第77話
次の日の朝、宿屋で食事をしていると、冒険者ギルドの職員がやってきて、ギルド長が話がしたいとの事だったのでフィリス達はすぐに冒険者ギルドへと向かった。2階のギルド長の執務室へ通されて、全員がソファに座ると、ギルド長が深々と頭を下げた。
「今回のギルドキリングバイトの件、本当にありがとうございました。」
「いえ、しかしどういうわけだったのですか?」
話を進めて貰うように促す。
「3ヶ月前でしょうか…あのサンシロウという男がこの街にやってきたのは…勿論冒険者登録するために嘘偽りの鑑定もしましたが…その時の結果がこれです。個人の情報ですが、あなた方も無関係ではないので…」
そういって、三四郎の書いたと思われる汚い字の書類を見せてもらった。そこには、
「桃園三四郎 18歳 日本 格闘技全般」
等々、詳細に書かれていた。勿論、この世界の文字で。
「我々はそこに書かれていることが本当かどうかを、宝玉で調べて嘘がなければ冒険者登録するので、まさかあのような者とは思いませんでした。」
「彼は何をしたんですか?」
「…ギルドキリングバイトは元々存在したギルドで、そこに低ランク冒険者として登録されました。が、この街の周囲の危険なモンスターを、彼一人が討伐して…面白くないと思った元キリングバイトの長と勝負をして、サンシロウ殿が勝ったのです。その後、他のギルドにも勝負を挑み、次々とギルドを潰していって…1週間前には他のギルドは全て無くなり、強い冒険者は全員サンシロウ殿に付き従ったのです。そしてそれだけでは飽きたらず、今度はこの冒険者ギルドを乗っ取ろうとしました。我々も殺されそうだったので、避難していて、救援を呼ぼうとした矢先にあなた方が来たと…こういう事です。」
「なるほど、解りました。しかし3ヶ月で他のギルドを潰す…か…」
「あれ~?フィリス様も1つ潰そうとしてたじゃないですか?」
「…姉さん、あれはちょっかい出してきた冒険者が悪い。…フィリス様は私達を守ってくれただけ。」
「あぁ、蜃気楼だったっけ?よくランファ姉様にちょっかい出してきてたなぁ。」
「ライファ、やめて頂戴な。思い出したくもありませんわ、虫酸が走る…」
「確かにランファはモテそうじゃしの。」
「マリアーナお姉ちゃん、そう言う問題じゃないよ。」
「わふぅ、よく解らないです。」
皆口々に話をしていたが、アンタイルのギルド長が咳払いをして話を戻す。
「それでですね、皆さんにお願いがあるのですが?」
「お断りします。皆、ガデルに帰ろう。」
そういって、フィリスは席を立つ。
「待ってください、フィリス殿!せめてこの街の生き残っている冒険者が再び集うまで…」
「元々貿易船の護衛で来て、馬鹿なギルドと戦いになったんです。これ以上はここにいるべきではないはず。」
「ならばそちらの方々から1人でも…」
「家族に離れろと…?それこそ悪い冗談ですよね?このバリロッサ帝国はまだ興味がない。それに、ガデル王国やフレデリック王国には家族や知り合いがいるんです。だからもう帰ります。」
「船が出るまででも…」
「その心配もありません。飛んでいきますから。なぁ、ミロ?」
「うん!経路と距離はだいたい解ったから、1日もあれば帰れるよ!」
「…どうしてもダメですか?」
「えぇ。もう4日も家を空けていますからね。まだまだガデル王国もフレデリック王国も平和とは言えませんので。まあ、他のギルドを派遣してもらえるように話はしておきますよ。」
それを聞いて、アンタイルのギルド長は安堵した。そして話が終わって1時間後、フィリス達はミロに乗ってガデル王国へと向かった。
ミロは全力で飛ばず、ちゃんと力をセーブして飛んだ。それでも元々1日と思っていたが、夜にはハーフェンの街に到着出来た。冒険者ギルドにも報告し、ハーフェンの街で1泊して砂漠の街へと帰った。アンジェラ、サーシャからは早いやらどうだったやらと色々聞かれたが、全てを嘘偽りなく報告した。
「…ふむ。」
「ギルドの反乱…恐ろしいですね。」
「まぁ、その元凶は潰しましたから。あとハーフェンの街の冒険者ギルドにも伝えてあります。あとはガデル王国の方ですが、明後日伝えに行きますから、書状を書いてもらえますか?ギルドの派遣、現状等を。」
「解った。あんた達に任せて正解だったよ。サーシャ、あれを。」
そういってサーシャから報償金を受けとる。
「金貨300枚、どうしようか悩んだんだが…これでいいかい?」
「充分です。」
フィリス達は袋を収納魔法にしまって家路に着く。途中で食事を買うか悩んだが、久しぶりに料理がしたいとのマリアーナの申し出を断るフィリス達ではないので、材料を買って帰った。マリアーナ、ランファの手料理に舌鼓をうち、ミロとハクアを寝かせたあとのその日の夜は熱い夜になったのは言うまでもない。
四龍、マリアーナが疲れて眠った後、フィリスは1人、ベランダから星を見ていた。そして戦った三四郎のことを考えていた。
「異世界転生した私と…異世界転移した三四郎…違いは恵まれた環境…それまでの人生…かな…?」
そう1人呟きながら、フィリスは寒くなってきたので部屋に入る。
「…ファーリス様以外の神…1度ファーリス様に聞いてみたいが…」
そう更に呟いて眠りについた。
読んでくださっている方々、有り難う御座います!