第78話
フィリスがうとうとし始めた頃、不意に声が聞こえてきた。
"フィリス、声が聞こえますか?"
それはファーリスの声だった。
"聞こえます、ファーリス様。"
"今からこちらに呼びます。"
そう言われて、フィリスが目を開けると、やはり光輝く場所にいて、ファーリスが立っていた。起き上がり、ファーリスの前に膝を着くと、ファーリスがフィリスの頭を撫でた。
「お久しぶりですね。」
「はい、ファーリス様。」
「今回は貴方に話があってお呼びしました。」
「あの三四郎の事ですか?」
そういうと、ファーリスは撫でるのをやめて、首を捻る。
「正直、彼が何者だったのか、私にも解らないのです。」
「ファーリス様、他にも神が居られるのですよね?男の神だと奴は言っておりましたが?」
「男の神も女の神もいっぱいいますから…」
「そうですよね…誰とは特定は出来ませんか?」
「なかなか難しいです。しかし、その神の管轄に、他の神が無断で介入する事は余りよく無いのです。」
「…?」
「信仰心…本来ならば崇められるべき神は、1人ないしその神の家族に限られますから。私は血族はいませんので、貴方達の世界における絶対神ですが…貴方が元いた世界には他の神も崇められていたでしょう?」
「はい。八百万の神や、ゼウス、オーディンなどですが…」
「全て実在する神ですが、そこまで様々な神を信仰していた世界も珍しいのです。」
「それは?」
「元々1つの世界に神は1人しかいない。でも、貴方のように転生した者が記憶にある神の布教をしたことによって、様々な神を崇めていたのです。」
「つまり…私の元いた世界も転生者や転移者が?」
「そうです。元々あの世界はアマテラス様とその家族が納めていた世界、そこに様々な世界から人を集めた世界なのです。」
「…」
「貴方が崇めていた神も全て実在していますが…会いたいですか?」
「いいえ。今の私にはファーリス様だけが神ですから。」
「そうですか。それで、転移は本来はしてはいけない行為なのです。」
「そうなのですか?」
「今までの生活を変えてしまうため、転生はその世界に馴染んだ頃、不意に前世の記憶が甦りますが、転移は世界に慣れる時間がありません。だからご法度なのです。」
「なるほど…私も4歳になったときに記憶が戻りましたから、何の違和感もなく世界に順応しましたから。」
「…恐らく、これからも異世界から転移者が送られてくるでしょうね。」
「…ファーリス様?」
「転生者は貴方1人なのですがね…」
「それはどうしてですか?」
「神の信仰がこの世界は余りありませんから。私には力は余りありませんので、貴方をこの世界に呼べたのが奇跡に近いのです。」
「…?」
「先ほど出てきたアマテラス様にお願いして、清い魂を持つ者を、私の世界に呼びたいと伝えたので、貴方がこの世界に来たのです。」
「そうだったのですね…」
「取り敢えず、私の方でも調べておきます。四龍達には…」
「私から説明致します。皆、疲れていますので…」
「フフッ、そうですね。…フィリス、幸せですか?」
「勿論です。ファーリス様は?」
「私もですよ。では更に善き人生を…」
そう言ってファーリスは姿を消し、フィリスも目覚めた。周りには四龍とマリアーナがすやすや眠っている。
「…大切な家族を守るためなら、命をかけるのが私なのです、ファーリス様。」
そういってフィリスはまだ暗い部屋の中で布団を被り直して眠った。
読んでくださっている方々、有り難う御座います!




