら安心した。」
「それで…先ずは冒険者ギルドに話を通して、それから家族に連絡をとり、この国の改革を行います。それで宜しいですか、叔父上?」
「うむ。フィリスのお陰で体が軽い。もう何年も病魔に襲われていたのでね。」
「あと3日は安静にしておいてください。では、私達はこれで。」
そう言ってフィリス達は出ていく。
「さて…困ったことになったわねぇ。」
「…確かに。ギルドにどう報告しようか。」
「ハーヴィの皆や、マティーナさんにもね。」
「いきなり国王候補とは…思ってもいませんでしたわ。」
「ふむ、ではこうしてはいかがかの?」
マリアーナが言う。
「冒険者ギルドから手紙を出して、暫くは帰れないと伝えておき、いずれ戴冠式が行われるときにこちらに来ていただくのは?」
「でも…いきなり国王になるとは伝え辛いかな?」
「じゃからこそ、表立って書くのではなく、取り敢えず故郷がこのヴォルファー王国だった事を伝えて、国の立て直しを手伝うとの名目でガデル王国に手紙を出しては如何か?」
「うん…解った。それでいこう。」
取り敢えずマリアーナの提案通りに手紙を書き、冒険者ギルドの情報配達員に渡し、暫くは城下町を散策した6人。ミロとハクア、バーバラ達はその間遊び疲れて眠っていた。
読んでくださっている方々、有り難う御座います!




