第72話
ハクアはそれなりの速度で走っているが、気配察知が可能なフィリス達は何の問題もなくモンスターを索敵し、ハクアから降りること無く駆逐していく。勿論、狂暴な動物も一緒に討伐しているのだが、元々慰安地のバーデンの街、ギルドパーチェだけでなくガデル王国の騎士団もたまに出陣しているので、それほどの数はいなかった。死体の回収は帰りに行おうと言うことになっていたので、兎に角2つある山のガデル王国側へと急いだ。モンスターを駆逐しながら約30分、フィリス達は洞窟の近くまで来た。以前フィリスとマティーナ、ローリィ達が来たときより蔦などが張っているようだが、直ぐに見つけられた。が、洞窟の入り口にはオーガやトロールが大量にいた。
「おかしいな…?」
「フィリス様、如何なされた?」
フィリスが疑問に思っていると、マリアーナが質問する。
「うん…以前来たとき、魔物寄せの魔方陣は破壊しておいた。ここまで危険なモンスターが集まるとは、到底思えないから…」
「どうするです、パパさん?」
「洞窟ごと破壊するしかないか…溜まり場になってしまっては、これからも被害がでる。」
「パパ、ならミロに任せてよ!」
そう言ってミロはハクアから飛び降りた。
「ミロ?」
「最近、ハクアと特訓したから、ミロも戦えるよ!1発で終わらせるから!」
そう言って、ミロは不死鳥の姿になる。現在ミロは約10メートル程に成長している。が、いきなり嘴に魔力を集め始めると、洞窟目掛けて一気に放出させた。赤い魔力の塊が洞窟に着弾すると、大爆発を起こし、モンスターはおろか、山の形まで変わってしまった。本来ならフィリス達に襲いかかるはずの衝撃は、マリアーナが障壁を張って防いでいた。ミロは人の姿に戻り、フィリス達の元へと戻って来る。
「パパ、やったよ!」
「ミロ、お疲れ様。だけど…やり過ぎ…かなぁ?」
大爆発の惨状は凄まじかったが、当のミロはキョトンと首を傾げる。
「でもミロ、聞きたいんだけど?」
「何、パパ?」
「不死鳥って、得意なのは火じゃないのかい?」
「…?」
「フィリス様、それは違います。」
エンレンが説明する。
「私達四龍の得意なのは各属性、それはご存知ですよね?」
「勿論。」
「不死鳥フェニックスが得意なのは、火や炎ではなく、爆発です。」
「…は?」
「そしてハクアちゃんことフェンリルが得意としているのも氷です。2人は固有魔法の使い手なんですよ?」
「そうなのか?」
「…元々、火属性の延長に爆発属性が、水属性の延長に氷属性があった。」
「でもそれぞれ極めてもそこまでにはなりません。」
「だからこそ、現在では爆発と氷は固有魔法の一部と、我々の間では話し合われていたのですわ。」
「ふむ…人の考えより、妾達伝説の存在の方がその辺りは詳しいからの。フィリス様が知らぬのも無理はないが…」
「成る程ね。」
「たまに精神世界でミロとハクアちゃんで特訓してるんだよ!」
「わふぅ、いつもハクアの敗けなのです。」
「…そうか、だけど無理はしないようにね。」
「うん!」
「わふぅ!」
そう話して、取り敢えず洞窟があった場所をしっかりと確認をして帰ろうとすると、ミロとハクアがフィリスに近付いてきた。
「…?2人ともどうしたの?」
「忘れてた!」
「ですです!」
そう言って、ミロとハクアはフィリスの両頬にそれぞれキスをする。すると、フィリスの体が光輝いた。
「パパは皆と契約したけど…」
「わふぅ、私達とはまだだったです!」
「有り難う、2人とも。もっと私も頑張るからね。」
そう言って、フィリスは2人を抱き締めた。
バーデンの街へと帰ってみると、凄まじい爆発があったが大丈夫だったかと街の人々から心配されたが、取り敢えず問題なく洞窟を破壊してきた旨を伝えた。それ以外の事は特に問題ないと言われたので、フィリス達は帰りがけに採ってきたモンスターの魔石をラバンダに渡し、街の発展に使ってほしいと伝えた。その代わり、ラバンダは当初1キロと約束していた魚介類を、予想以上にくれた。その量約8キロ。どうやら名産品として沢山あるので足りなければ追加もしてくれるとは言われたが、流石に悪いと用意してくれた分を持って、マティーナの家へと帰った。メイドさん達が料理してくれたが、8人でも食べきれないので、残りはマティーナ達が着いてから食べることにした。取り敢えず、何の問題もなくクエストをこなし、ミロとハクアの力もわかったフィリス達だった。
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