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魔弾転生  作者: 藤本敏之
第3章
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第76話

8人で冒険者ギルドに行くと、サーシャが受付のテーブルを拭いているのが目に入った。

「サーシャさん、今宜しいですか?」

フィリスが声をかけるとサーシャは驚いた様子で雑巾を上に投げる。その雑巾がサーシャの頭に落ちてきて、なかなか滑稽な状況だった。

「フィ、フィリスさん!?」

それでも体裁を整えて応対してくれた。

「さっきまで皆がお世話になっていたそうで。」

そう話すと、サーシャは首を横に振る。

「いえいえ…それよりすみません、なかなか皆さんにお願い出来る依頼がなくて…」

「それは皆から聞いたのですが…アンジェラさんはいますか?」

「はい。2階にいますよ?」

「会えますか?」

「勿論です、どうぞ。」

と、普通に通してくれた。2階に上がり、ギルド長室をノックするとアンジェラが、

「どうぞ!」

と、返答してくれたので中へと入っていく。机と椅子、ソファーが置かれた質素な部屋だが、それらの家具はしっかりとした物だった。その中で、アンジェラはお茶を飲みながら椅子に座っていた。

「おや、フィリス達かい?まあ、座りなよ。」

そう言われてフィリス達はソファーに座る。

「それで、どうしたんだい?」

「アンジェラさん、ハーフェンの街の依頼があるとの事ですが?」

そう話すと、アンジェラは少し怪訝そうな顔をした。

「サーシャだね…全く…」

「我々が行くのは駄目なのですか?」

「ん…まあ駄目じゃないんだけどねぇ…暫く帰って来れないから、余り勧められないというか…」

「何か?」

「海の向こうの大陸の事は?」

「昔学びました。確かバリロッサ帝国、ヴォルファー王国、ミカヅチ国があるんですよね?」

「そのうちのバリロッサ帝国がねぇ…問題なんだよ。」

「…?」

「危険な冒険者がいるらしいんだ。恐ろしく強いらしい。だから国家間の貿易以外は冒険者を乗せないようにしているらしいんだ。でも、そのせいで海のモンスターが増えてるらしくてねぇ…なんとかしたいんだが…」

「なら私達が行きますよ。」

「それは困る!この街の最強のギルドを出すわけには…!」

「でもなんとかすべきでしょう?」

「…なら約束しておくれ。無茶はしない、きっと帰ってくる事。それが条件だよ。」

「解りました。」

「はぁ…ならこれを。」

アンジェラは机から1つの封筒を取り出した。

「その中にはハーフェンのギルド長にあんた達の事を説明する文書が入ってる。」

「なんだ、既に書いてたんですね?」

「でも気をつけるんだよ…」

「解っています。」

そうして手紙を受け取り、ミロに乗ってハーフェンの街へと向かった。


ハーフェンの街はバーデンの街の2倍位の大きさがある。魚料理が有名であり、ガデル王国の唯一の貿易都市とも言える。そのハーフェンのギルド長にアンジェラからの手紙を見せると、ギルド長は直ぐに船を用意してくれた。貿易船そのまま、つまり送り出すついでに貿易もしようということらしい。そしてフィリス達が到着して1時間後、船は出港した。


風で動く帆船であるので、かなりゆっくりと進む。ガデル王国の海域をゆっくりと進み、バリロッサ帝国領の海域へと出たと船長から言われた直後、巨大な烏賊や鮫に襲われた。クラーケン、メガシャークと言うらしいが、巨体ながら群れで襲ってきた。そのモンスター達を船上から魔法で倒していく。船に突進してくる敵の攻撃はマリアーナが全て魔法障壁で防いだので、船は真っ直ぐバリロッサ帝国へと向かう。


バリロッサ帝国、アンタイルの港街はやはり大きかった。船の旅は3日もかかり、その間貿易船の中では相変わらず四龍、マリアーナにちょっかいを出す馬鹿な男共が多かった。が、フィリス達の殺気にやられて、全員震え上がっていた。そんなことはさておき、フィリス達はアンタイルの冒険者ギルドへとやってきた。が、冒険者ギルドには冒険者がいない。仕方なく受付にやってきても誰もいない。

「おかしいですわね?」

「ランファ姉様?」

「…本来なら誰かは応対してくれるはず。」

「すいませ~ん!」

四龍が声をあげても誰も出てこない。と、入ってきた入り口から男が3人入ってきた。

「でよぉ、あいつらがよぉ、っておい!」

「よおよお、綺麗な姉ちゃん達じゃねぇか!」

「こんなところに用でもあんのか?」

ガラの悪い男達だが、フィリスが前に出て話をする。

「済みません、ここのギルド長に話があるのですが?」

フィリスがそう言うと男達は顔を見合わせて笑い出した。

「はっはっは!」

「無駄だぜ、無駄!」

「この街の冒険者ギルドは俺達が潰したからなぁ!今頃何処かで野垂れ死んでるぜ!」

それを聞いてフィリスは男達を睨み付ける。

「…どういうことだ?」

「へっ、俺達はギルドキリングバイト!この街の最強のギルドだ!」

「そんな俺達に歯向かうから、この冒険者ギルドの職員をシメたんだよ!」

「まあそういうこった。解ったら、お前もそこの女共をおいて出てけ!死にたくなければなぁ!」

そう言われてフィリスはキレた。1人の首を掴み、そのまま持ち上げて振り回し、2人の男に叩きつけた。男達は吹き飛んで、入り口から外に飛んでいった。それを追いかけてフィリス達も外へ出る。そして倒れている3人のうち、最初に首を掴んだ男の胸ぐらを掴んで引き起こした。

「お前らのギルドの長を呼べ!」

「ひっ…!なっ、どっ、どうするつもりだ!?」

「決まっている…お前ら全員殺してやるよ!」

そう言ってフィリスはその男の顔面を殴り飛ばした。


それから1時間後、冒険者ギルドの前にギルドキリングバイトのメンバー40人が集まっていた。

「こいつらが?」

「そうだ!俺達に歯向かったんだ!」

「へぇ…あたい達に喧嘩売るなんざ、大したもんだねぇ!」

そんなことを言っている。が、フィリス達も睨み付けている。

「これで全員か?」

「へっ、そうだ!死んだぜてめぇら!」

「おい、大将はどこだ!?」

「あれ!?」

「もうすぐ来るぜ!」

そんな話が聞こえて、40人の奥から1人の男が出てきた。

「ふぁ~!ったく、なんだよなんのようだ?」

若い男だが…周りの40人よりも明らかに強い、そんなオーラが漂っていた。

「よぉ、俺は三四郎。ギルドキリングバイトの長だ。あんたは?」

三四郎と名乗った男は首を回しながらフィリスに近付く。

「私はフィリスだ。」

「へぇ…ま、うちのメンバーに手ぇ出したんだ。覚悟は出来てんだろうな?」

「冒険者ギルドをめちゃくちゃにしておいて、よく言えるな?」

「くっくっくっ、あんた強いなぁ?だからこそ、容赦はしねぇ!」

そう叫ぶと三四郎は飛び上がり、冒険者ギルドの屋根に降り立ち、その場に座る。

「取り敢えず、うちのメンバー相手にどこまでやれるかな?因みにそいつらもSランクだ、ただで殺られはしねぇよ。」

三四郎がそう言って指をパチン!と弾くと、ギルドキリングバイトのメンバーが襲いかかってきた。が、百戦錬磨のギルドエレメントドラゴン。マリアーナが自分達の周囲に障壁を張り、障壁の内側から四龍が魔法を撃ち込んでいく。瞬く間にギルドキリングバイトは全員が全身を燃やされ、首を斬られ、黒焦げになり、壁に叩きつけられて絶命した。若干砂煙があがって、それが落ち着いた時三四郎はメンバーの死体を見て、

「なっ、なんだと!?」

と驚愕の顔をした。そんな中、フィリスは三四郎を睨み付けていた。

「結局は雑魚でしかねぇ。それともてめえも雑魚なのか?」

「へっ、俺をあいつらと同じと考えるか?舐められたもんだなぁ!」

そう言って、三四郎はフィリスに向かって突っ込んでくる。マリアーナの障壁から出て、フィリスが右こぶしで三四郎を殴り付ける。が、三四郎は左手でそれを止め、同じく右こぶしを出してくる。それをフィリスも左手で受け止め、右足で蹴りを放つが、三四郎はそれを左足で受ける。両者手を放し、距離を取る。

「へぇ…お前強いな。神に選ばれた俺と同等かぁ。」

「…神に?」

「そうだ、俺はこの世界の人間じゃない。3ヶ月前に別の世界から神によって召喚されたのさ!その時、神は言った。この世界で無双出来るだけの力をお前にやると。まあ、これを知った奴は…全員死んだがなぁ!」

そう言って一気に距離を詰めてフィリスの顎に右膝蹴りをいれる。

「ぐっ!」

よろけた拍子に更に三四郎は連撃をフィリスに叩き込んでくる。全ての攻撃をフィリスは受ける。

「へっ、効かねぇ。俺にそんなもんは…!」

「そうかなぁ?死ねぇ、フィリス!」

そう言って、三四郎はフィリスの腹に右手刀を突き刺した。

「ぐはぁ!」

フィリスの体に三四郎の手刀が刺さる。

「へっ、勝負あったなぁ!」

三四郎は勝ち誇るが、腹を刺されたフィリスはくっくっくっと笑っている。そしてフィリスは三四郎の右手を掴んだ。

「…?」

「確かに強えぇよ、あんた。だが、マスターには敵わねぇよ。なぁ、マスター!」

フィリスがそう叫ぶと、三四郎の後ろからズガン、ズガン!と音と共に弾丸が飛んできて、三四郎の背中に当たった。

「なっ!」

それを見ていた四龍、マリアーナ、ミロ、ハクアはクスッ!と笑った。三四郎が後ろを振り向くと、冒険者ギルドの向かいの建物の屋根にフィリスがコルトパイソンとデザートイーグルを構えて立っていた。

「ど、どういう…事…だ?」

「どうしたも糞もあるかよ。さっきお前の部下達とみんなが戦っていた際に俺たちは入れ替わっていた。お前は最初からこの俺、マスターの偽者と戦ってたんだよ!マスターがなぁ、"俺"なんてなぁ、汚い言葉を使うかよぉ!」

「全く…もう下がっていいぞ。」

そう告げると、フィリスは自身そっくりのホムンクルスを消した。三四郎はその間全く動けなかった。フィリスも三四郎の側へと降りてくる。

「なっ、何をした!」

「別に…ただお前に魔法をかけた。サイレントとバインドっていう強力な魔法をな。」

「な、なんだそれは!?」

「簡単にいえば、魔法を使えなくするのと動けなくする魔法だ。お前は油断していたから、ゆっくりと詠唱して弾に混める事が出来たよ。」

「くっ、う…動けん!」

「答えろ、別の世界から召喚された…そう言っていたな?」

「そ、そうだ、日本というところからな。」

「…お前を召喚した神はどういう人だった?」

「知らねぇが…男だった…!」

「そうか。」

「おい…これを解いてくれ!」

そう言われて、フィリスはコルトパイソンのグリップで三四郎の頭を殴り付けた。その衝撃で地面に倒れ込む三四郎。

「がふぁ!」

そしてフィリスはデザートイーグルを消して、左手で三四郎の頭を掴み、コルトパイソンを額に当てた。

「お前達が行ったこの惨状、責任は取れないだろう?せめて死んで償え。」

「まっ、待て…」

フィリスはコルトパイソンの引き金を引いた。ズドン!と音がして、三四郎の頭は消し飛んでいた。

「フィリス様?」

「…大丈夫ですか?」

「どうやらこいつは同郷らしい。でも…こんな腐った奴が来ているとは…」

「しかし、この世界にファーリス様以外の神はおりませんが?」

「確かに。しかも男の神など聞いたことありませんわ。」

「ふむ…気になるのぅ。」

「どうでもいいよぅ。」

「そんな事よりこの人達の死体、どうするです?」

「そうだね。まずは冒険者ギルドの職員達を探さないと。」

取り敢えず死体処理はフィリスが行い、その間四龍、マリアーナ、ミロ、ハクアで街の散策を行い、街の倉庫に隠れていたギルド職員とギルド長を見つけた。何度もお礼を言われて、取り敢えずフィリス達は宿屋へと案内され、休息をとった。

読んでくださっている方々、有り難う御座います!

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